「バーチャルウォーター」から見える水資源問題とは 牛丼1杯でペットボトル2,000本も消費 

バーチャルウォーターは、食糧輸入国が意識するべきものである。私たちがふだん、口にする輸入食料の生産に使われる水は、相当量に上る。間接的な水輸入により、世界の限られた水資源に与える影響を考えたい。

2020.11.30

バーチャルウォーターとは?

バーチャルウォーターとは、食料輸入・消費国がそれらを自国生産した場合、必要とされる水の消費量を推定するという意味を持つものである。仮想水と呼ばれることもある。

トウモロコシ1kgの生産には1,800lの水が必要とされる。そのトウモロコシを餌にして育つ牛から肉を生産するためには、1kgあたり約20,000倍の量が必要だ。結果として牛丼1杯には2,000l、ハンバーガー1個には1,000lが消費される。

輸入国は、間接的にこの水量を輸入していることになる。食糧自給率が低い国ほど輸入に頼らざるを得ないため、必然的にバーチャルウォーターの輸入割合も上がると言える。

類似しているものに、ウォーターフットプリントがある。ウォーターフットプリントとは、水量の消費量に加え、どこの水源地の水がどのように消費されたかを同時に推測する考え方だ。ウォーターフットプリントを考える際にも、バーチャルウォーターの概念が必要となる。

食品別のバーチャルウォーター量

目の前に広がる大海原

Photo by YUCAR FotoGrafik on Unsplash

日本の食糧自給率は、38%である(2019年)。多くの食料を輸入に頼る国として、バーチャルウォーターの輸入量は相当量に上ることは確かだ。環境省のホームページにある仮想水計算機を利用すると、生産に必要とされる水量が食品ごとに算出することができる。

仮想水計算機
https://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html

計算機の項目は、代表的な食品ごとに分けられている。米1合単位、パン1枚単位で必要水量の計算が可能だ。例として小麦粉1カップの生産に必要な水量を求めると、210リットルと表示される。ふだん何気なく消費する分の生産に必要となるバーチャルウォーター量が、意外なほど多いことがわかる。

そしてバーチャルウォーターは、決して仮想のものであるわけではない。日常的に口にする食料を生産するために、確実に利用されているリアルの水だ。限りある水資源を輸入・消費するにあたり、環境問題につながっていることを意識するべきだろう。

バーチャルウォーターを取り巻く世界と日本の現状

バーチャルウォーターは世界中で注目され、環境問題として認識されている。地球上の水資源は限られており、さらに政治背景や設備などの問題で、その水を使える層が限られてしまっているからだ。

日本は食料輸入大国であるため、バーチャルウォーターの輸出による水資源の不足はない。しかし、米作が盛んであることに注目するべきである。世界の灌漑用水の40%は米作で利用されている。日本も水資源問題に対して無関係とは言えないだろう。

日本でも、バーチャルウォーターに対する意識が高まりつつある。世界と日本のバーチャルウォーター問題について考えるべき時代は、すでに到来している。

バーチャルウォーターの最大輸入国と輸出国

バーチャルウォーターの輸入国・輸出国の関係は、経済的な貧富の差をうかがわせる。代表的な輸入国はアメリカ合衆国、日本、ドイツ、イタリア、中国など、いわゆる経済的な先進国だ。なお、アメリカと中国は輸出国としても挙げられている。

対してバーチャルウォーター輸出国のインド、エチオピア、パキスタン、アメリカのカリフォルニアでは、深刻な水不足によるストレスを抱えている。

インドでは1日に6回も水汲みに出なくてはならない。エチオピアの灌漑設備は干上がり、住民は泥水を汲みに3時間歩く。世界最大の地下水輸出国であるパキスタンでは、利用可能な水が毎年80%ずつ減少している深刻な状況だ。カリフォルニア南部では、すべての水を北部から購入している。

バーチャルウォーターの輸出国ほど人々が水不足に陥り、日常生活で不衛生な環境や不便を強いられる状況が、世界の現実なのだ。ここに挙げた以外の国でも、それこそ世界中で同様の問題が起きている。

バーチャルウォーターの問題と対策

水道で手を洗う人

Photo by Macau Photo Agency on Unsplash

バーチャルウォーターを取り巻く問題は、複数に上る。水源の需要拡大や人口の増加、気候変動によって物理的な水不足の悪化が懸念されている。2040年までには、中東諸国や北アフリカなど33ヶ国で重大な水ストレスが発生する予測だ。予測にはアメリカや中国といった先進国も含まれており、経済的な影響も心配される。

2050年以降には、50億人以上が水不足に直面する。比較的水資源が豊富な国でも、限定的な地域で同様の問題が起きると言われている。ロンドン、東京、モスクワでも、その数年後に水の入手が困難になるという予測が立てられているのだ。

バーチャルウォーターは、世界中が意識するべき環境問題となっている。国際NGOウォーターエイドでは、2030年までに世界中の人々が、必要な水を必要な時に利用できるようになることを提言し、行政機関をはじめ、企業への呼びかけをしている。

ディアジオ社では「ウォーターブループリント戦略」を打ち出し、2020年までに達成するべき目標を定めている。生産工場で消費される水量を50%にする取り組みだ。また、アフリカで清潔な水と衛生設備を届ける活動も行っている。

H&Mグループでは、生産過程で使用する水量の25%を削減。さらにカラチの取引業者に依頼し、生産時の80~90%の水を再利用することに成功した。創業者一族が出資するH&Mファウンデーションでは、カンボジア、エチオピア、ウガンダ、パキスタンで清潔な水と衛生の提供活動に尽力している。

他人事ではないバーチャルウォーター

バーチャルウォーター輸入大国である日本は、水資源の問題に対して後進的であるかもしれない。それでも、改めて目の前の食料や衣類の生産に使われる水について考えてみると、生活の多くの面でバーチャルウォーターに支えられている事実に気づく。個人でもできることから、行動していく必要があるだろう。

日本の食料廃棄は、毎年1,900万tだ。バーチャルウォーターを大量に輸入していながら、同時に大量に廃棄していることになる。消費できる分だけを買う、そして可能なら国産のものを食べれば、輸入されるバーチャルウォーターの削減に繋げていける。

バーチャルウォーター問題は、遠い世界のものではない。世界的な水不足は現実で起きているし、日本も決して無関係ではいられない。個人でも身近なことからできる対策を始める時代だといえるだろう。

参考資料
MOEカフェ バーチャルウォーター量|環境省
https://www.env.go.jp/water/virtual_water/moecafevw.html

※掲載している情報は、2020年11月30日時点のものです。

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