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エシカル消費や健康志向を背景に、世界的に需要が高まるプラントベースフード。この食のトレンドに乗って、タイ政府は「プラントベースフードのハブ」を目指すロードマップを策定した。将来の世界的な供給国を目指すタイの素質を探る。
Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
2024年にプラントベースフード市場は約250億ドル(約3兆7000億円)規模に達し、2019年から2024年にかけての年成長率は10.5%になると、国際的な市場調査会社のユーロモニターは見通しを立てる。
あまり知られていないが、タイも世界市場とほぼ同じ、年平均成長率10%の推移を見せるとみられる。タイ国営シンクタンクが2020年に発行したレポートによると、2019年の280億バーツ(約1251億円)から、2024年には450億バーツ(約2009億円)に達するという。
この動きに対して、2024年9月に商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)は、財政政策研究所と共同でタイのプラントベースフード産業の将来性を研究するプロジェクトを開始。生産、マーケティング、研究開発、投資、データ管理、規制改善の促進に関するガイドラインを提示した。
タイは、すでに作物の栽培から生産、加工を含む食品産業のバリューチェーンを構築している。その食品生産と貿易のアドバンテージに、プラントベースフードという付加価値を加えることで、持続可能な農業支援の可能性を生み出そうとしている。
タイでプラントベースフード市場が急成長しているのは、政府が支援する技術・生産革新のほかに、消費者の健康志向や動物福祉・倫理への関心の高まりがあると、タイ国営シンクタンクは分析する。
所得が向上しライフスタイルが変化するにつれて生活習慣病になる人が急増。タイ市民の間で健康と長寿意識が高まりを見せている。そんな時流に合わせて、タイならではの慣習「ギンジェー」の価値が見直されつつある。
ギンジェー(菜食週間)とは、旧暦9月1日からの9日間、中華系タイ人を中心に行われる宗教行事。期間中は、肉類や卵、乳製品などの動物性食品、ネギやパクチーなどの香りの強い野菜、味付けの濃い料理、酒類の摂取を控えることで身を清め、健康や運気の向上を願う。
「ギン」はタイ語で「食べる」、「齋(ジェー)」という漢字には「心身を清めて飲食などの行為をつつしんで神仏をまつる」という意味がある。菜食を提供する屋台やレストランの店先に「齋」の文字が描かれた黄色い旗がはためく風景は、タイの秋の風物詩だ。
ジェトロのレポートによると、2024年のギンジェーの経済効果は約450億バーツ(約2009億円)。タイ商工会議所大学(UTCC)が調査を始めた2008年以来、過去最高の個人消費額を予測している。
肉を使わない、健康的でおいしい料理。地域に根付いた菜食文化は、プラントベースフード市場でのタイの躍進の原点といえそうだ。
※参考
TPSO unveils roadmap for Thailand’s plant-based food journey|Nation Thailand
Commerce Ministry promotes Thailand as source of plant-based foods|Nation Thailand
Plant-based market set to grow|Bangkok Post
2024年のタイの菜食週間、10月3日から11日まで|JETRO
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