社会全体を変える「修理する権利」とは 世界各国と日本の現状

近年話題になる機会も多い「修理する権利」。具体的にどのような権利を指すのか、わかりやすく解説しよう。修理する権利を巡る各国の動きや、具体的な取り組み、日本の現状について伝える。修理する権利を知って、持続可能な社会の実現を目指そう。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2021.10.29
LIFESTYLE
編集部オリジナル

地球とともに生きる「ハッピーエレファント」のある暮らし|日常に “ハッピー”を運んでくれる使い心地を読者が実感

Promotion

アメリカで注目の「修理する権利」とは

「修理する権利」とは、さまざまな機器の利用者が、メーカーを通さない形で各製品の修理ができる権利のことである。

車からスマートフォン、冷蔵庫に電子レンジなど…我々の身近には、さまざまな電化製品・車がある。それらを長く使っていれば、故障するのは当たり前だ。修理する権利が注目されるきっかけになったのは、その後の問題である。

車や各種電化製品が壊れたとき、メーカーに修理を依頼するのが一般的だ。これまで、とくに疑問を抱く機会はなかったかもしれない。しかしこれは、「メーカーに縛られている」のと同義である。メーカー側が提示した修理費用を拒絶することは困難であり、「修理不可能」と言われれば、諦めるしかなかったのだ。

とはいえ、実際に各種製品を購入し、所有しているのは消費者である。「自由に修理する権利を与えられないのはおかしい」というのが、権利を求める消費者側の主張である。その裏には、「お気に入りの製品をできるだけ長く使いたい」「大量生産・大量消費社会から脱却したい」という思いもある。

修理する権利がとくに注目されているのは、アメリカである。2021年7月には、米連邦取引委員会(FTC)が「修理する権利」に関する法律の施行を可決。全会一致での決定であった。アメリカ国内では修理する権利を求める声も多く、FTCの決定は、こうした世論を後押しするものと言えるだろう。

メーカーによる従来の修理との違い

では、メーカーによる従来の修理方法と、修理する権利を認められた場合の方法には、どのような違いがあるのだろうか。

まずは、メーカーに依頼する場合の流れは、概ね以下の通りである。

1.修理したい製品のメーカーにコンタクトを取る
2.メーカー修理スタッフに、修理見積もりを依頼する
3.受け取った見積もりを確認し、修理するかどうかを決定する
4.製品をメーカーに送る、もしくは修理スタッフが訪問する
5.メーカーが保有する部品と技術を用いて修理する
6.修理完了(修理料金の支払い)

一方で、修理する権利を認められた場合の修理手順は、がらりと変わるだろう。

1.修理したい製品の技術情報を確認する
2.どのような手段で修理するのかを決定する
3.自分で納得できる修理手段で修理をする

車や各種電化製品について、現在はメーカー側が、修理に必要な技術情報や診断ツールを独占している状態にある。修理する権利が広く認められるようになり、こうした情報やツールが公開されるようになれば、それをもとに自力修理も可能になるだろう。「インターネットで必要な部品を取り寄せて、休日に自分で手を加える」という行動も可能である。

もちろん、自力修理が難しい人は、修理専門スタッフへの依頼が可能だ。メーカーはもちろん、街の電気店や小売店など、修理方法や見積もりを提示してもらった上で、自分自身が納得できるところに修理依頼を出せるようになるだろう。

修理に関する情報・知識をメーカーが独占している状態では、技術革新や価格競争は生まれない。修理する権利を求める側は、こうした問題点も指摘している。

修理する権利によって生じるメリット

修理する権利が認められれば、以下のようなメリットが発生するだろう。

・修理の選択肢の幅が増える
・電化製品を長く使えるようになり、ごみを削減できる
・修理費の高額化を防ぐ
・修理にかかる時間を短縮できる

これまでは、メーカー一択だった修理方法。選択肢が増えれば、その分「修理して長く使おう」と思う人も増えるはずだ。また、スマートフォンやパソコンなど、IT機器内部に使われている部品は、無限に手に入るわけではない。

より気軽に修理できる環境が整えば、「壊れたからすぐに新しいものを購入する」といったビジネスモデルから脱却し、「いまあるものをできる限り大切に使い続ける」という新たなモデルが誕生するだろう。

メーカーによる反対意見と最近の流れ

修理する権利に関する問題が複雑化しているのは、メーカーがこれに反対しているためである。修理に必要な情報やツールの公開は、メーカーにとってはリスクでもある。「そう簡単には認められない」というのが、多くのメーカーの本音だろう。

なかでも根強く反発しているのが、AppleやGoogleなど、アメリカの大手メーカーである。

これらのメーカーが強く訴えているのは、「セルフ修理によるリスクの増加」である。拙い技術で素人が修理に取り組めば、製品の損傷につながるかもしれない。また、思わぬ事故が発生し、ユーザーが不利益を被る可能性もある。このような理由で、メーカーは反発している。

一方、同じく大手メーカーであるMicrosoft社は、2021年10月に「修理する権利」に対する支持を表明。今後、他のメーカーがどのような動きをするのか、注目される。

修理する権利に関する各国の動向・法案

アメリカ以外では、「修理する権利」についてどのような動きを見せているのだろうか。日本を含め、解説しよう。

EUが「修理する権利」に関する規則案を採択

EUでは、循環型経済行動計画の一環として、すでに消費者の「修理する権利」を認め、その規則をまとめた案を採択している。採択されたのは、2020年11月のことであった。修理する権利に基づき、EU圏内では、従来よりも手軽にセルフ修理が可能なスマートフォンや各種電化製品も販売中だ。

フランスでは「修理しやすさ」を明示

フランスでは2021年1月から、電気・電子機器への「修理可能性指数」の表示を義務付けている。製品の寿命の長期化を目的に決定されたもので、0から10までのスコアを使い、「この製品がどれだけ修理しやすいか」を示している。消費者は購入時に、「修理のしやすさ」を考慮しながら製品を選択できる仕組みだ。(※)

日本の認知度と動きについて

日本では、各国のような具体的な取り組みは、いまだスタートしていない。しかし、アメリカFTCの新たな法律施行によって、今後は一定の影響を受けるだろうと予測されている。「修理する権利」の認知度はまだまだ少ないものの、スマートフォンやパソコン、人気ゲーム機などを介して、興味を抱く人も増えてきている。今後も、こうした流れは継続していくだろう。

「修理する権利」で持続可能な社会の実現へ

世界が抱えるさまざまな課題を解決するために、我々は今、社会全体を変えるべきタイミングに差し掛かっている。修理のしやすさにこだわった製品づくりが当たり前になれば、「次から次へと買い替えてごみを増やす」のではなく、「傷んだ部品のみを取り替えて、同一製品を長く使う」という行動も可能になるだろう。

2021年現在、アメリカやヨーロッパで活発になっている動きだが、日本においても、少しずつ流れは変化してきている。「修理する権利」の認知度が上昇すればするほど、人々の価値観も大きく変わっていくのかもしれない。

※掲載している情報は、2021年10月29日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends