“水の足跡”を意味する「ウォーターフットプリント」 事例をもとに考える世界の水問題とは

いくつもの水泡

ウォーターフットプリントとは、直訳で「水の足跡」。その名の通り、商品の生産過程からわたしたちの手に届き、実際に使用するまでに使用された水の足跡・水量を測定する概念である。どの世に測定し、活用されているのかをこの記事では解説する。

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2020.11.30
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「ウォーターフットプリント」とは

「ウォーターフットプリント(Water footprint)」とは、わたしたちが使用する商品やサービスの生産過程で使用された水量を図る概念のこと。

使う、着る、買う、売る、食べるという行為すべての過程で水が使われている。ウォーターフットプリントによって、限られた淡水資源がどのような目的で消費され、汚染されているのかを理解することができるのだ。

日本では当たり前のように水を使用できているが、世界的にみれば水不足は大きな問題。きれいな水を使えない、水不足で利用できない国が多く存在する。

ウォーターフットプリントを利用することで正しい水の使用方法を考え直すなど、節水につながることを目的に活用されている。

同じような言葉として「バーチャルウォーター」がある。これは食料を輸入し消費している国で、もし輸入せずにその国で生産したら、どの量の水が必要になるのか推定したものを指す。

深刻な環境問題 水問題に関する動き

国連は、水の使用量が人口増加の2倍の速度で増加していると警告している。この傾向が逆転しない限り、世界人口の3分の2が2025年までに水不足の危機に直面するといわれている。そこでウォーターフットプリントが重要視されているのだ。

世界や日本の動き

2002年にArjen Hoekstraによって、ウォーターフットプリントが作成された。以降、生産と消費の選択が天然資源にどのように影響しているかを理解するために多くの国で活用されるようになる。

日本では、2014年に環境省が「ウォーターフットプリント算出事例集」を発表した。

企業・産業の取り組み

コカ・コーラグループは、20年までに製品の製造に使う量と同等の水を自然に還元する「ウオーター・ニュートラリティー」を世界共通の目標に掲げた。

日本では2012年9月東芝が家電製品の「ウォーターフットプリント」を業界に先駆けて公表した。またコカ・コーラグループの工場では洗浄などに使った水をろ過して再使用し、節水に努めている。(※1)

ウォーターフットプリントの算出方法

データ計算の流れ

日本では環境省が国内企業によるウォーターフットプリント算出を促進している。

計算に含まれる水

以下の3つのウォーターフットプリントに分類され、計算されている。

・グリーンウォーターフットプリント土壌のルートゾーンに貯蔵され、植物によって蒸発、蒸散、または取り込まれる降水からの水量。これは農産物、園芸製品、林業製品にとくに関係がある。

・ブルーウォーターフットプリント地表水または地下水資源から供給され、蒸発するか、製品に組み込まれるか、ある水域から取り出されて別の水域に戻される水量。灌漑農業、産業、および家庭用水がここに分類される。

・グレーウォーターフットプリント特定の水質基準を満たすために汚染物質を浄化するために必要な淡水の量。

算出方法

生産量1tあたり、耕作地のヘクタールあたり、通貨の単位あたり、および他の機能単位あたりの立方メートルで測定している。

ウォーターフットプリントで見る日本と世界の水問題

水不足は、毎年1ヶ月あたり少なくとも27億人以上に影響を及ぼしている。実際にどのような問題が起こっているのか。ウォーターフットプリントを交えて見てみよう。

1キログラムの牛肉を生産するためには、約15,000リットルの水が必要

正確な数値は生産システムの種類、牛の飼料の組成と産地などによって異なるが、93%グリーン、4%がブルー、3%がグレーのウォーターフットプリントが発生している。

牛の飼育についてはCO2の排出量も多く、よく話題に上がる。いきなりベジタリアンになることは難しいが、「ミートフリーマンデー」など週1だけ肉食をやめてみる、という方法もある。一人ひとりの心がけで大量の節水につながる。

米国市民のウォーターフットプリントは一人あたり年間2840立方メートル

とても広大な量だ。その約20%は外部にあり、消費量の最大の外部ウォーターフットプリントは中国の揚子江流域だ。これは輸入している商品から発生している。
これは自国の努力だけでは改善されないため、外部ウォーターフットプリントの発生先である国と、輸入商品の生産方法や輸入量の検討など、お互い協力しあって改善していく必要がある。

日本国民のウォーターフットプリントは一人当たり年間1380立方メートル

わたしたちの日本も多くを輸入に頼っている国であり、約77%と半分以上が外部ウォーターフットプリントだ。

アメリカと同様に輸入先の国と商品の生産方法や輸入量の検討など、お互い協力しあって改善していく必要がある。それと同時に、輸入に頼りすぎず国内生産力を高め、自国でウォーターフットプリントの発生量をコントロールする努力も必要なように感じる。

ウォーターフットプリントを意識して生活してみよう

.水面も触る手

Photo by Yoann Boyer

国や企業での取り組みについて紹介したが、元をたどればわたしたち個人の消費の選択がすべてのはじまりをつくっている。何かを購入するときに、それはどのように生産されて、どのようにわたしたちの手に届いたのか。まず想像してみる、という習慣をつけることが大切だ。

※1 ウォーターフットプリント:水の使用量で製品評価 企業の競争力も左右(日経産業)東芝、コカコーラ、ユニリーバ等が取り組み
http://rief-jp.org/new/20537

※参照 Water footprint network
https://waterfootprint.org/en/

※掲載している情報は、2020年11月30日時点のものです。

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