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世界では年々、「修理する権利」を求める声が広がっている。これを受けて始まったAppleの「セルフ修理プログラム」に、iPadが追加された。
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Appleは2025年5月28日、同社のセルフ修理プログラムにiPadを追加すると発表した。対象となるのは、iPad Air(M2以降)、iPad Pro(M4)、iPad mini(A17 Pro)、iPad(A16)で、ディスプレイ、バッテリー、カメラ、外部充電ポートなどのコンポーネントが修理可能となる。
それまでApple製品の修理は同メーカーでしか行えなかったが、2022年に開始されたセルフ修理プログラムで、修理マニュアル、Appleの部品、診断ツール、レンタル工具キットなどの利用が可能となった。そして、セルフ修理プログラムはiPhoneやMacシリーズを中心に展開されてきたが、今回の追加でiPadユーザーも自分で修理を行えるようになった。
AppleでAppleCare担当副部長を務めるブライアン・ナウマン氏は以下のようにコメントを発表している。
「Appleの目標は、可能な限り長く使える世界最高の製品をつくること。今日の発表により、より多くの顧客に修理サービスを拡大し、安全性、セキュリティ、プライバシーを損なうことなく製品の寿命を延ばすことができる」
Appleの「セルフ修理プログラム」は、「修理する権利(Right to Repair)」運動の流れを汲むものでもある。修理する権利とは、消費者が購入した製品を自分で修理したり、第三者に修理を依頼したりする権利を指し、環境保護と経済的メリットの両面から注目を集めている。
これまで、多くの電子機器メーカーは修理を自社や認定業者に限定してきた。だが、これが製品の早期廃棄や買い替えを促進し、電子廃棄物(e-waste)の増加につながるとの批判があった。修理する権利の拡大は、製品寿命の延長、資源の有効活用、廃棄物削減といったサステナビリティの向上に直結する。
世界で幅広く製品が使われているAppleでは、この動きに対応するべく「セルフ修理プログラム」を開始。専用サイトで修理マニュアルを公開し、パーツなどの注文も可能だ。
Appleの「セルフ修理プログラム」の対象となっているのは、2024年6月の発表時点で、英国、フランス、ドイツ、オランダなどの欧米32か国。ユーザー自身でトラブルシューティングの診断を行える「Apple Diagnostics for Self Service Repair」ツールは33カ国、24言語で利用可能だ。だが、まだ日本は対象となっていない。国による「技術基準適合証明」マークが、この障害になっていると言われる。
消費者が自分で修理について選択できることで、製品の寿命が延び、電子廃棄物の削減につながる「修理する権利」。Appleのセルフ修理プログラムは日本での展開はまだだが、持続可能な社会の実現に向けて、メーカー主導の修理支援は新たなスタンダードとなりそうだ。
※参考
Apple launches Self Service Repair for iPad, expands repair programs|Apple
Self Service Repair|Apple
Apple expands Self Service Repair Diagnostics support to Europe|Apple
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