育児休業制度とは? メリットと課題、世界各国の制度を解説

育児休暇

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昨今、日本では男性労働者も育休を取得できる権利が明確化されたことを受け、育児休業制度が注目を集めている。この記事では制度の基本情報や、歴史を解説する。またメリットと課題、世界各国の育児休業制度も紹介する。

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2024.09.18
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育児休業制度の基本

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育児休業制度とは、育児を行う労働者が円滑に仕事と両立できるよう配慮し、働き続けられるよう支援するための法律である。正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」という。

そもそも育児休業とは

育児休業とは、労働者が子どもを育てるために休業することを指す。日本の法律では、育児・介護休業法により、原則1歳未満の子どもを育てるために取得できる休業と定められている。(※1)

制度の歴史と目的

育児休業制度は、これまで何度か改正を繰り返して現在に至る。

育児休業制度が法制化されたのは1992年(平成4年)だ。この年に「育児休業等に関する法律(育児休業法)」が施行された。この法律が成立した背景には、女性の社会進出、核家族化の進行、少子化による労働力の不足などがあった。平成7年には、育児休業法に介護休業制度が盛り込まれ「育児・介護休業法」となる。その後の改変では、深夜業や時間外労働、残業などの制限や、子の看護休暇などの創設が行われた。令和4年には「出生時育児休業(産後パパ育休制度)」が設けられた。

この制度は、育児を行う労働者が円滑に仕事と両立できるよう配慮し、働き続けられるようにすることを目的としている。(※2、※3)

対象者とその条件

育児休業制度の対象者は、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者だ。ただし、以下の条件がある。
・日々雇い入れられる者は除かれる。
・期間を定めて雇用される者は、申出時点において、子が1歳6か月に達する日までに、労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない場合は、育児休業を取得できる。
・パートタイマーや、1日の労働時間が通常より短い場合であっても、期間の定めのない労働契約によって働いている場合は取得できる。(※1)

産休との違い

育児休業制度(通称:育休)と混同しがちなものに産休がある。産休とは、正式名を「産前産後休業」といい、名前のとおり産前産後に休業するものだ。産前休業は、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14 週間前)から、女性労働者の請求によって取得できる。産後休業は、出産日の翌日から8週間、事業主は女性労働者を就労させることができない。ただし、産後6週間経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就労可能だ。

両者の大きな違いは、期間と対象となる労働者、根拠法だ。期間は育休が子どもが1歳になるまでなのに対し、産休は産前産後の定められた期間となる。対象者は育休が男女労働者であるのに対し、産休は女性労働者のみだ。根拠法は育休が育児・介護休業法であるのに対し、産休は労働基準法に基づく。(※4)

育児休業制度の詳細

child rearing

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育児休業制度の期間や取得条件、給付金などについて解説する。

休業期間と取得条件

育児休業制度の休業期間は、原則として子どもが1歳に達するまでだ。ただし、保育園に入れない場合などは2歳まで延長できる。

取得条件は、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者である。正社員だけでなく、契約期間の定めのある労働者も以下の条件を満たせば取得可能だ。
・申出時点で、過去1年以上継続して雇用されていること
・子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかでないこと(※5)

休業中の給付金について

休業中には、育児休業給付金を受け取ることができる。
●支給要件
・1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること。
・休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あること。ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の完全月が12か月以上あること。
・休業期間中の就業日数が、最大10日以下であること。または就業時間が80時間以下であること。
・期間を定めて雇用される方の場合は、養育する子が1歳6か月に達する日までの間に、その労働契約の期間が満了することが明らかでないこと。

●支給額
支給額は以下の計算方法で算出される。
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)

ただし休業開始時賃金日額には上限額と下限額があり、上限額は15,690円、下限額は2,869円となっている。

●支給期間
支給期間は、原則として養育している子どもが1歳となる日の前日(実際には1歳の誕生日の前々日)までの間、育児休業した日数を対象に支給される。(※6)

申請手続きとその流れ

給付金を受け取る場合は、申請手続きが必要となる。多くの場合、勤務先である会社が申請手続きを行ってくれる。その場合は、会社が申請に必要な書類を用意し、勤務先所在地管轄のハローワークに提出する。

