コージェネレーションシステム(コジェネ)とは? 仕組みやメリット、導入事例を紹介

上空から見た工場

Photo by marcin jozwiak on Unsplash

コージェネレーションシステム(コジェネ)とは、発電時に生じる排熱を利用して温水などに変換して有効活用するエネルギーシステムだ。エネルギーを余すことなく活用できるため、従来よりも発電・送電ロスを減らせる。この記事では、コジェネについてわかりやすく解説する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2024.12.06

コージェネレーションシステム(コジェネ)とは

ガス工場

Photo by julia koblitz

コージェネレーションシステム(コジェネ)とは、発電装置で電気をつくる際に排出される廃熱を回収し、暖房や給湯などに利用する発電供給システムだ。2つのエネルギーを同時に生産して供給する仕組みのため、従来よりも発電・送電ロスを減らせる。

なお、コージェネレーションシステムの家庭用燃料電池は「エネファーム」と呼ばれ、水素を使って発電する仕組みだ。(※1)

エネファームとは? 仕組みや導入するメリットについて紹介

関連記事

コージェネレーションシステムの技術と仕組み

乾電池

Photo by roberto sorin

ここでは、コージェネレーションシステムの技術と仕組みについて解説する。

基本的な発電の仕組み

コージェネレーションシステムの技術と仕組みは以下のとおりだ。

1. 発電燃料に石油や天然ガス、LPガス、バイオマスなどを利用し、発電装置にガスタービンやガスエンジン、燃料電池などを燃焼して発電する

2. 発電時に発生する廃熱を回収し、給湯や暖房として利用する(※1)

排熱の有効活用

従来は発電所から生じる熱エネルギーを遠隔の場所に運ぶことが困難であったため、約6割が利用されずに廃熱となっていた。しかし、需要地の近くに発電を行うためのコージェネレーションシステムを置くことによって、熱を廃熱せずに有効活用が可能となった。(※1)

分散型発電システムの特性

分散型発電システムの特性として、コージェネレーションシステムの発電時に発生する廃熱を活用して蒸気や給湯、空調などのエネルギーとして利用することが可能だ。また需要の住宅エリアに隣接して発電が可能なため、発電・送電ロスを減らして省エネに貢献できる。

仮に停電した場合も停電時に起動できる設計さえしてあれば、ガス供給が継続されている限り安定した電力供給も可能だ。(※2)

発電と熱利用のプロセス

コージェネレーションシステムの発電と熱利用のプロセスは、燃料を燃やして発電した際に発生する排熱を回収し、それを利用して新たに蒸気や温水として有効活用する。これによりエネルギーを余すことなく活用できるため、従来よりも高いエネルギー効率を得られる。(※1)

コージェネレーションと従来型発電システムの違い

従来型発電システムと異なるのは、燃料の供給をし続ければ停電しても発電が可能な点だ。産業用のコージェネレーションシステムには、停電対応仕様機や防災兼用機といった、非常時でも稼働できる機能が搭載されている。

したがって、コージェネレーションシステムは従来型発電と比べて災害時に強い点が大きなメリットといえる。(※3)

家庭用と産業用のシステムの違い

家庭用と産業用のシステムの主な違いは、初期費用と規模の大きさである。基本の仕組みはどちらもほぼ同じであるが、家庭用の場合は空気中の酸素とLPガスや都市ガスから取り出した水素を化学反応させて、CO2排出の少ないクリーンな電気を生成するのが特徴だ。

一方、産業用の場合は火力発電所で得られた熱を蒸気や温水として工業に用いたり、植物園や温室栽培、温水プールなどに利用したりと規模が大きいのが特徴だ。家庭用と産業用のどちらも発電機にコストはかかるが、産業用の場合は工場ごとに設計しなければならないケースが多いため、規模が大きい分だけ初期費用も高くなる。(※4)

再生可能エネルギーの種類を一覧で紹介 それぞれの発電方法やメリット

関連記事

コージェネレーションシステムの種類

建物に設置された機械

Photo by nopparuj lamaikul

ここでは、コージェネレーションシステムの種類について紹介する。

内燃機関式

内燃機関式は、機関内で燃料を燃やす際に発生する燃焼ガスによってタービンを回す。この内燃機関式を利用したコージェネレーションには、ガスタービン・ガスエンジン・ディーゼルエンジン・コンバインドサイクルの4つが挙げられる。(※5)

燃料電池式

燃料電池式は、ガスから水素を取り出して空気中の酸素と反応させることで熱と電気を発生させる。燃料電池は発電効率が高いため、CO2削減対策や省エネの面でも優れているのが特徴だ。家庭用燃料電池のエネファームもこれに該当する。(※5)

蒸気タービン式

蒸気タービン式は、ボイラーで発生した蒸気の熱エネルギーで発電すると同時に、蒸気タービンで膨張した蒸気を給水加熱や材料・製品に熱を加える作業(プロセス熱作業)用として再利用するのが特徴だ。(※5)

脱炭素に向けた新しい発電方法を紹介 注目される理由やメリット・課題も

関連記事

コージェネレーションシステムのメリット

電球

Photo by anthony indraus

ここでは、コージェネレーションシステムのメリットについて紹介する。

CO2排出量の大幅削減

コージェネレーションシステムは、従来型発電システムでは捨てられていた熱を有効活用し、電力と熱の両方をエネルギーとして利用することで高いエネルギー効率を実現した。これによりエネルギーを余すことなく活用できるとして、従来よりも発電・送電ロスを減らし、CO₂排出量の削減にも貢献すると期待されている。(※1)

