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世界各国で新型コロナによる各種規制が緩和され、この夏は海外旅行を楽しむ人が増加。フランス、ギリシャ、オランダ、日本など、さっそく多くの観光地でオーバーツーリズムの問題が生まれている。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
オーバーツーリズムとは、観光地に観光客が数多く訪れることにより、地域社会や環境、景観などにダメージを与えることだ。観光公害と呼ばれることもある。
とくにここ数年間は、新型コロナのパンデミックによる入国規制のため、海外旅行を行うのが難しく、多くの人々が国内外の旅行を控えてきた。しかし2023年になって、各国が規制を緩和。日本より一足早く夏休みが始まった欧米の人々が、世界各地の観光地を訪れ、オーバーツーリズムの問題に直面している国や地域が続出している。
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豊かな文化遺産や絶景を有し、世界トップクラスの人気観光地であるフランス。2023年夏にはすでに多くの旅行客が訪れ、とくに大都市や人気の観光地でオーバーツーリズムに対する懸念が高まっている。
そのため、フランスのオリビア・グレゴワール観光大臣は、オーバーツーリズムの問題解決に向けた計画を発表した。この戦略には、人気の観光地での観光客の規制などが含まれる。例えば、フランス北部のブレハ島では、ピーク時に入れる観光客数を1日4,700人まで制限。マルセイユ近郊のカランク国立公園では予約システムを導入して、1日400人までの入場にするという。
英国にほど近く、大麻と売春宿が合法化されているアムステルダムは、イギリス人のバチェラーパーティー(結婚を控えた男性が、独身最後の夜を友人と楽しむパーティー)に人気の観光地だ。
これらの旅行には、夜通しの飲酒や薬物乱用などが含まれ、場合によっては反社会的行為が含まれることもあり、地域住民の日常生活に悪影響を与えている。
そこで、アムステルダム市当局は2023年3月、迷惑観光客を歓迎しない「Stay Away(こっちに来ないでの意味)」キャンペーンを展開している。現在は18歳から35歳までの英国人男性観光客のみを対象としているが、2023年後半にはオランダや他のEU加盟国からのマナー違反をする旅行者も対象になる可能性があるという。
ギリシャの首都アテネにある世界遺産アクロポリス。2023年5月の訪問者数は14,000人で、2022年同月比で70%も増加した。アクロポリスを訪れる観光客数がピークを迎えるのは8月だが、2023年4月の時点ですでにそのピークに近い水準の人々が来ていたという。
ギリシャ文化省では、過密を解消するため、時間制で観光客の入場を制限することを段階的に導入するというが、財政難に直面しているギリシャでは、観光業によって経済回復を期待する面があるようだ。
アメリカのカリフォルニア州とネバダ州の間にある、レイクタホ(タホ湖)。2020年の訪問者数は約590万人だったが、2022年は1700万人に達した。ヨセミテ国立公園はレイクタホの約3倍の広さだが、レイクタホを訪れる訪問者数はヨセミテ国立公園の2倍にもなるという。そのため湖の周辺に暮らす住民や、環境への影響が懸念されている。
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日本は2023年4月29日より入国制限を解除して、2020年から行われていた水際対策を撤廃した。これに円安も追い風となり、多くの海外観光客が日本を訪れている。訪日外国人にとりわけ人気の高い観光地・京都では、おしよせる観光客によって地元住民に影響が出ている。
とくに顕著なのは、京都市内の移動手段として便利な市バスだ。700円(子ども350円)で市内バスが乗り放題となる「バス一日乗車券」を使う観光客が多く、バスが混雑して、それによって地元住民がバスに乗れない事態が多いというのだ。
1995年に導入されたこの乗車券は、京都市内を低予算で移動する手段として始まったものだが、あまりの人気に長蛇の列がバス停にでき、地元住民の通勤に支障をきたすようになった。京都市は、2023年9月末には1日券の販売を終了し、2024年3月末でパスの利用も停止することを発表している。
海外や国内への旅行を控えざるを得なかったここ数年間。その反動からか、2023年は数多くの観光客が訪れる観光地が続出しているようだ。
世界では、「レスポンシブル・ツーリズム(Responsible tourism)」へのニーズが高まっている。直訳すると「責任ある観光」となり、観光客が責任ある行動や意識を持つことで、理想的な観光地を目指すアプローチだ。
地域経済の活性化や雇用の増大など、持続可能な観光計画がもたらす恩恵は計り知れない。限られた観光資源と旅行者のニーズのバランスを維持しながら、よりよい関係性を築くことが求められる。改めて世界各地が、観光業のあり方を考えるべきときが来ている。
※参考
France unveils commitment to fight overtourism|travel tomorrow
Amsterdam's new tourism campaign is ready to ruffle some feathers|lonely planet
Overtourism at the Acropolis: How is Greece handling booming visitors numbers?|EuroNews
Lake Tahoe has a staggering tourism problem, report shows|SFGATE
Kyoto will stop selling the one-day bus pass to tackle overtourism|Timeout
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