深刻化する都市のスポンジ化とは? 原因や問題点を解説

光が差し込むビル群

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ここ数年で急速に深刻化している都市のスポンジ化。都市部において空き家や空き地の増加することで、人口密度が減少する現象だ。この記事では都市のスポンジ化が起こる原因や、深刻化することで起こる問題や影響について解説。また、国や自治体が行う対策事例についても触れていく。

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2024.12.13

都市のスポンジ化とは

閑散としたまち

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都市のスポンジ化とは、人口減少などの要因により、都市内部で空き家や空き地が小規模な単位で散発的に発生し、都市の密度が低下する現象のこと。この現象は地方都市で顕著みられるが、ここ数年で全国的に拡大している。

住宅の相続後に利用されないケースや、商業施設の閉店後に空き店舗が放置されるケースが典型的な事例。都市の密度低下が進むと、行政サービスやインフラ維持の効率が悪化し、地域コミュニティの活力が失われる恐れがある。さらに放置された空き家や空き地は、防災や治安上の問題も引き起こす。これらの問題は、都市計画や土地利用の課題として対応が求められている。(※1)

都市のスポンジ化が起こる原因

橋と渋滞中の道路

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都市のスポンジ化が進行する背景には、以下のものがある。(※1)

人口減少と少子高齢化

日本では少子化が進み、総人口が減少している。すると新たな住宅需要が減少し、既存の建物や土地が活用されなくなる。

高齢者が住む住宅が空き家化しやすく、相続税や固定資産税などの理由で相続されないことで発生する。また商店街などでは、高齢化した店舗経営者が後継者不足により閉店し空き店舗が増加する。

大都市圏への人口集中

若年層が都市部へ移住することで地方の人口が減少し、結果として地方都市や農村地域で空き家や空き地が増える。

土地利用の変化

節税目的で建てられたアパートが空室率の増加により空き家化する例など、需要の変化によって旧来の用途を失った土地が空き地化するケースがある。

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都市のスポンジ化はどこで起きているのか

あかりのついた家

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都市のスポンジ化は日本全国で発生しているが、主に以下のような地域で顕著である。(※1)

地方圏

都道府県ごとの空き家の状況については、地域によってばらつきがあるが、地方圏において空き家率が高くなっている。四国4県や山口県、島根県などが高い空き家率が高い。なお、東京・大阪・名古屋の三大都市圏は空き家率は低いものの、絶対数が多い傾向だ。

地方都市の中心部の商店街

地方の中小都市では商業施設の郊外化やオンラインショッピングの普及、人口減少による利用者の減少などにより、商店の空き店舗化が進行。中心市街地のシャッター街化が進んでいる。

首都圏郊外部の団地や住宅地

首都圏では、エレベーターのない中層住宅や急勾配道路など、バリアフリー未対応住宅のニーズの低下、団地内商店やバス便の撤退・減少による、買い物難民化などの問題から、郊外部の団地や住宅で空き家・空き地が増加している。

高度経済成長期に開発された団地では、住民の多くが同世代であるため一斉に高齢化が進む。その結果、空き家や空き地が集中して発生する問題がある。

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日本における都市のスポンジ化の状況

町屋の景色

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都市のスポンジ化は、さまざまな状況下で起こり得る現象だ。ここでは我が国における、都市のスポンジ化の現状について解説する。(※1)

空き家数の推移と増加状況

日本の空き家数は平成25年の調査で約820万戸に達し、住宅総数の約13.5%を占めた。この数値は5年前に比べ8.3%増加しており、長期的な上昇傾向にある。このなかでも大半を占める売却用の空き家は買い手の見つかる可能性もあるが、「売却用等を除いた狭義の空き家」とされる空き家の増加が問題となっている。

空き地面積の増加状況

空き地の増加も著しい。直近5年間で空き地面積は28%増加しており、このまま新たな土地利用が進まない場合、未活用の土地が拡大することとなり損失も大きくなる。

空き家・空き地の発生原因と事例

空き家や空き地が発生する主な原因は、相続後の放置や商店主の引退後の利用計画がないことである。また、希望する価格での買い手がつかない事例もみられる。

空き家の将来予測

民間シンクタンクの推計によると、既存住宅の除却や住宅用途以外への有効活用が進まなかった場合、2033年の総住宅数は約7,100万戸へと増大し、空き家数は約2,150万戸、空き家率は30.2%に上昇するとされる。

空き店舗・シャッター街の現状

地方都市の商店街では空き店舗が増加し、シャッター街が拡大している。2003年以降にこの傾向が顕著にみられ、商業施設の郊外化やオンラインショッピングの影響を受けて加速している。

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都市のスポンジ化がもたらす影響と問題

山村

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都市のスポンジ化は、地域経済や住民生活に深刻な影響を及ぼしている。ここでは具体的な問題について見ていこう。(※1)

人口密度の低下による影響

都市のスポンジ化は、インフラや生活サービスの維持を困難にする。人口密度が下がると公共交通や医療、福祉施設が縮小または撤退し、高齢者や車を使えない住民が生活の支障をきたす事態に陥る。また空き地や空き家の増加はコミュニティの結束を弱め、地域社会そのものが衰退する恐れがある。

まちの魅力の低下による影響

まちの魅力が低下することで、地価の下落や人口流出が進む。実際に、鳥取市では中心市街地の空き地や空き店舗の増加により、歩行者数の減少や地価の下落が続いている。このような環境は転入者を減少させ、地域の活気を失わせるだけでなく、治安や防災機能の低下にもつながる。

