世界銀行とは? 役割や主な活動、日本との関わりについて解説

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貧困削減や開発支援を目的とした国際機関である、「世界銀行」。本記事では、世界銀行の役割や目標についてわかりやすく説明しながら、仕組みや主な活動内容、実績などを紹介していく。また、日本との関わりについても言及する。

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2024.09.26
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世界銀行とは

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世界銀行とは、約190ヵ国の加盟国で構成されている組織で、普通の銀行とは異なり、貧困削減や開発支援を目的とした国際機関である。

世界銀行は途上国に低利貸付や無利子融資、贈与を提供。これらの資金を活用して、教育、保健、行政、インフラ、金融・民間セクター開発、農業、環境・天然資源管理など幅広い分野への投資支援を行っている(※1)。

世界銀行の始まりは、1944年7月に遡る。米国ニューハンプシャー州ブレトンウッズで、戦後の世界経済の安定と復興について協議が行われ、国際復興開発銀行(IBRD)と国際通貨基金(IMF)を創設する協定が起草された。この協定は1945年に発効し、両機関が設立。現在では5つの機関が連携し、世界銀行グループとして業務を行っている(※2)。

世界銀行グループの構成と役割

世界銀行グループは、以下5つの機関から構成される。

・国際復興開発銀行(IBRD)
・国際開発協会(IDA)
・国際金融公社(IFC)
・国際投資紛争解決センター(ICSID)
・多数国間投資保証機関(MIGA)

「国際復興開発銀行(IBRD)」では、途上国一般に対する準商業的な融資を行っている。最貧国に対して超長期・低利の融資および贈与等を行っているのは、「国際開発協会(IDA)」だ。単純に「世界銀行」といった場合は、5機関のうちこの2つの機関を指す(※3)。

さらに、開発途上国で活動する民間企業に対する融資・出資を行うのは、「国際金融公社(IFC)」。政府と外国投資家との間の投資紛争を解決するための中立的な国際フォーラムを提供することによって国際投資の流れを強化する、「国際投資紛争解決センター(ICSID)」。非商業的危険に対する保険・保証を通じて、民間直接投資の促進を図る、「多数国間投資保証機関(MIGA)」と、それぞれの機関で目的や役割が異なる(※4)。

2030年の達成を目指す2つの大きな目標

世界銀行では、2030年までに達成を掲げている2つの大きな目標がある。

極度の貧困を撲滅

2030年までに達成を掲げている目標の1つが、「極度の貧困を撲滅」である。具体的には、1日1.90ドル未満で暮らす人々の割合を、2030年までに3%以下に減らすことを目指している。

世界の貧困率は、2015年のデータで10%。1990年の36%と比較すると、大幅に減少しているが、目標とする3%以下にはまだ届いていない(※5)。

また、2022年に世界銀行が発表した報告書では、「今後10年間に歴史を覆すような経済成長率を達成できなければ、2030年までに極度の貧困をなくすという目標を達成することは難しい」と指摘している(※6)。

繁栄の共有を促進

もう1つの目標が、「繁栄の共有を促進」。各国の所得の下位40%の人々の所得を引き上げることを目指している。

目標達成に向けて、世界銀行は途上国に低利貸付や無利子融資、贈与を提供。これらの資金を活用して、教育、保健、行政、インフラ、金融・民間セクター開発、農業、環境・天然資源管理など幅広い分野への投資支援を行っているのだ。

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世界銀行の主な活動

ここからは、世界銀行の主な活動を紹介しよう。

SDGsとの連携

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世界銀行は、2015年に国連総会で採択されたSDGsの達成に向けても、国連、各国政府、民間セクター、シビルソサエティとも連携を深めて、さまざまな取り組みを推進している。

気候変動対策のサポート

世界銀行は、国際機関として途上国に気候変動対策資金を提供している。

2021年6月に世界銀行は、新たな気候変動行動計画を発表。「この途上国に対しかつてないレベルの対策資金の提供、温室効果ガス排出の削減、適応活動の強化、パリ協定の目標に沿った資金提供を図っていく」として支援を増大することを公示した(※7)。

