WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)とは? 掲げる「ビジョン2050」を解説

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持続可能な発展に関する課題に取り組む組織「WBCSD」。WBCSDとはどのような組織なのか、設立の背景や注目される理由、WBCSDが掲げる「ビジョン2050」の内容を解説する。

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2024.08.17

WBCSDとは

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WBCSDは、World Business Council for Sustainable Developmentの略で、日本語に訳すと「持続可能な開発のための世界経済人会議」となる。これは持続可能な開発を目指すために協働する、230社を超える企業のCEO連合体だ。1995年に設立され、本部をスイス・ジュネーブに置く。WBCSDに参加する企業は、政府やNGO・国際機関と協力し、持続可能な発展に関する課題への取り組みを行う。(※1)

WBCSDの歴史と設立の背景

1995年に設立されたWBCSDには、前身団体がある。それが1990年に発足したBCSD(Business Council for Sustainable Development:持続可能な成長のための経済人会議)だ。

BCSDは1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットに向けてつくられた組織で、48人の経済人が集められた。1992年の地球サミットでは、持続可能性に向けたビジネスの適応に関する包括的なガイド「進路変更」を発表。「Eco-efficiency:環境効率」という用語を提唱した。この用語は、現在でも世界中で使われている。地球サミットの成功を受け、1995年1月にBCSDは別の団体であったWICE(World Industry Council for the Environment:環境のための世界産業会議)と合併し、WBCSDとなった。(※2、※3)

WBCSDは気候変動危機、自然損失、格差の拡大といった持続可能な社会を実現するための課題に、企業が対応するためのプラットフォームとして設立された。

世界経済をリードする企業約230社が参加

WBCSDに参加にしている企業は、230社を超える。参加企業の業界は、消費者サービスからエネルギー、産業、不動産とバライティに富んでいる。2017年4月6日時点の地域別の構成割合は、欧州48%、北米19%、アジア・オセアニア(日本除く)14%、日本9%、中南米7%、アフリカ2%、中東1%となっており、参加する国・地域も幅広い(※3)。

参加している企業の例を挙げると、アメリカ企業のアマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト、マクドナルド、3M、日本企業のトヨタ、ホンダ、パナソニック、富士通、電通、中国企業のアリババ、中国石油化工集団(シノペック)などがある。

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WBCSDの主な活動内容

WBCSDは「循環型経済の構築」「持続可能な都市の形成」「気候とエネルギー」「食べ物と自然」「ソーシャルインパクト」「価値の再定義」の6つのプログラムを展開。それぞれのプログラムには、循環経済のハブについて、持続可能性と健康のための食糧改革、気候変動に対する政策、人権・労働問題をどうするのか、ビジネス意思決定についてなどといったプロジェクトを設けて、持続可能な開発目標に企業が貢献できるよう活動している。

また持続可能な社会の実現のために必要な取り組みを、国際機関や政府、NGOなどに働きかける活動も行っている。(※4)

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なぜWBCSDが注目されるのか?

WBCSDは、気候変動危機、自然損失、格差の拡大といった持続可能な社会の実現のための課題に企業が対応するためのプラットフォームである。これらはSDGsと同様の課題であり、さまざまな分野におよぶことから、解決するためには各業界、企業の積極的な参加が不可欠だ。WBCSDは業界の垣根を超え、課題への解決策を提示していることが注目される理由となっている。

WBCSDが掲げる「ビジョン2050」とは

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WBCSDは、「ビジョン2050」という目標を掲げている。どのような目標なのか解説しよう。

「ビジョン2050」とは

「ビジョン2050」は、2050年までに90億人以上の人々が地球の限られた資源のなかで、快適に暮らせる世界を実現することを目的としている。この目的を達成するために、WBCSDは次のような社会を思い描いている。

・人々は自由で、平等の尊厳と権利がある
・すべての人に健康と幸福がある
・コミュニティは繁栄し、かつ結び付いている
・誰一人取り残さない
・人々は機会と志に満ちた世界にアクセスできる

これらの目標は、国連が掲げるSDGsの目標とパリ協定のターゲットに沿っているのが特徴的だ。(※5)

9つの変革の道筋と実施アプローチ

「ビジョン2050」を実現するために、WBCSDは以下の9つの「変革の道筋」を提示している。

1.エネルギー
信頼性が高く、手頃な価格のネットゼロ・カーボンエネルギーをすべての人に提供する、サステナブルなエネルギーシステム

2.交通・輸送とモビリティ
安全でアクセス可能、かつクリーンで効率的な人とモノの交通・輸送

3.生活空間
自然と調和した健康的で包摂的な生活空間

4.製品と物質・材料
資源を供給するシステム全体を再生させながら、社会のニーズに合わせて資源利用を最適化

5.金融商品・サービス
持続可能な開発を支援するために、すべての金融資本と金融商品・サービスを動員

6.コネクティビティ
責任あるコネクティビティは、人々を結びつけ、透明性と効率性を高め、機会へのアクセスを促進

7.健康とウェルビーイング
すべての人に達成可能な最高水準の健康とウェルビーイングを提供

8.水と衛星
すべての人の食料、エネルギー、公衆衛生を支える水性生態系の繁栄

9.食料
すべての人に健康的で安全かつ栄養価の高い食糧を供給する、再生型の公平な食料システム

WBCSDは、今後10年間でこれらの問題を解決する道筋をつける必要があると提唱している。(※5)

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企業がWBCSDに加盟するメリット

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世界の主要な企業が参加するWBCSD。企業が加盟するメリットについて解説する。

情報の共有・交換

WBCSDには230社以上もの世界中の企業が加盟しており、ビジネスリーダーとのネットワーキングの機会が得られるのがメリットだ。また業界も多岐にわたるため、多様なアイデアやノウハウ、情報、ビジネスコミュニティを共有・交換することも可能である。これらで得たものは、自社のビジネスに活かすことができるだろう。

持続可能なビジネスモデルの導入と競争力向上

WBCSDは、企業が環境に配慮したビジネスモデルを導入するためのガイドラインやツールを提供する。これにより、企業は環境負荷を低減しつつ、競争力を向上させることができる。

ブランド価値の向上

WBCSDに加盟し活動することで、持続可能な開発に積極的に取り組む企業としてのイメージを強化できる。そうすれば消費者や投資家からの信頼を獲得しやすくなり、ブランド価値の向上、市場競争の優位性を高められることもメリットといえるだろう。

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WBCSDの今後の活動に注目

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WBCSDは、持続可能な開発を目指すために協働するCEO連合体だ。参加する企業の多くが大企業であり、その包括性と推進力に期待がかかる。これからのWBCSDの活動に注目しよう。

※掲載している情報は、2024年8月17日時点のものです。

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