会社が手続きをしない場合などは、自分自身で申請を行うこととなる。その場合は、育児休業給付金支給申請書と育児休業給付受給資格確認票をハローワークで入手する。会社から賃金月額証明書・支給申請書の記載内容を確認できる書類を入手し、育児の事実、出産予定日および出生日を確認できる書類とともにハローワークに提出する。なお、手続きは電子申請もできる。(※6)

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育児休業制度のメリット

親子

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育児休業制度にはどのようなメリットがあるのか見ていこう。

親と子どもによい影響

育児休業を利用すれば、子どもが生まれたばかりの大切な時期に、親が子どもとしっかりと向き合う時間を確保できる。これにより親子の絆が深まり、子どもの成長を間近で感じることができる。

子育て世代の働き方改革

育児休業により柔軟な働き方ができるため、子育て世代の働き方改革にもつながる。

キャリア継続と家庭の両立

育児休業を利用することでキャリアを継続でき、ワークライフバランスを保てるのもメリットだ。母親だけでなく、父親も育児休業を取得すれば、夫婦で育児を協力して行う環境が整う。

職場復帰へのサポート

法律で、育児休業後に職場復帰が保障されている。そのため、キャリアを中断することなく復職できる。また無理なく職場に戻れる、育児短時間勤務などの制度もある。

企業にとってのプラス効果

企業にとってもメリットがある。それは育児休業制度を推進することにより、働きやすい環境づくりに力を入れている会社として企業のイメージアップにつながることだ。育児休暇制度の推進は、就職希望者の会社選びのポイントのひとつにもなっている。

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育休制度の課題

男性の子育て

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育休制度にはメリットがある一方、課題もある。どのような課題があるのか解説しよう。

男性の育児休業取得率の低さ

育児休業制度は男性労働者も取得できる制度だ。しかし、取得率が低いことが課題となっている。厚生労働省が発表した「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 によると、男性の育休等取得者の割合は30.1%であった。前年度の17.13%からみて上昇傾向にある。しかし女性の取得者の割合は84.1%であったため、比べるとまだまだ取得率は低いといえる。(※7)

職場の理解不足と社会的プレッシャー

職場の理解不足も課題といえる。女性労働者への理解が広まっているが、男性労働者への理解はまだまだ不十分である。また、育休を取得することに社会的プレッシャーを感じる人も少なからずいることも事実だ。

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海外の制度との比較

育児

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海外の出産休暇、育児休暇の制度の内容について、日本と比較しながら解説する。

アメリカ

アメリカでは産休や育休の制度は存在しないが、それらに近いのがFMLA(The Family and Medical Leave:育児介護休業法)だ。この法律では、12か月間に合計12労働週の枠内で育児休暇、出産休暇を取得する権利を与えている。なお、手当や給付はない。(※8)

日本と比較すると、育児休暇期間が短く給付金がない。アメリカの育休制度は、先進諸国のなかでは最低基準といわれている。

ノルウェー

ノルウェーの出産休暇は、産前12週間(うち3週間は義務)、産後6週間(義務)となっており、男性労働者は2週間取得できる。出産手当は女性のみ給付される。

育児休暇は、最長3年間(満1歳までは両親で分割可能、加えて両親で1年ずつ)の期間がある。給付は390日までは賃金の80%を給付する。

日本と比較すると、出産休暇は男性労働者も取得でき、育児休暇期間が長く給付も手厚い。(※9)

フランス

フランスの出産休暇は産前6週間、産後10週間(産後6週間をふくむ8週間は義務)となっている。取得できるのは雇用され、出産予定のある女性だ。給付については、出産休暇手当を受け取ることができる。

育児休暇は子どもが満3歳になるまでの期間で、休暇形態は休暇もしくは短時間勤務がある。給付金は労働時間に応じて給付される。

日本と比較すると育児休暇期間が長く、休暇または短時間勤務を選べるのが特徴的だ。(※9)

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仕事と育児の両立を支援する育児休業制度

family

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日本では、少子化が深刻な問題となっている。その対策のひとつともいえるのが育児休業制度だ。育児休業制度を活用することにより、仕事と育児の両立、男性への育休促進、女性の育児負担を減らすことができる。こうした政府の支援を、子育てに上手に活用していこう。

※掲載している情報は、2024年9月18日時点のものです。

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