アウトサイド・イン・アプローチとは? SDGsとの関連性やメリット、具体例を紹介

アウトサイド・イン

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アウトサイド・イン・アプローチは、社会課題を解決する方法のひとつとして注目されている。この考え方はどういうものなのか、また、SDGsとの関連性や企業が採用するメリットや注意点を解説する。さらにアウトサイド・イン・アプローチの具体例についても紹介。

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2024.09.24
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社会課題を解決する「アウトサイド・イン・アプローチ」とは

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まずは、アウトサイド・イン・アプローチとはどういう概念なのかについて解説しよう。

アウトサイド・インとは

アウトサイド・インとは、世界的・社会的な視点である「外部」(アウトサイド)からなにが必要かを検討し、それに基づいて目標を設定していく方法(アプローチ)のことを指す。一般的には、企業がグローバルな社会的、環境的な課題の解決を目指すための方法のひとつだ。(※1)

インサイド・アウト・アプローチとの違い

アウトサイド・イン・アプローチと似た言葉に、インサイド・アウト・アプローチがある。インサイド・アウト・アプローチとは、企業の「内部(インサイド)」を起点に、社会的課題を解決する方法(アプローチ)のことだ。(※1)

両者の違いは、アウトサイド・イン・アプローチが世界的・社会的な視点を起点にして社会的課題の解決に取り組むのに対し、インサイド・アウト・アプローチは企業の内部を起点にしている点だ。

アウトサイド・インとSDGsとの関連性

アウトサイド・イン・アプローチは、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、GRI(Global Reporting Initiative)、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が作成した「SDG Compass:SDGsの企業行動指針 - SDGsを企業はどう活用するか?」のなかで提唱された概念である。(※1)

またSDGsには社会的・環境的な課題に関連するものが多くあることから、企業がグローバルな社会的、環境的な課題の解決を目指すための方法であるアウトサイド・イン・アプローチとの関連は深いといえる。

従来のビジネスアプローチとの違い

従来のビジネスアプローチの主流には、企業が自社のもつ技術や強みを生かして商品・サービスを生み出していく「プロダクト・アウト」や、顧客の声や市場のニーズを重視して商品・サービスを開発する「マーケット・イン」がある。こういったビジネスアプローチは、過去の業績を分析し、今後の動向を予測し、同業他社を基準に評価することだ。しかしこうしたビジネスアプローチでは、グローバルな社会的・環境的な課題に十分な対処ができないという難点があった。

そこで新たなビジネスアプローチとして提唱されたのが、アウトサイド・イン・アプローチだ。このアプローチには、企業がグローバルな社会的、環境的な起点で現代社会における課題を解決するという特徴がある。企業がこうした課題を解決することは、持続可能性な社会の実現につながり、現代において必要とされている。(※2)

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アウトサイド・イン・アプローチを採用するメリット

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企業が、アウトサイド・イン・アプローチを採用するとどのようなメリットがあるのか解説する。

社会課題の解決に貢献できる

アウトサイド・イン・アプローチでは、アウトサイドからの視点で社会的、環境的な課題の解決を目指す。こうした課題に取り組むことで、社会課題の解決に直接的に貢献できるのがメリットだ。(※3)

新たな市場機会の創出

アウトサイド・イン・アプローチでは、社会課題を自社の技術や強みといったものから切り離し、社会・環境起点でどのようにすればよいのかをゼロから考えることになる。その課題解決のアイデアは既存のものとは異なり、新たな市場機会の創出につながる。

企業の社会的責任を果たす

昨今では、企業の社会的責任が重視されている。アウトサイド・イン・アプローチにより社会課題に取り組むことで、企業の責任ある行動を示すことができる。それにより、ステークスホルダーからのイメージがアップする。

従業員のモチベーション向上

アウトサイド・イン・アプローチは、従業員満足度の向上にもつながる。社会課題の解決への貢献や、社会的責任を果たすことを従業員が実感できれば、モチベーションアップにつながるだろう。

顧客中心の視点からの製品・サービス開発

アウトサイド・イン・アプローチは、社会そのものと向き合うことにつながる。それは現代社会に生きる顧客と真剣に向き合うことにもなり、顧客中心の視点からの製品・ サービス開発もできる。

