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減反政策は、1970年代からおよそ50年にわたり実施されていた政策だ。この政策が2018年度に廃止された。理由や影響、廃止によるメリット・デメリット、減反政策廃止がもたらす日本農業の未来について見ていこう。
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減反政策とは、生産過剰となった米の生産を抑制し、生産量を調整する農業政策である。目的は、米価の安定や米需給の均衡を図ること、米をほかの作物に転作させることで、食料安全保障への貢献、地域適作の推進を図ることであった。
減反政策が本格的に開始されたのは昭和46年(1971年)だ。昭和40年代前半に大豊作が続き、膨大な過剰在庫が発生したことにより政策が行われることとなった。(※1、※2)
減反政策が実施された背景を、日本の米づくりの変遷から紐解こう。戦中・戦後は、食料不足を解消しようと食糧管理制度が行われた。この食料管理制度では、国が米をすべて買い上げ、農家は国の管理下のもと配布・販売していた。昭和40年代になると、農家の生産力が向上し生産量が多くなったものの、食の多様化により米の消費量は減少していく。そのことに加え、大豊作の年があったことなどで米の過剰問題が発生。米価の下落や政府備蓄米の増加を招いた。こうした問題を解消するために、米の生産調整を目的に減反政策が昭和46年(1971年)から実施されることとなった。(※3、※4)
減反政策には、生産調整、米の直接支払交付金、米価変動補填交付金、水田活用の直接支払い交付金があった。生産調整は、政府が都道府県別に米の生産目標数量を設定し、これに基づき都道府県から市区町村、市区町村から各農業者に数量と配分が調整された。農業者は、この生産調整に参加・不参加の選択ができた。
米の直接支払交付金は、上記の生産調整の参加者に対し、10アール(約1,000m2)当たり15,000円を交付するものだ。米価変動補填交付金は、前年度に米の直接支払交付金を受け取った者が、前年度の販売価格が政府の定める価格を下回る場合に、その差額分を10アール当たり単価で交付するもの。水田活用の直接支払い交付金は、水田で大豆、加工用米、飼料用米の生産をする農業者に品目・面積に応じた金額を交付するもので、飼料用米・米粉用米は10アール当たり80,000円であった。(※5)
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減反政策が廃止されるに至った主な理由を解説する。
減反政策には、米の生産量を減らす代わりに農家に支給される多額の補助金が伴った。この補助金が国家財政に負担を与えており、長期的には維持が難しいとされた。
減反政策の廃止の理由として、環太平洋連携協定(TPP)による海外産の安い米の輸入圧力が挙げられる。これにより、国際競争力の強化の必要性が出てきたことも要因である。(※4)
減反政策では、農家は政策に従えば国から補助金が入り、経営努力をせずとも安定した収入が担保される。しかしそれが弱体化につながるケースもあり、そうなると市場で勝負できる米ができず、競争力も落ちてしまう。こうしたことが指摘され、自由な農業経営を目指す政策転換を図るために、減反政策が廃止されることとなった。(※7)
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ここでは、減反政策廃止の具体的な内容や流れを説明する。
2013年に政府は、国が農家ごとに主食米の生産量を割り当てて価格を維持する生産調整(減反)を2018年度に廃止することを決定。実際に2018年に国による生産数量目標の配分が廃止され、減反政策が終了した。(※8、※9)
減反政策の廃止により、農業者は自らの経営判断により消費者ニーズに合った多様な米の生産・販売を行うこととなった。また国は水田をフル活用し、需要のある麦、大豆、米粉用米、飼料用米等の戦略作物や野菜、果樹などの高収益作物等への転換を推進した。(※10)
減反政策の廃止によって、産地・生産者が中心となり需要に応じた生産・販売を行う「米政策改革」が定着するよう、農林水産省では次のような支援をおこなっている。
・水田を最大限に有効活用するための「水田活用の直接支払交付金」
・主食用米の中食
・外食などのニーズに応じた生産と安定取引を推進するためのマッチングの支援・米の都道府県別の販売進捗や在庫・価格などの情報提供(※10)
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減反政策の廃止によって、どのようなメリット・デメリットがあるのか。それぞれ解説する。
生産者側の大きなメリットとしては、農家が自由に作付け計画を立てられるようになることだ。これにより、各々の創意工夫による競争力向上が期待される。なかでも需要のある品種や輸出向けの高付加価値米への転換が進み、日本産米のブランド力強化につながる可能性がある。