持続可能な開発の促進

世界銀行グループの機関のひとつである国際復興開発銀行は、中所得かつ信用貸しのできる貧しい国が貧困を削減できるようにするために、融資、保証、危機管理商品や分析、諮問サービスを通して、持続可能な開発を促進している(※8)。

インフラ整備や教育・保健分野への投資・融資

幅広い分野への融資や投資を行なっている世界銀行だが、インフラ整備や教育・保健分野への投資・融資も世界銀行の活動のひとつ。

融資を通して、学校や保健所の建設、給水や電力供給、病気との闘いや環境の保全などで、開発途上国政府の努力を支援している(※9)。

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世界銀行の仕組みと資金調達

世界銀行の活動内容を理解したところで、仕組みや資金調達についても解説していく。

資金調達方法

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世界銀行は主に長期的な支援をしており、その財源は加盟国の拠出金と世界銀行債の発行により賄われている。

1947年に初めて資本市場で債券を発行し世界銀行は、70年以上にわたり国際資本市場で債券を発行。1959年以来トリプルAの格付けを維持し続け、その経験を活かし、新しい金融商品の開発、市場の開拓、加盟国への債務管理支援等も行っている(※10)。

加盟国からの出資

国際復興開発銀行(IBRD)は、加盟国からの出資を元に、国際資本市場での債券発行を通じて得た資金を途上国政府に融資し、 開発プロジェクトやプログラムの実施を支援。

また国際開発協会(IDA)では、3年に一度の増資交渉を通じて各国が追加拠出をする。従来、国際開発協会では市場からの資金調達を行っていなかったが、2018年、ハイブリッド型金融モデルを採用。各国からの拠出金と債券市場で調達した資金の双方を組み合わせることで、資金効率を高め、低所得国の開発を進める上で必要なIDA資金を拡大することができるようになった(※11)。

低金利や長期融資の仕組み

世界の74の最貧国に最大規模の資金援助を行っており、これらの国々の基本的社会サービスを支援するドナー基金として単独では最大規模を誇るのが、国際開発協会(IDA)。

173カ国が出資する国際開発協会は、貧困削減に向け、経済成長促進、格差是正、人々の生活水準向上のためのプログラムに融資と贈与を提供。IDA融資は無利子またはごく低金利で行われ、返済期間は30~40年(5~10年間の支払猶予期間を含む)と長期にわたる(※12)。

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世界銀行の実績と影響

ここからは、世界銀行の実績と影響について見ていこう。

これまでの主要なプロジェクトとその成果

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世界銀行では、これまで幅広い分野において支援を行なってきた。

そのひとつが、コロンビアで行われた、高等教育機関の教育の質の向上と、社会経済的に恵まれない環境にある若者の質の高い教育プログラムへの進学を増加させることを目的とした「質の高い高等教育へ進学促進プロジェクト」。高等教育や大学院教育に通うための学生ローンや奨学金の提供や、高等教育機関に研究能力強化のための助成金及びローンを提供し、認定教育機関の教育の質の向上を図るための資金を提供した。

これによって、恵まれない環境にある1,222,876人の学生が高等教育に進学。さらに、322,000人の生徒に、学習効果を高めるための直接支援を提供するなど成果があった(※13)。

開発途上国へのインパクト

世界銀行は、先述のプロジェクト以外にも、ウズベキスタンの「中規模都市総合都市開発プロジェクト」、エクアドルの「社会保障制度改善プロジェクト」、北マケドニアの「コミュニティ道路網連結性プロジェクト」など、数えきれないほどの融資を行なってきた(※14)。

教育や保健、行政、社会的保護、水・衛生・廃棄物処理など、開発途上国へ多大なインパクトを与えている。

世界経済への影響

世界銀行では、加盟国の拠出金と世界銀行債の発行を財源として、途上国に対して学校建設と水・電気の供給、感染症対策、環境保護といった改革やプロジェクトの実施に必要な技術・資金援助を行なっている。これによって、貧困削減とともに長期的な経済発展を促進。