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アウトサイド・イン・アプローチの注意点

Research and development

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アウトサイド・イン・アプローチには、注意すべき点もある。どのようなことに注意しなければならないのか解説しよう。

課題解決と事業成功の両立

課題解決と事業成功は必ずしもイコールではない。アウトサイド・イン・アプローチに取り組んだからといって、事業が成功するわけではないということだ。課題解決と事業成功の両立を図るためには、アウトサイド・イン・アプローチだけでなく、ほかのビジネスアプローチも組み合わせる必要がある。

技術開発や連携の必要性

アウトサイド・イン・アプローチでは、いままで企業が行ってきたこととは異なる、新たな技術開発や連携が必要になる可能性がある。こうした場合に、技術開発や連携を新たに構築できるかどうかも課題だ。

社会課題の難しさ

アウトサイド・イン・アプローチで扱う社会課題は、問題が複雑にからみあい、解決困難なものもある。こうした課題を企業が単独で解決するのは困難を極め、効果が限定的になることも問題点だ。(※4)

社内の意識改革と文化の変革

企業がアウトサイド・イン・アプローチを採用する場合には、社内に浸透させる必要がある。そのためには、社内の意識改革や文化の変革が必要となるだろう。

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アウトサイド・イン・アプローチの具体例

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ここでは、アウトサイド・イン・アプローチの具体例を見ていこう。

廃棄予定の野菜で染色したファッションアイテム

「FOOD TEXTILE」は、色や形が悪いため廃棄される野菜や果物の成分から染料を抽出し、生地や糸を染め上げて商品化するプロジェクトブランドだ。このプロジェクトは、大手食品メーカーからの「廃棄食材を活かせないか」という投げかけがきっかけとなり誕生した。現在、食品廃棄量の増加は深刻な問題となっており、その問題への解決策のひとつといえる事例だ。(※5、※6)

二酸化炭素を吸収するコンクリート

多用途に使われるコンクリート製造に伴う二酸化炭素排出量の削減は、国際的な課題であった。そこで、2011年に鹿島建設、中国電力、デンカ、ランデスが共同開発したのが、製造時の二酸化炭素排出量を実質ゼロ以下にしたコンクリート「CO2-SUICOM(スイコム)」だ。このコンクリートの特徴は、セメントと二酸化炭素を反応させることで、コンクリートに二酸化炭素を吸収・固定させることである。これは、地球温暖化対策やカーボンニュートラルの実現といった課題への取り組みの一例といえる。(※7)

アルカリイオン電解水で洗うコインランドリー

コインランドリー企業の「wash+」は、洗剤を使わず、アルカリイオン電解水で洗うコインランドリーを展開している。アルカリイオン電解水を使うことで、排水の環境負荷を大幅に軽減させられる。節水効果もあり、水の保全に貢献できるのが特徴だ。(※8)

瓦のアップサイクル

石川県にある企業「エコシステム」は、廃瓦をアップサイクルし、環境に配慮した道路舗装材を提供している。またベトナムやボリビア、ペルーでの海外事業を展開し、途上国における廃材リサイクルや機能性舗装事業の実現可能性を探る取り組みも行っている。(※9)

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遊びながらアウトサイド・インを学ベるカードゲームも

アウトサイド・インについて学べるカードゲームが「SDGsアウトサイドインカードゲーム」だ。このゲームの参加者はある企業の従業員の一員となり、チームで新規事業を通じて社会課題を解決することで収益の最大化を目指す。

このゲームをすることでアウトサイド・インについて学べ、世界が直面している社会課題に、企業がどのように貢献できるのか知ることができる。自社が保有しているアセットを知り、統合して新たな事業を生み出すきっかけをつかめるのが特徴だ。またゲーム後に振り返りを行うことで、社内コミュニケーションの向上や新たな事業アイデアが生まれるきっかけにもなっている。(※10)

アウトサイド・イン・アプローチで持続可能な社会を実現

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社会課題を解決し、持続可能な社会へと導く「アウトサイド・イン・アプローチ」は、今後さまざまな企業が取り入れることだろう。企業が、アウトサイド・イン・アプローチによってどのような取り組みをしているのかに注目しよう。また企業だけに社会課題を押しつけず、私たちもできることからアクションを起こそう。

※掲載している情報は、2024年9月24日時点のものです。

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