地域経済の停滞

人口減少とスポンジ化は、地域経済全体を停滞させる。需要が生まれないことで起こる、商業やサービス業の縮小は雇用機会の減少を招き、さらに人口流出を加速させる可能性がある。

税収減による行政サービスの低下

地域経済が停滞すると、税収が減少することで地域のインフラやサービスの維持が難しくなり、住民生活に悪影響を及ぼす。人口密度と行政コストには負の相関関係があり、人口が少ない地域ではインフラ維持やサービス提供が非効率化する。その結果として住民負担が増大したり、サービス水準の切り下げを余儀なくされたりする事態が想定される。

景観・治安の悪化

都市のスポンジ化は、景観や治安にも悪影響を与える。空き地や空き家の増加は不法投棄や放火などのリスクを高め、周辺地域の防災・防犯機能を低下させる。さらには空き家が犯罪に利用される事例も報告されており、地域住民の不安を増幅させている。

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都市のスポンジ化への対策や取り組み例

畳の部屋

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都市のスポンジ化は、国、自治体、民間にとって多くのデメリットがあるため、さまざまな対策が進められている。ここでは、その具体例をいくつか紹介する。

国の対策

区域区分制度

区域区分制度は、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために都市計画区域を区分する仕組みである。都市的な公共投資や開発事業、開発行為規制、農業投資や農地転用規制、土地税制など、さまざまな施策を総合的に行う。また開発許可制度を通じて計画的な土地利用がコントロールされる点が特徴であり、都市計画の基盤となる制度である。(※1)

立地適正化計画制度

立地適正化計画制度は、市町村が都市全体の視点から作成するマスタープランに基づき、居住機能や福祉、医療、商業などの都市機能の配置や公共交通の充実を目指す取り組みである。この制度は多極ネットワーク型のコンパクトシティを実現するための指針ともなり、民間の都市機能投資や居住誘導を効果的に進める役割を持っている。結果的に、空き家が減ることになる。(※1)

低未利用土地利用促進協定制度

低未利用土地利用促進協定制度とは、人口減少などの影響で増加しているまちなかの低未利用土地や建物の有効活用を進めるための仕組みである。この制度では、該当する土地や建物を適切に利用できるよう施設の整備や管理に関する協定を結ぶ。市町村や都市再生推進法人といった地域のまちづくりを担う組織が主体となって、土地勘や経験を活かして活用を進める。(※1)

自治体の対策例

福井市の低未利用土地権利設定等促進計画

福井市では商店街地区の賑わいを創出するために、地区内の民営駐車場と市が所有する駐輪場との利用権を交換し、民営駐車場の低未利用土地を広場として活用している。この広場は福井大学と福井市による社会実験を経て、新栄商店街の商店主が主体となって運営されている。地域の活性化と市民の交流を図るとともに、効率的な土地の利用も実現している。(※2)

兵庫県の都市計画区域マスタープラン

兵庫県では、都市計画区域マスタープランを策定しさまざまな取り組みを行なっている。例えば大規模集客施設が閉店する際に届出を義務付ける条例を改正し、2016年から施行している。この制度では店舗の用途を廃止する際に、廃止後の利用計画や維持管理計画について、閉店の3か月前までに知事に届け出ることを求めている。また届出を怠った場合には勧告が行われ、その勧告に従わない場合には設置者の氏名公表も可能である。自治体レベルでも制度を設けることで、都市機能維持を図る事例となっている。(※1※3)

鶴岡市とNPOつるおかランド・バンクの連携事業

山形県鶴岡市では、NPOつるおかランド・バンクが複数の地権者と協議し、区画再編を進める事業を行った。市の計画に基づき適正な土地利用を実現するため、コーディネーターが地権者の意向を踏まえて調整を行った結果、空き地問題の解消や地域の課題解決に結びついている。(※4)

民間団体の取り組み

HELLO GARDEN(千葉市稲毛区)

株式会社マイキーが運営するHELLO GARDENは、未利用地を暫定的に活用した取り組みである。敷地内にはオープンスペースや菜園スペースが整備され、地域住民が参加する野菜栽培やイベントを通じて、コミュニティの形成を促進している。また収穫物はオープンスペース内の喫茶スペースで提供されるなど、地域住民が主体的に関わる場として運営されている。地域住民同士が自然と交流できるコミュニティの場として機能しており、若者が地域との関わりを見つける機会にもつながっている。(※5)

椿森コムナ(千葉市中央区)

椿森コムナは、千葉公園近くの空き地を活用してツリーハウスとカフェを設置したコミュニティスペースである。株式会社拓匠開発によって運営されており、話題性のあるイベントがSNSで注目を集め、地域住民や観光客が多世代で訪れる空間となっている。さらに地域の祭りやイベントと連携することで、地域全体の活性化が図られている。(※5)

花小路(青森県八戸市)

青森県八戸市では、長年公共的な通路として利用されていた民有地「花小路」を中心に、まちづくり協議会が計画を策定した。市と協議会が連携して、花小路を公共用通路として活用し、周辺地域の賑わい創出と快適な空間づくりに取り組んでいる。地域住民と行政が協力して土地利用を最適化した成功例だ。(※6)

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官民一体で進める都市のスポンジ化対策

厳島神社

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都市のスポンジ化は、空き地や未利用地が増え、地域経済や住環境に悪影響を及ぼす深刻な問題である。そのため国や自治体、民間団体が協力して、計画的な土地利用の促進や空き地の有効活用に取り組む必要がある。また紹介した事例のようにさまざまな団体が協力して対策をすでに練っており、持続可能で魅力的な都市づくりを目指している。

※掲載している情報は、2024年12月13日時点のものです。

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