サステナブルツーリズムとは、環境にやさしく持続可能な観光のこと。観光地の環境や文化、人々の暮らしに配慮した観光のかたちだ。そんなサステナブルツーリズムの意味や国際認証、注目されている背景などについて紹介しよう。
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サステナブルツーリズム(またはサステイナブルツーリズム)とは、直訳すると「持続可能な観光」。観光地の豊かな自然や資源、その地域の文化を持続的に保てるように配慮した観光のことである。観光客は、観光地本来の姿を楽しむことができ、そこに暮らす人々も自分たちの地域や文化を壊すことなく経済的なメリットを得られる。
サステナブルツーリズムに似ている言葉に「エコツーリズム」がある。エコツーリズムは環境負担に配慮しながら、その地域の自然の保全を目指す観光のこと。サステナブルツーリズムよりも、環境保全や生態系について学ぶ体験を主体にしたものが多い。
グリーンツーリズムとは、農業や漁業にフォーカスして、農家に泊まったり農作業を手伝ったりする旅のスタイル。グリーンツーリズムは、あくまでも農業や漁業の活性化や、それらの人々との交流を目的としたものだ。
レスポンシブルツーリズムとは、観光客が自身を「ツーリズムを構成する重要要素の一つ」と捉え、責任ある観光を通じて、よりよい観光地をつくり上げようという旅のスタイル。サステナブルツーリズムと似た意味だが、レスポンシブルツーリズムには「観光客にも責任ある行動」が求められる。
近年サステナブルツーリズムが注目されるようになったのは、これまでの観光業が自然環境や地域文化に悪影響を及ぼしてきたという背景がある。
第二次世界大戦後の経済発展を経て人々は豊かになり、それまで富裕層だけのものだった観光が大衆化していった。日本では1970年の大阪万博を皮切りに観光の大衆化が一気に進んだといわれている。このような現象を「マスツーリズム」と言う。これによって自然環境の破壊や、地域文化の侵害、治安の悪化などの問題が発生した。
近年サステナブルツーリズムが注目されるようになったのは、これまでの観光業が自然環境や地域文化に悪影響を及ぼしてきたという背景がある。
第二次世界大戦後の経済発展を経て人々は豊かになり、それまで富裕層だけのものだった観光が大衆化していった。日本では1970年の大阪万博を皮切りに観光の大衆化が一気に進んだといわれている。このような現象を「マスツーリズム」と言う。これによって自然環境の破壊や、地域文化の侵害、治安の悪化などの問題が発生した。
観光地のキャパシティを超える観光客が押し寄せる状態である「オーバーツーリズム」も問題になった。例えば、クルーズ船などで一気に大量に人が訪れることで、それに合わせてトイレなどのインフラの整備を行わなければなり、観光地のインフラへの負担、渋滞、景観の損失、ごみの増加などが問題となった。
そして、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の「目標8:継続的、包括的かつ持続可能な経済成長、すべての人に対する完全かつ生産的な雇用と適切な雇用の促進」「目標12:持続可能な消費および生産形態の確保」「目標14:持続可能な開発のための海洋、海岸、海洋資源の保存および持続的な活用」の3つのゴールでは、観光が主要のテーマとなっている。
また2017年は、国連が「開発のための持続可能な観光の国際年」と定めており、世界的にもサステイナブルツーリズムの機運は高まっている。
海外や遠方への旅行が規制されたコロナ禍からの反動で、アフターコロナに世界各地の観光地に旅行客が押し寄せたことも、サステナブルツーリズムに注目が集まる一因となっている。観光地の環境や人々の暮らしを守るため、観光客には「観光税」を導入した地域・国も多い。
2008年に国際自然保護連合「第5回世界自然保護会議」において、サステイナブル・ツーリズムのための基準である「世界規模での持続可能な観光クライテリア(GSTCクライテリア)」が発表された。
現在では、宿泊施設およびツアーオペレーターといった観光産業向け(GSTC-Industry)と観光地向け(GSTC-D)の国際基準が策定されている。
これは、国連環境計画等の資金で設立された協議会である世界持続可能観光協議会(GSTC:Global Sustainable Tourism Council)が認定する認証機関が以下の4つを基本の柱とし認証を行う。
1.持続可能な経営管理
2.地域コミュニティの社会的・経済的利益の最大化と悪影響の最小化
3.文化遺産の魅力の最大化と悪影響の最小化
4.環境メリットの最大化と悪影響の最小化
GSTCの認証を受けた世界の国と地域には、例えば以下のようなところがある。(※1)日本で認証を受けた地域はまだない。
・スウェーデン(イェルブシェー)
・アイスランド(西フィヨルド地方、スナイフェルスネス半島)
・ポルトガル(アゾレス諸島、マディラ島、バイアン、メルガソ)
・メキシコ(ナポロ、イスタパジワタネホ)
・オーストラリア(スレドボ、モートン) など
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日本国内のサステナブルツーリズムの成功例としては、群馬県最北部の位置するみなかみ町の取り組みが知られている。
江戸時代から続く温泉地であるみなかみ町。近年は不景気の煽りを受けて観光客の減少に悩んでいたが、町が利根川流域に位置していることを活かして、自治体をあげてのラフティング事業をスタートさせた。
安全に自然を守りながらラフティングを楽しめるよう、町は「みなかみ町アウトドアスポーツ振興条例」を制定し、環境整備に取組んでいる。
多言語に対応したパンフレットや町内にwi-fiを整備したことなどから、現在は多くのインバウンド客が訪れるようになっている。
出羽三山は、かつて出羽国(でわのくに)と呼ばれていた山形県にそびえたつ羽黒山、月山、湯殿山の総称。僧侶の山での修行や巡礼体験で人気を博している。
スキーリゾートとしてインバウンドの利用が多い、北海道のニセコ町。豊かな観光を保全しながらも、バランスよく農業や観光を両立できるよう、住民からの声も拾い上げながら町づくりを行ってきた。国連世界観光機関(UNWTO)から「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」を受賞している。
ドイツでは、国をあげてサステナブルツーリズムの普及に取り組んでいる。ドイツの鉄道が、鉄道の利用と自転車の利用で特典を付与し、公共交通機関の利用を呼びかけるキャンペーンを実施するなど、楽しみながらも環境への負荷が低い旅のスタイルを支援している。
国際認証について紹介してきたが、残念ながら現在日本には認証機関がなく海外の団体に申請する必要があるため認証を得るまでのハードルが高くなっている。
そこでNPO法人日本エコツーリズムセンターは、現在国際認証を得るためのサポートやサステナブルツーリズムを広めるためのセミナーを全国で開催している。サステナブルツーリズムについて学びを深めたい方はぜひホームページをチェックしてみてほしい。
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