数多くの国や地域、幅広い分野でのプロジェクトに支援を行なっていることを考えると、世界経済への多大な影響を与えていることは想像に容やすいだろう。

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世界銀行とほかの国際機関との違い

世界には、ほかにも国際機関が存在するが、世界銀行との違いは何なのだろうか。

IMF(国際通貨基金)との違い

IMF(国際通貨基金)は、生産性や雇用創出、健全な経済に必要不可欠となる金融の安定と国際通貨協力を促す経済政策を支援することで、すべての加盟国190か国が持続的な成長と繁栄を実現するための取り組みを行っている機関。

IMFと世界銀行は、加盟国の生活水準を向上させるという目標を共有しており、互いに補完関係にある。2つの違いは、IMFが主としてマクロ経済や金融部門の問題に注力するのに対して、世界銀行は、長期の開発や貧困削減を主眼としている点である(※15)。

アジア開発銀行(ADB)やアフリカ開発銀行(AfDB)との比較

アジア開発銀行(ADB)は、アジア・太平洋地域を対象とする国際開発金融機関。世界最大の貧困人口を抱える同地域の貧困削減を図り、平等な経済成長を実現することを最重要課題として、問題に取り組んでいる。

また、アフリカ開発銀行(AfDB)は、アフリカ諸国の経済的開発および社会的進歩に寄与するため、1964年に設立。最貧国を重点的に支援するため、1973年に設立されたアフリカ開発基金(AfDF)とあわせて、アフリカ開発銀行グループと呼ばれている。

世界銀行が世界全地域に向けて融資などの支援を行なっているのに対し、上記2つはそれぞれの地域を対象とした機関である。

世界銀行の独自性と役割分担

名前に「銀行」とつく機関は数多く存在するが、世界銀行は一般的な銀行とは少し違う。

世界中の国々が協力して設立された機関であるため、国際社会全体で貧困問題に取り組んでいる点や、政策面での助言、研究、分析ならびに技術支援を通じた支援を途上国に提供している点、経済成長だけでなく環境保護や社会の安定も重視し、持続可能な開発を目指している点などが、独自性として挙げられる。また、同時にこの独自性は、役割ともいえるだろう。

世界銀行と日本の関わり

日本も、世界銀行の加盟国のひとつ。ここでは、世界銀行と日本の関わりについて紹介しよう。

日本は第2位の出資国

日本は、世界銀行グループ各機関において第2位の出資国であり、積極的な資金貢献を行っている。2023年6月30日時点の加盟国の出資額全体に対する各国の出資比率では、日本は7.59%で2位。1位はアメリカの16.64%、3位は中国の5.88%だ。(※13)

始まりは火力発電や新幹線建設費用の借入から

新幹線のイメージ

Photo by Fikri Rasyid on Unsplash

現在は第2位の出資国となった日本だが、かつては世界銀行からの借入国であった。

日本が世界銀行から借り入れたのは、1953年の関西電力多奈川火力発電所建設用借款が始まりである。その後、黒四ダム、東海道新幹線等を含め、1966年の東名高速道路(東京〜静岡区間)建設用借款まで、合計31件・8億6,300万ドルに上り、戦後日本経済発展の基礎となった重要な産業・インフラの整備に大きく貢献した(※16)。

現在の主な支援分野はインフラ、防災、UHC

現在は主に、インフラ、防災(世界銀行東京防災ハブ)、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)などの分野で、日本と世界銀行は連携。

世界銀行東京事務所は、1970年の設立以来、日本の政府機関はもとより、企業、大学・研究機関、シビルソサエティなどとの幅広いパートナーシップを促進している。

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世界銀行とは“国際協力の象徴”

本記事で紹介したように、世界銀行は資金を提供するだけの「銀行」ではない。貧困削減と持続可能な開発を目的とした国際金融機関であり、同時に、約190ヵ国の加盟国が「世界中の人々に幸せになってほしい」という同じ目的を達成するために協力している、“国際協力の象徴”的存在ともいえるのではないだろうか。

※掲載している情報は、2024年9月26日時点のものです。

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