ポール・マッカートニーが提唱した「ミートフリーマンデー」 月曜日の“脱肉” が地球を救う

元Beatlesのメンバーであるポール・マッカートニーが立ち上げた運動「ミートフリーマンデー」。毎週月曜日は肉食を控えようキャンペーンを打ち出し、全世界でワークショップや啓蒙活動を続けている。この記事では、運動の立ち上げに至ったきっかけや日本における浸透度などを解説する。

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2020.05.23
SOCIETY
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牛の“げっぷ”で地球があたたまる

牧場で放牧されている牛

地球の平均気温が上昇を続けている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、地球温暖化がこのまま進んだ場合、2100年には最大4.8℃も上昇する可能性があるという。

温暖化の原因とされるのが、大気中に増え続ける温室効果ガスだ。石油や石炭、天然ガスといった化石燃料を燃やす際に発生する二酸化炭素が、温室効果ガスの総排出量の約65%を占める。(※1)。 

次いで多いのが、ゴミの埋め立てや下水処理に発生するメタンガス。総排出量の約2割にも上り、温室効果は二酸化炭素の21倍ともいわれる。しかも、驚くべきことに排出されるメタンガスの約15%が、牛のげっぷやおならから発生しているというのだ。

牛には4つの胃袋があり、一番目の胃袋(ルーメン)に存在する微生物がメタンガスを生成する。その多くがげっぷとして、残りはおならとして体外に放出される。世界で飼育されている肉牛や乳牛の総数は約15億頭。その牛一頭一頭が日々、膨大な量のメタンガスを発生させているのだ。

ポール・マッカートニーが提唱 「ミートフリーマンデー」とは

もしあなたが、「環境保全のために食肉をやめよう」「ベジタリアンになろう」と思い立ったとしても、突然慣れ親しんだ食生活を変えるのは難しいだろう。

実はここ数年、無理なく肉食を控えるために提唱された運動が話題を集めている。週のうち月曜日だけお肉を食べない日を設ける「ミートフリーマンデー(Meet Free Monday)」というキャンペーンだ。

発起人は、Beatles(ビートルズ)の元メンバーであり、世界的シンガーソングライターのポール・マッカートニー氏。環境保全や動物愛護に取り組む傍ら、ベジタリアンとして肉の消費量を減らすための活動を積極的に行なっている。

国連の発表に衝撃 なにか行動を起こす必要がある

ミートフリーマンデーを立ち上げる直接のきっかけになったのは、2006年に国連が発表したレポートの一文。そこに記されてあった「畜産動物が空気中のメタンガスを発生させる一番大きな原因である」という事実に衝撃を受けた。

ポールはそれまで、地球温暖化の大きな原因は車や飛行機などの排気ガスだと思っていたのだ。「なにか行動を起こさなければいけない」。ポールはそんな衝動に駆られたという。

その後、同じく国連から提案されていた「週1日を、肉を食べない日にする」という、ミートフリーマンデーの原型となる概念に出会う。

もし多くの人がこれを実践したら、温室効果を緩和することができるーー。彼は多くの人にこのアイディアを話すと多くの賛同者が集まった。そして2009年、世界にこの動きを広めるべくキャンペーンをスタートさせた。

小学校でワークショップ開催も ミートフリーマンデーで変わる海外

ミートフリーマンデーは、いまでは誰でも簡単にトライでき、自分自身が地球を守っていると感じられる活動となっている。

活動は2014年の時点で世界36ヶ国(※4)に広がり、月曜日に肉を食べないだけではなく、学校やレストランなどでワークショップなどを行い、菜食による環境問題緩和について学べる機会もある。

例えばベルリンのとある小学校では、植物ベースの食事の健康と栄養を教える授業や、食品を選ぶこと環境保護の関係を学ぶ授業が一週間に渡って行われた。(※5)

さらに、スーパーを訪れて動物性食品の数を確認したり、ヴィーガン料理も体験をしたりと、野菜に置き換える食事の手軽さや楽しさを学べる場となった。

最終日には生徒と保護者、教師向けのヴィーガン料理のパーティーで締めくくられた。ある生徒は「月曜日からヴィーガンを食べてきましたが、とてもおいしくて簡単です。私はおそらくそれを続けます」と感想を述べている。

環境問題に加え、菜食料理が簡単でおいしいということを学べたこの授業は、多くの家庭でミートフリーマンデーを行うきっかけになっただろう。

東京都庁でも導入を決定、日本でも徐々に浸透

東京都庁の外観

2018年のポール・マッカートニー来日の際、彼からアドバイスを受けた東京都は都庁でもミートフリーマンデーを導入すると決定した。同年10月1日より、東京都庁の職員食堂でベジメニューの提供がスタートしている。

第一本庁舎では、ミートフリーマンデーの毎週月曜日にベジ定食が提供され、第二本庁舎では単品のベジメニューが毎日提供されている。嬉しいことに、職員だけでなく観光客を含めた一般の方も利用が可能だ。

東京都庁がこのように取り組みを始めたことで注目を集め、ミートフリーマンデーの名が日本に広まる大きなきっかけとなった。

「ミートフリーマンデー・オールジャパン(MFMAJ)」という団体も発足し、日本でもミートフリーマンデーを盛り上げようと活動をしている。定期的にイベントやワークショップなどが企画されており、ベジ・ノンベジ関係なく交流する場所を提供している。

食卓から地球を助ける

肉を含まない食事

ミートフリーマンデーは私たちの毎日の食生活を考え直すだけで、地球環境保護に貢献できる。新型コロナウイルスの影響もあり、家で過ごす時間が長くなってきていると思う。

家で過ごす楽しみのひとつとして、週に一日だけベジタリアン料理に挑戦してみてはどうだろうか。ベジタリアン料理は奥が深く、さまざまな工夫がされていてとてもおもしろい。

※1 IPCC第五次評価報告書

https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf


※2 食肉の消費動向について

https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000814.html


※3 絵で見る世界の畜産物需給

https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000352.html


※4 Meat Free movement spreads to 36 countries

https://www.meatfreemondays.com/meat-free-movement-spreads-36-countries/


※5 Berlin pupils get vegan lessons

https://www.meatfreemondays.com/berlin-pupils-get-vegan-lessons/

※掲載している情報は、2020年5月23日時点のものです。

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