サステナブルツーリズムとは環境にやさしく持続可能な観光のことである。近年ではSDGsの影響もあり国際的に注目が高まっている。この記事ではサステナブルツーリズムの意味や国際基準、日本の成功事例を紹介する。
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サステナブルツーリズム(またはサステイナブルツーリズム)とは、直訳すると「持続可能な観光」。観光地の豊かな自然や資源、その地域の文化を持続的に保てるように配慮した観光のことである。観光客は、観光地本来の姿を楽しむことができ、そこに暮らす人々も自分たちの地域や文化を壊すことなく経済的なメリットを得られる。
近年サステナブルツーリズムが注目されるようになったのは、これまでの観光業が自然環境や地域文化に悪影響を及ぼしてきたという背景がある。
第二次世界大戦後の経済発展を経て人々は豊かになり、それまで富裕層だけのものだった観光が大衆化していった。日本では1970年の大阪万博を皮切りに観光の大衆化が一気に進んだといわれている。このような現象を「マスツーリズム」と言う。これによって自然環境の破壊や、地域文化の侵害、治安の悪化などの問題が発生した。
観光地のキャパシティを超える観光客が押し寄せる状態である「オーバーツーリズム」も問題になった。例えば、クルーズ船などで一気に大量に人が訪れることで、それに合わせてトイレなどのインフラの整備を行わなければなり、観光地のインフラへの負担、渋滞、景観の損失、ごみの増加などが問題となった。
そして、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の「目標8:継続的、包括的かつ持続可能な経済成長、すべての人に対する完全かつ生産的な雇用と適切な雇用の促進」「目標12:持続可能な消費および生産形態の確保」「目標14:持続可能な開発のための海洋、海岸、海洋資源の保存および持続的な活用」の3つのゴールでは、観光が主要のテーマとなっている。
また2017年は、国連が「開発のための持続可能な観光の国際年」と定めており、世界的にもサステイナブルツーリズムの機運は高まっている。
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日本国内のサステナブルツーリズムの成功例としては、群馬県最北部の位置するみなかみ町の取り組みが知られている。
江戸時代から続く温泉地であるみなかみ町。近年は不景気の煽りを受けて観光客の減少に悩んでいたが、町が利根川流域に位置していることを活かして、自治体をあげてのラフティング事業をスタートさせた。
安全に自然を守りながらラフティングを楽しめるよう、町は「みなかみ町アウトドアスポーツ振興条例」を制定し、環境整備に取組んでいる。
多言語に対応したパンフレットや町内にwi-fiを整備したことなどから、現在は多くのインバウンド客が訪れるようになっている。
2008年に国際自然保護連合「第5回世界自然保護会議」において、サステイナブル・ツーリズムのための基準である「世界規模での持続可能な観光クライテリア(GSTCクライテリア)」が発表された。
現在では、宿泊施設およびツアーオペレーターといった観光産業向け(GSTC-Industry)と観光地向け(GSTC-D)の国際基準が策定されている。
これは、国連環境計画等の資金で設立された協議会である世界持続可能観光協議会(GSTC:Global Sustainable Tourism Council)が認定する認証機関が以下の4つを基本の柱とし認証を行う。
1.持続可能な経営管理
2.地域コミュニティの社会的・経済的利益の最大化と悪影響の最小化
3.文化遺産の魅力の最大化と悪影響の最小化
4.環境メリットの最大化と悪影響の最小化
国際認証について紹介してきたが、残念ながら現在日本には認証機関がなく海外の団体に申請する必要があるため認証を得るまでのハードルが高くなっている。
そこでNPO法人日本エコツーリズムセンターは、現在国際認証を得るためのサポートやサステナブルツーリズムを広めるためのセミナーを全国で開催している。サステナブルツーリズムについて学びを深めたい方はぜひホームページをチェックしてみてほしい。
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