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世界経済フォーラムによると、世界では年間約1700億枚の使い捨ておむつが生産・廃棄され、廃棄物は約4000万トンにのぼる。おむつに使われる高吸水性ポリマーは石油由来の非生分解性で、マイクロプラスチック汚染の温床だ。この問題に挑むべくフィンランド企業が持続可能な代替素材を開発した。

Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
フィンランドのスタートアップ「Elea & Lili」は、マイクロプラスチックを含まない高吸収材性素材を市場に投入するため、250万ユーロ(約4億6000万円)の資金を調達したと発表した。
「Elea & Lili」という名は、共同創業者でCEOのタトゥ・ミエッティネン氏の娘に由来する。じつは、2019年に生まれた彼の娘・エレアは低酸素性虚血性脳症(HIE)を患い、生後まもなく新生児ICUで生死をさまよった。
「この経験は、私たち家族の世界観を根底から塗り替えました。娘が回復したなら、次の世代のために意味のある持続可能なものをつくることに人生を捧げようと決意しました」 とミエッティネン氏はLinkedInに綴っている。
2017年の第一子誕生をきっかけに使い捨ておむつの廃棄量に問題意識を持ち、娘の闘病を経て数年にわたる研究開発へと踏み出したミエッティネン氏は、2020年に共同創業者・CTOのミーカ・ニキンマー氏と出会い、新世代の吸収材開発のプロジェクトをスタートさせた。
Elea & Liliが開発したのは「セルロース超吸収材(Cellulose Super Absorbent)」と呼ばれる素材。地球上でもっとも豊富に存在するといわれる天然ポリマー(高分子吸収体)であるセルロースを活用した、生分解性という特徴を持つ高吸水素材だ。 ISO規格に基づいた安全性・皮膚適合性試験をクリアしている。
この素材の長所として、従来の石油系高吸水性ポリマーと同等の機能性のほかにもうひとつ、既存のおむつ生産ラインにそのまま組み込めることが挙げられる。市場の需要に応じて拡張可能な製造を実現できるような設計から、グローバルな素材カテゴリーそのものを置き換えていく未来を見据えていることがうかがえる。
例えば、農業も生分解性を備えたセルロース系代替品に置き換え可能な分野のひとつ。これまで土壌の水分保持や栄養効率を高めるため、石油系高吸水性ポリマーが農地に混合・散布されてきた。
その結果、深刻な土壌汚染を引き起こし、EUでは2028年から、土壌に残留する化石燃料由来のプラスチック成分を意図的に添加した製品の使用規制が始まることが決まっている。これによって農業食品産業での需要は追い風になりそうだ。
今回調達した資金は、特許取得済みのセルロース素材の生産規模をパイロット試験規模から工業レベルへと引き上げるために使われるようだ。米国と欧州での初期商業展開に向けた準備が、いままさに動き出したといえるだろう。
個人の小さな物語を、社会を照らす希望に育て上げていくその姿に深い感銘を受けずにはいられない。
※参考
Elea & Lili Bags $2.9M to Scale Microplastic-Free Material for Diapers & Farming|greenqueen
Tatu Miettinen|LinkedIn
Disposable nappies are one of the biggest contributors to plastic waste – but how green are the alternatives?|weforum
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