また農地を柔軟に活用できるようになり、米以外の作物や果樹、畜産飼料など、さまざまな農業生産が促進される効果もある。米以外の農業生産が進めば、農地の利用率向上や地域活性化を後押しし、長期的には国内農業の自立と持続可能性の向上が見込まれる。(※10)
減反政策の廃止により、自由な生産が可能になることで米の供給過剰が発生し、価格の下落が懸念される。とくに規模の小さい農家や高コストで生産する農家は、価格競争に巻き込まれ経営が悪化する恐れがある。
また生産者が主体的に生産を行わなければならず、地域間や農家間の格差が拡大する可能性があるのもデメリットだ。さらに減反政策が奨励していた転作作物の栽培が縮小すれば、一部の農地が利用されなくなるため耕作放棄地が増加する可能性もある。
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減反政策廃止後、政府は産地・生産者が中心となり、需要に応じたさまざまな米の生産・販売を行う米政策へと見直した。それに伴い、水田をフル活用し、需要のある麦、大豆、米粉用米、飼料用米などの戦略作物や、収益性の高い野菜や果樹などの高収益作物への転換、「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」による米輸出の拡大を推進している。
また日本の農業の基本的な方針として「産業政策」と「地域政策」を軸に、食料を安定的に供給し、食料自給率の向上と食料安全保障を確立することを掲げている。これらを確立するために、新たな価値の創出による需要の開拓、農業の持続性確保に向けた人材の育成・確保と生産基盤の強化に向けた施策の展開、スマート農業の加速化と農業のデジタルトランスフォーメーションの推進、SDGsへの取り組みなどを講ずるべき施策としている。(※6、※10)
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減反政策廃止が日本農業の将来に与える影響と、その展望を考察する。
減反政策が廃止されたことで、農家は米の生産量を自由に決められるようになる。この自由化により高品質米や輸出用米の生産が拡大する可能性が高まり、競争力向上が期待できる。また生産性の増大が期待できるため、米産業の発展に寄与するだろう。
今後、注目される可能性があるのが地域ブランド米だ。全国でブランド米が次々と登場しており、減反政策が廃止されたことによってブランド米の競争が激しくなることが予想される。地域一体となって地域ブランド米をつくれば、個人の品質が保たれ、ブランド米として知名度が定着し、高単価での販売ができるようになり地域がうるおう。また、後継者不足の解消の一助となるだろう。(※11、※12)
日本政府は、環境保全型農業の確立を目指している。この環境保全型農業とは「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意し、土づくりなどを通じて化学肥料、農薬の使用などによる環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」のことを指す。よって、環境への負荷を最小限に抑えながら食料生産を行うことが求められている。減反政策の廃止により、需要に応じた米の生産・販売をすることで、持続可能な農業への道筋となる可能性がある。(※13)
海外では、日本食レストランやおにぎり店などの人気上昇により、2023年の米の輸出額は94億円と前年度より27%も増えている。こうした需要に対応するために、今後、米農家は海外マーケットに対応可能な質、数量、価格の面で競争力を有する米の生産が求められる。そのためには、付加価値の追求やブランド米の開発が必須といえる。(※6、※14)
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減反政策廃止を機に、新しい農業形態の創出が期待される。ただし農家には創意工夫が求められ、競争力についていけなければ経営悪化の恐れもある。日本農業を明るい未来に導くには、持続可能性や地域社会との共生がカギとなるだろう。
※1 米の生産調整政策の経緯と動向|国立国会図書館デジタルコレクション
※2 1.米に関する資料|首相官邸ホームページ
※3 米の生産調整見直しをめぐる課題 |参議院
※4 なぜ減反を廃止するの? 世界のコメ農家と競争へ|日本経済新聞
※5 「減反廃止」の実情を読み解く|みずほ総合研究所
※6 米をめぐる状況について|農林水産業
※7 減反廃止を機にコメの競争力を高めよ|日本経済新聞
※8 減反5年後廃止を決定 政府、コメ政策転換|日本経済新聞
※9 【米農家のみなさまへ】減反政策の廃止とこれからの米づくりについて(主食用米の作付参考値の解説)|真岡市
※10 第4節 米政策改革の動向|農林水産省
※11 新しいブランド米が相次ぎ登場 ~コメの基礎知識と販売の現状を知る|nikkei4946.com
※12 ブランド米の高品質安定生産と販売促進活動|農林水産省
※13 環境保全型農業関連情報|農林水産省
※14 第4章 日本産米の輸出促進に向けた課題|農林水産省
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