高いエネルギー効率

コージェネレーションシステムの発電と熱利用のプロセスは、燃料を燃やして発電した際に発生する排熱を回収し、それを利用して新たに蒸気や温水として有効活用する。これによりエネルギーを余すことなく活用できるため、従来よりも高いエネルギー効率を得られるというわけだ。(※1)

非常時の電源供給

コージェネレーションシステムは、万が一被災などによって停電した際にも停電時に起動できる設計さえしてあれば、ガス供給が継続されている限り安定した電力供給が可能だ。

また産業用のコージェネレーションシステムは、停電対応仕様機や防災兼用機といった、非常時でも稼働できる機能が搭載されている。そのため、従来型発電と比べて非常時の電源供給にも強いのが特徴だ。(※2)(※3)

ガス料金の節約

ガスのコージェネレーションシステムは、発電と排熱の両方をエネルギーとして有効利用するため、契約電力を低減して電力料金を節約できる。(※6)

世界の発電方法の現状は? 種類別の割合や国ごとの特徴を解説

関連記事

コージェネレーションシステムの課題

グラフ

Photo by isaac smith

ここでは、コージェネレーションシステムの課題について解説する。

高額な初期投資が必要

家庭用・産業用ともに設置時には高額な初期投資がかかる。とくに産業用の場合は工場ごとに設計しなければならないケースが多く、使用する規模も大きいため、初期費用も高くなる。(※7)

維持管理費用がかかる

コージェネレーションシステムは維持管理費用がかかる。これには、基本料金や検針料金などが含まれている場合が多い。

たとえば災害時や故障で止まったときに発電ができない・温水がつくれないといった状況に対して備えておくために、コージェネレーションシステムをバックアップしておく必要があるが、このバックアップにもコストがかかるというわけだ。(※8)

定期的なメンテナンスが必要

コージェネレーションシステムはメンテナンスコストがかかる。しかし近年はコストの低減に向けて、従来の電気着火とは異なるレーザー着火方式を開発中だ。これが導入されれば、同部品の長寿命化によって定期的に必要だったメンテコストが大幅に削減できるといわれており、今後に期待されている。(※9)

複雑な法的手続きが必要

コージェネレーションシステムを導入する際は、複雑な法的手続きが必要となる。たとえば保安規程の届出や電気技術者選任の届出、火を利用する設備の届出などだ。そのほかシステムの規模に応じて必要な届出は増えるため、事前に確認しておくと安心だ。(※10)

燃料の価格変動の影響を受けるリスクがある

コージェネレーションシステムは、燃料の価格変動によって影響を受けるリスクがある。リーマンショック後に燃料価格が高騰した際は、導入が伸び悩んだ。(※9)

環境への配慮から生まれた"おもしろい発電方法" 意外なものから未来につながる最新技術まで紹介

関連記事

コージェネレーションシステムの導入事例

リビング

Photo by douglas sheppard

ここでは、コージェネレーションシステムの導入事例について紹介する。

産業施設での導入事例

東京ガーデンテラス紀尾井町では、ガスコージェネレーションシステムを導入している。これにより、耐震性にすぐれた中圧ガス導管の利用で長時間にわたる非常用発電機のバックアップも可能にした。また省エネを実現するとともに、大幅な節電につながったとされている。(※11)

公共施設での導入事例

立命館大学では、新キャンパスにコージェネレーションシステムを導入。順天堂練馬病院でも、練馬区と連携して地域のコージェネレーションシステムの整備による、非常時のエネルギーセキュリティの確保を行った。このように、公共施設では非常時や防災に備えてバックアップ対策として導入されているケースが多い。(※12)(※13)

家庭用コージェネレーションの普及

ホーム企画センターでは、家庭用のコージェネレーションシステムを標準装備した「省エネ住宅」のエコタウンを形成した。アイシン精機株式会社と北海道ガス株式会社が寒冷地向けに共同開発した「家庭用コージェネ エコ ジョーズ+コレモ」は、寒冷地特有の換気における問題解決と快適性の向上、省エネなどを目的として形成されており、地域密着型の事例となった。(※14)

コージェネレーションシステムの普及と今後の展望

横からみた工場

Photo by jason mavrommatis

今後は世界的な環境規制の強化によって、よりエネルギー効率の高いコージェネレーションシステムの導入が進むだろう。これにより、企業や自治体も脱炭素化に向けてコージェネレーションシステムの導入を積極的に選択すると考えられる。

またバッテリーやIoT技術との連携によって効率的なエネルギー管理も可能となるため、将来的には再生可能エネルギーとの併用により、環境負荷の少ないエネルギー供給を目指す動きが広がるだろう。

一方でコージェネレーションシステムの今後の課題として、 コスト低減や技術の進化による導入障壁の軽減、支援するための政策強化には改善の余地があるといえそうだ。

コージェネレーションシステム(コジェネ)とは

電球とスマホ

Photo by jakub zerdzicki

コージェネレーションシステムとは、発電時に生じる排熱を利用して温水などに有効活用するエネルギーシステムだ。エネルギーを余すことなく活用できるため、従来よりも発電・送電ロスを減らし、CO2排出の削減にも貢献すると考えられている。一般家庭の導入にはコストや複雑な法的手続きなどで課題も残るが、これからの進歩発展に期待したい。

※掲載している情報は、2024年12月6日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends