防災対策に欠かせないハザードマップとは? 種類や内容、作成の仕組みを解説

地図が載った手帳

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ハザードマップとは、防災対策などに役立てることを目的として、避難場所・経路などを示した地図のこと。洪水、地震、津波、火山、土砂災害、高潮など7つの災害別で作成されている。この記事では、ハザードマップの種類や特徴について解説していく。

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2025.01.10
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ハザードマップとは

地図

Photo by kelsey knight

ハザードマップとは、防災対策や被害軽減に役立てることを目的として、浸水想定区域、避難場所、避難経路、防災関係施設の位置などを示した地図である。

土砂災害や洪水などは、避難までのリードタイム(始まりから終わりまでにかかる時間)があるため、発生予想時点から早めの避難行動をとることが求められる。したがって、ハザードマップを利用した避難行動を意識しておくことは、私たちの命を守るためにもとても重要だ。(※1)

ハザードマップの種類と内容

地図とコンパスと定規

Photo by hendrik morkel

ハザードマップは7つの災害別(洪水・内水、地震、津波、火山、土砂災害、高潮、ため池)で作成されている。大きく分けると各自治体が公表する「わがまちハザードマップ」と、国が公開する「重ねるハザードマップ」の2種類がある。ここでは、掲載情報の種類と内容について紹介する。(※2、※3)

洪水ハザードマップ

洪水ハザードマップには、以下のような特徴と掲載情報がなされている。

・想定最大規模降雨や高潮による浸水想定区域や水深を示した図面
・洪水予報などに関する内容の伝達方法
・避難施設や避難経路に関する事項
・避難訓練の実施に関する事項
・浸水想定区域内に存在する地下街や要配慮者利用施設などの場所
・土砂(津波)災害警戒区域 (※4)

土砂災害ハザードマップ

土砂災害のハザードマップには、以下のような特徴と掲載情報がなされている。

・土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域、これらの区域における土砂災害の発生原因となる自然現象の種類を表示した図面
・土砂災害に関する内容の伝達方法
・避難施設や避難経路に関する事項(警戒区域における警戒・避難を確保する上で必要な事項)(※4)

津波ハザードマップ

津波ハザードマップには、以下のような特徴と掲載情報がなされている。

・津波災害警戒区域や同区域の基準水位を示した図面
・津波に関する内容の伝達方法
・避難施設や避難経路に関する事項(※4)

地震ハザードマップ

地震ハザードマップには、以下のような特徴と掲載情報がなされている。

・地震被害予測や被害範囲
・想定地震の規模や震源からの距離、地盤の状況
・地震の揺れの強さ
・建物の全壊率予測
・市民に実施してほしい取組事例(※2、※5)

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ハザードマップの見方と活用方法

地図を見る人

Photo by glenn carstens peters

ここでは、ハザードマップの基本的な見方や、情報をどのように活用するかについて解説する。

地図上の色分けや記号の意味

地図上の色分けや記号の意味として、色が付いていないエリアは災害リスクが極めて少なく、色の付いたエリアは災害リスクが想定されている。また、色が濃くなるにつれて災害リスクも高くなる。

土砂災害のハザードマップでは、命や身の危険が生じるおそれのある区域を色別で振り分けている。黄色はイエローゾーンで「警戒地域」、赤はレッドゾーンで「特別警戒地域」とされており、赤の方が危険度は増す。

なお、8つの災害(洪水・崖崩れ・高潮・地震・津波・大規模な火事・一時的に大量の降雨が生じた場合において、下水道その他の排水施設または河川、その他の公共の水域に当該雨水を排水できないことによる浸水・火砕流)は、避難様態を考慮しつつ災害種別記号で4種に振り分けられている。(※3、※6、※7)

自宅や勤務先周辺のリスクを確認する方法

自宅や勤務先周辺のリスクを確認する方法として、周辺を災害の種類ごとに地図上の色分けで確認し、色が濃く表示されれば災害リスクは高いといえる。したがって、該当するようなら万が一に備えて家族と共有しておくと安心だ。(※3)

避難経路と避難所の確認方法

自宅や勤務先周辺の避難場所や避難経路はどこなのか、あらかじめ確認しておくことも大切だ。スマホから利用できる防災情報アプリ「全国避難所ガイド」もあるため、これらのツールを活用するのもひとつの手。

自宅や勤務先などから最寄りの避難所までの安全なルートを確認し、通行規制となる道も確認しておくと安心だ。なぜなら、災害時は土砂崩れや冠水などの危険性がある道路が通行規制される。これらのルートは避難時に使用できないと想定し、別のルートを確認しておく必要がある。また、そのルートを実際に通行してみて問題なく行けるかどうかも確認しておくといいだろう。(※3、※8)

