社会を変革する人に光をあてる『EARTHBOUND』が日本上陸! 第一弾は環境汚染と舗装問題を解決したケニア人女性

EARTHBOUND

Photo by ⓒ2022 Ritual Arts. ALL Right Reserved.

Movie Column いまいちばん観たい映画

俳優 オーランド・ブルームが製作総指揮を務めるドキュメンタリーシリーズ『EARTHBOUND』。本シリーズは社会を変革する人々に光をあてるもので、第一弾が日本で3月に公開される。今回は廃プラによる環境汚染と舗装問題を同時に解決したケニア人女性の奮闘を取り上げている。

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2025.03.14
SOCIETY
健康・福祉

人も社会も地球も、持続可能な未来をつくる明治グループのサステナビリティアクション

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転機は、海で足にまとわりついたビニール袋

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プラスチックの生産量は年間約3億7,000トン。その半数は使い捨てだ。約12%は焼却され、残りは埋め立てや不法投棄される。海中のプラスチックの量は、2050年までに魚を超えるとか。破砕され微細な破片になり、呼吸や飲料を通じて体内に取り込まれる。

「一人あたり1週間に摂取するマイクロプラスチックの量はクレジットカード一枚分」だと紹介するのは、ナイロビに住む若くてとても陽気なンザンビ。本作の主人公だ。“稼げる仕事”だからと石油ガスのデータ分析員として働くうちに、「私は本当にこの仕事をしたいの?」と疑問を抱くようになった彼女は旅に出た。ケニアの沿岸都市モンバサを訪れ、ターコイズブルーに輝く大好きな海に触れ喜んでいるのも束の間、彼女の足にビニール袋がまとわりつき、目をやると多くのごみに溢れていた。

「こんなの見たくない」ーーー。

「私がしたいのはとにかく行動を起こして、この状況を変えること。問題は何をするかだ」という思いに至り、彼女は仕事を辞めた。

リサイクル大国の一部は、ごみの輸出量も最大級

舞台は、ナイロビ北東部に位置するダンドラという地域にある東アフリカ最大のごみ集積場。ここには毎日2,000トン以上のごみが運び込まれてくる。ケニアにはリサイクルの公的制度はない。政府は環境汚染の問題や有害廃棄物の投棄の観点から、集積場を閉鎖したがる一方で、ごみを拾って売るのを生業とする多くの廃棄物回収業者たちに、支えられているのが実態だ。

また、分別はするものの、「ごみの行き先についてはあまり知られていないが、多くは輸出される」ことについても言及。アメリカ、日本、ドイツ、イギリスなどの「リサイクル大国として知られる国々の一部は、輸出量も最大級」だとンザンビは指摘する。

アメリカは最大の輸出国だ。「ケニアを含む約90ヶ国に45万トン以上を輸出している。受け入れ国はごみ処理費用の不足から、プラスチックを無秩序に投棄し、焼却することも」。

こうした状況を受けて国家環境管理局はビニール袋の使用・製造・輸入を業務用も家庭用も違法としたが、根本的な問題は解決されていない。ケニアでの舗装の問題に着目したンザンビは、「廃プラ問題と舗装の問題を、同時に解決できないか?」と思いつき、研究開発に専念し始めた。

そして、彼女は廃プラ材で、軽量かつ低コストで製造可能な舗装用のレンガづくりを事業化する。本作は苦戦しながらも、前を向き続けるンザンビの挑戦と、彼女がリーダーにまで成長したその軌跡を映し出す。

自分の地域の問題を一つ解決すればいい

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無力さを覚えるンザンビに、彼女の母は自国の木を救ったワンガリのことを述懐する。2004年にノーベル平和賞の授賞式で「自分は無力だと感じるから、ハチドリの話をする」と切り出したワンガリ・マータイのことだ。

「森で大火事が発生した時に、動物たちは森から出てきて、炎に圧倒され『自分たちに何もできない』と立ち尽くしてしまう。でも、ハチドリは違った。『火事を何とかしなきゃ』と言うと、近くの小川へ行って、一滴の水を口で運び火の上にかけた。そして再び水を運ぶと火にかけた。できる限り早く飛び、一滴の水を運んでは火にかけ続けた。その間、他の動物たちは落胆して言った。『そんな少しの水でどうするつもり?』。ハチドリは言った。『最善を尽くしている』」。

ワンガリは続けてこう訴えた。「どこにいても何をしていても、できることは何かあります。小さなことの積み重ねが違いを生みます。だから、地域のハチドリになってください」。そして、ンザンビのさらなる躍進が始まる。本作を通じて、彼女が問題の本質に気づき、なぜ人々の信頼を得ることができ、リーダーにまで成長したかということがわかるだろう。

エンターテインメントの力で、持続可能で調和の取れた未来を創造する

「小さな気づきを生み、小さくても自分で始められるアクションに繋げていただくキッカケをつくりたい」。そんな思いから、本作を日本語に翻訳し、日本での上映を実現するために、NPO法人ハミングバードがクラウドファンディングを実施。今年3月に上映が決定した。その残りの資金で、国内の環境問題や社会問題に取り組む人々や教育、社内研修などの現場でも活用していく。

製作総指揮を務めたオーランド・ブルームは、「豊かな地球を後世に残すことが重要です。僕らは信条や文化が違っても、自然の前では平等です。近年、自然の猛威は勢いを増すばかりです。そこで地球環境の危機に変化をもたらせると信じて、本プロジェクトを立ち上げました」と語る。

そして、『アースバウンド』で取り上げる人々について、「独創力と大胆な構想、地球への愛を原動力に、大きな課題に挑み、ポジティブな変化を生み出しています。しかも最小限の元手で」と話し、「環境に関する意識を変え、エンタメの力で家族を結びつけ、この美しい世界に対する感謝の気持ちに気づかせてくれる作品です。僕らは 『アースバウンド』が持続可能で調和の取れた未来につながると信じています」とプロジェクトの意義を強調する。

EARTHBOUND

映画『EARTHBOUND』
2022年/アメリカ/英語/ドキュメンタリー/48分

俳優 オーランド・ブルームが製作総指揮を務めるドキュメンタリーシリーズ『EARTHBOUND』。社会を変革する人々に光を当てるもので、一人ひとりが行動する大切さを訴える。第一弾では廃プラ問題と舗装問題を同時に解決したケニア人女性の奮闘を取り上げ、日本で3月14日から公開される。

制作:Hummingbirds Global(現一般社団法人ハミングバード)、Ritual Arts
監督:ファールード・メイボディ
エグゼクティブプロデューサー(製作総指揮):オーランド・ブルーム他

劇場上映予定:
東京会場(下北沢トリウッド)にて、2025年3月14日(金)〜20日(木・祝)
大阪会場(第七藝術劇場)にて、2025年3月15日(土)〜21日(金)
https://hummingbirds.or.jp/earthbound/

執筆/稲垣美穂子 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2025年3月14日時点のものです。

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