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世界の観光地に旅行客が戻るなか、一部の人気観光地ではオーバーツーリズムに直面している。その対策の一環として、観光税を導入する国や地域が増加中だ。本記事では日本を含む、観光税を導入した国や地域を解説する。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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新型コロナウイルス感染防止のため、各国が行っていた入国規制が緩和された2023年。とくに2023年の夏は、世界の多くの観光地に観光客の姿が戻ってきた。
だがパンデミック期間の規制に対する反動か、多くの観光地でオーバーツーリズムの問題が生じている。交通渋滞、トイレ不足、ごみの不法投棄、騒音、無断駐車などが問題視されている状況だ。
日本では「観光公害」とも呼ばれているが、各地が持続可能な観光スタイルを模索するなか、こうしたオーバーツーリズムの弊害を解決する手段として注目されているのが観光税の導入だ。
観光税とは、ホテルなどの宿泊施設や航空会社を通じて徴収される税金のこと。一般的に、宿泊旅行者が対象となるが、ビジネス、留学などで訪れる人も対象となる。ホテル宿泊料や公共交通の運賃に上乗せする形で徴収され、地元の観光インフラの整備や拡充の財源に充てられる。
アフターコロナで観光客が押し寄せた観光地が多く、観光税の導入に踏み切った場所や、すでに導入していた観光税を値上げした場所もある。
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現在、世界の25以上の国や地域で観光税が導入されている。主な国や地域の現状や導入目的を紹介したい。
スペインのカタルーニャ州の首都、バルセロナでは、2012年と早くから、地域観光税と市全体の追加料を導入している。そしてバルセロナ市当局は、2023年4月1日に市税を2.75ユーロ(約430円)に引き上げた。2024年4月は3.25ユーロ(約510円)に引き上げられる予定だ。徴収した税金は、道路、バスのサービス、エスカレーターの改善など、市のインフラ整備に充てられる。
スペイン第3の都市、バレンシアでは、2024年より観光税を導入予定だ。ホテル、ホステル、アパート、キャンプ場などあらゆるタイプの宿泊施設に滞在する旅行者に観光税を課すと公表している。訪問客は宿泊施設に応じて、最大7泊まで、1泊につき50セント~2ユーロ(約80~317円)支払う必要がある。収益は、地元住民向けの低価格住宅を提供するためにも使用される。
海に面し新鮮な魚が手に入るポルトガルのオリャン。ここでは、2023年から観光税の導入を始めた。4月から10月までのハイシーズンは、観光客に1泊2ユーロ(約317円)を、11月から3月までの期間は1ユーロ(約159円)が徴収される。1回の旅行で10ユーロ(約1,589円)を上限とするが、16歳未満の子どもには適用されない。地元当局によると、徴収した税金は、治安の向上に関する取り組みや街の清掃等に使われる。
イタリアの人気観光地、ヴェネツィアは、2023年の夏に多くの観光客が訪れたことでオーバーツーリズムに直面した都市のひとつだ。その結果、2024年から日帰り観光客に観光税を徴収する予定だ。 正確な導入日は未定であるが、2024年の春と夏の観光シーズンに、30日間のトライアルを実施する。観光税による収益は、観光地の施設の維持管理や清掃、地域住民の支援サービス等に使われる。
オーストリアでは、州により異なるが宿泊税が徴収される。ウィーン、ザルツブルクでは、1人あたりホテル代の3.02%の宿泊税が加算される。
ベルギーの観光税は、ホテルの宿泊料金に含まれるほか、宿泊施設によっては追加料金として請求されるケースもある。また、アントワープとブルージュでは部屋ごとに料金が発生する仕組みだ。ホテルの規模等により異なるが、一般的には7.5ユーロ(約1,190円)程度となる。
フランスでは、ホテルの宿泊料金に上乗せされる観光税があり、「セジュール税」と呼ばれる。滞在する都市やホテルによって異なるが、一般的には1泊あたり1人0.2~4ユーロ(約30円~630円)程度だ。この税金は、主に観光インフラの維持に使用される。
EUでは「欧州渡航情報認証制度(ETIAS=エティアス)」を2024年から導入する予定だ。これは、EU外の国からEUの国々を旅行する際、事前に申請することでビザ無しで行き来できる制度。このETIASの申請には、1人7ユーロ(約1,100円)がかかる(18歳未満と70歳以上は不要)。
アメリカのほとんどの観光地では、宿泊施設を借りる旅行者にホテル税を課している。旅館、モーテルにも適用され、例えば、ヒューストンのホテル税は宿泊代金の17%だ。
ブータンの観光税は他の国と比べて高額だ。ハイシーズンの1日あたりの観光税は228ユーロ(約36,000円)。閑散期には価格が下がる。ただしこれには、宿泊費のほか、ガイド、国内の交通費、入場料、食費などが含まれている。
日本では2019年より、日本から出国する旅客から、「国際観光旅客税(出国税)」として出国1回につき1,000円を徴収している。航空会社がチケット代金に上乗せするなどして、国に納付する仕組みだ。また、2026年を目処に沖縄県では独自の観光税を導入し、新たな自主財源で持続可能な観光業をサポートする構えを見せている。
その他、以下の国や地域でも観光税を導入している。
ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、ブルガリア、カリブ海諸島、クロアチア、チェコ、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スイス
地域にある環境や自然を守り、そこにいる人々の生活も尊重しながら、共存できる観光業のかたちが求められている。観光税の導入は、地方自治体と観光産業の新たな収入源となり、観光客と地域住民の両方に利益をもたらすだろう。さらに、観光客数を制限することにつながり、混雑の緩和やオーバーツーリズムの解決にも役立つと期待されている。
観光業界では否定的な意見もあるが、観光税によりマーケティングやインフラへの再投資に必要な財源となるなど、持続可能な観光業実現への一歩になるかもしれない。
※参考
Tourist taxes: All of the countries you will have to pay to enter in 2023 or 2024|Euro news
List of Countries That Require Visitors to Pay Tourist Taxes in 2023|visaguide
国際観光旅客税について|国税庁
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