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ハザードマップの作成と更新の仕組み

本を読む人

Photo by sarah noltner

ここでは、ハザードマップがどのように作成や更新がなされているのか、その仕組みについて説明する。

作成方法

ハザードマップは各自治体によるリスク調査とデータ収集の上で作成される。たとえば、水害ハザードマップは国土交通省の「水害ハザードマップ作成の手引き」などを参考につくられるが、第一に「住民目線」で作成されることをベースとしている。(※9)

更新のタイミングと必要性

ハザードマップは地形変化や気象の影響など、最新情報を反映しながら定期的に作成・更新がされている。したがって、ハザードマップに関する印刷物が配布されたときや、新たな地域に引っ越したときなど、タイミングを見て確認しておくと安心だ。(※9)

関連する国や自治体の役割

2015年2月の「水防法」改正により、洪水ハザードマップは1000年に一度のハザードを想定した図が公表されるようになった。

この「水防法」改正によって「国や都道府県・市町村は、想定し得る最大規模の降雨・高潮に対応した浸水想定を実施し、市町村はこれに応じた避難方法等を住民などに適切に周知する」として、ハザードマップを作成することが自治体の義務であり役割となっている。(※9、※10)

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災害リスクに備えるためのハザードマップの活用法

マップ

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ここでは、ハザードマップを利用した具体的な防災対策について解説し、リスク管理に役立つ活用法について紹介する。

家族や周囲と避難経路を共有する

自宅や勤務先などの避難経路を確認し、家族や周囲と共有しておくことが大切だ。とくにハザードマップで色が濃く表示されたエリアは災害リスクも高いため、緊急時の対応を確認しておくと安心だ。(※3)

防災グッズの備蓄場所をハザードマップで確認する

災害時に備え、防災グッズの備蓄場所をハザードマップで確認しておくことも大切だ。たとえば、岐阜県多治見市ではスマホなどから利用が可能な「避難所・防災倉庫マップ」を利用して、現在地に近い防災倉庫の位置や備蓄資機材などを確認できる。このように、各地域ごとに実施されているサポートを活用するのもひとつの手だ。(※11)

リアルタイム情報との組み合わせによる災害対応を行う

リアルタイム情報との組み合わせによる災害対応を行うことも大切だ。たとえば、土砂災害や洪水に関する情報をリアルタイムに地図化した「大雨警戒レベルマップ」なども併せて利用することで、随時最新情報を確認しながら適切な避難対策が可能となる。(※12)

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日本各地でのハザードマップの活用事例

勉強会

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ここでは、日本の各地域で実際に活用されているハザードマップの事例について紹介する。

大都市東京のハザードマップの特徴

東京では地震が発生した際の防災対策用に「東京被害想定デジタルマップ」や「東京マイ・被害想定」がつくられている。「東京被害想定マップ」では、液状化危険度分布や震度分布などの情報確認が可能となっており、「東京マイ・被害想定」では住んでいる場所や建物の条件、世帯構成、被災状況などを入力することで、自身に合った被害想定を作成できるようになっている。

そのほか、洪水ハザードマップではエリアごとに浸水する深さを確認することも可能だ。(※13、※14)

自治体独自の取り組み

自治体独自の取り組みとして、取手市南町自治会では堤防が決壊した際に浸水継続時間が60時間以上または浸水深が2~5mと想定される地域を対象に、ハザードマップを活用した訓練を行っている。(※15)

地域に特化したマップ作成の例

燕市では、2004年7月に新潟県で起きた「平成16年7月新潟・福島豪雨」をきっかけに「株式会社オリス」とともに津波ハザードマップを地域単位で作成した。

「川があふれたときに、どの方向から津波が来るか矢印で表示したい」「避難所以外の高い建物の位置を表示したい」といった住民の声を取り入れ、地域に特化したハザードマップがつくられた。(※16)

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ハザードマップとは災害時に必須のアイテム

リュックと人

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ハザードマップとは、防災対策や被害軽減に役立てることを目的として、浸水想定区域、避難場所、避難経路、防災関係施設の位置などを示した地図である。災害発生時の人的被害を最小限に抑えるために、日ごろから自宅や勤務先周辺の避難場所や避難ルートをハザードマップで確認し、家族と共有しておくことが大切だ。そしてハザードマップや防災意識を高める活動を、私たち一人ひとりが積極的に行っていきたい。

※掲載している情報は、2025年1月10日時点のものです。

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