育児と仕事の両立を図る働き方「マミートラック」 ワンオペ育児の実態から見えるデメリットも

母親と2人の子ども

マミートラックとは、子育てと仕事を両立したい母親が選択する働き方の一つ。時間の融通が利きやすいというメリットがある一方で、補助的な業務や単調な仕事しか任せてもらえないといったデメリットも。女性がマミートラックを選ばざるを得ない日本のワンオペ育児の現状とは。

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2021.06.30
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マミートラックとは

自宅で働く母親と赤ちゃん

Photo by Standsome Worklifestyle on Unsplash

マミートラックとは、出産を終えて職場復帰をした女性が、仕事と子育ての両立のために出世コースから外れて昇進や昇格から遠のいてしまうキャリアコースのことを指す。

1998年にアメリカで生まれた言葉で、女性が仕事と子育てを両立できるように、育休やワークシェアを用意するなどの企業による施策を表していたが、現在ではマイナスの意味合いが強くなっている。

「マミー」は母親、「トラック」は陸上競技で走る周回コースを指し、マミートラックに一度乗ってしまうと、陸上競技場のトラックを何周も走り続けるように、子育てを理由に「責任ある仕事を任せてもらえない」、「単調な仕事しかさせてもらえない」という状態から抜け出せないことを表している。

マミートラックの具体例と問題点

仕事をしながら子育てをしていると、さまざまな時間への制約がかかることが予想できる。例えば、子どもの急な体調の崩れなどを理由に、急に仕事を休まなければならなくなったり、出張や残業ができなくなったりと、出産前と同様の働き方が難しくなる。

そのため、企業も以前のような責任のある仕事を任せづらくなり、補助的な作業を任せることが多くなってしまうため、女性にとっては仕事のやりがいを見いだせずにモチベーションが低下してしまう恐れがある。

また、子育てを理由に希望とは別の部署に異動させられたり、時短勤務になることで給与が大幅にカットされたりと、キャリア形成が難しくなるといった問題点もある。

日本の働くママの現状

厚生労働省がおこなった調査によると、仕事と子育てを両立している女性の割合は2004年には56.7%、2019年には72.4%と上昇傾向にある。一方でこの72.4%のうち、正社員の割合は26.2%、パートタイマーの割合は37.8%となっており、多くの働く女性が子育てのために時間や労働量の融通が利くパートタイム雇用を選択している、または選択せざるを得ない状況にある(※1)。

2018年には、妻年齢が25-34歳の夫婦のうち、子を持ちながらフルタイムで働いている共働き世帯は17.9%で、専業主婦世帯はその倍以上となる38.3%(※2)。出産後に離職した女性の割合は46.9%とされている(※3)。出産を機にキャリアを手放す女性が多く、2020年における日本の女性管理職の割合は、7.2%とかなり低い水準になっている(※4)。

また、6歳未満の子を持つ共働き夫婦の家事や仕事の役割分担の状況を見てみると、妻が仕事に費やす時間が平均で約4時間である一方、夫はその2倍となる約8~9時間。夫が家事や育児に費やす時間は、妻と比較して半分以下という結果になっている(※2)。

つまり日本では多くの女性がワンオペ育児によってマミートラックを選択せざるを得ない状況にあり、仕事に費やせる時間が少ないことからキャリア形成が難しくなっている。

ワンオペ育児がマミートラックの原因に

「育児=女性がするもの」という考えが根強く残る日本では、男性が育児にかける時間は女性の半分以下であり、多くの女性がワンオペ育児をしている実態がある。そもそも男性が育児休業を取得しづらい雰囲気の職場も多く、女性が仕事を諦めてマミートラックに乗らざるを得ない状況だ。

また企業側も、仕事の融通が利かない子を持つ女性社員に対しては、責任ある仕事を任せられないと考えてしまうことが多い。女性に働きたいという意欲があるにも関わらず、企業が時短勤務や部署異動などの決定を下してしまうことも、女性がマミートラックに乗る原因の一つと考えられている。

マミートラックにあえて乗りたい女性も

子どもを抱く母親

Photo by Gabe Pierce on Unsplash

女性の子育てや仕事に対するビジョンによって、マミートラックのとらえ方は異なる。キャリアを形成するために産後もフルタイムで働きたい女性もいれば、子どもとの時間を優先するためにあえてマミートラックに乗りたいという女性もいる。

マミートラックに「乗りたくない」女性

子どもが生まれると、学校や習い事など多くの養育費がかかるようになる。女性がシングルマザーの場合や、夫婦だけれど男性側の給与だけでは足りない場合もあるため、産後もフルタイムで働いて昇進したい・キャリアを形成したいと考えている女性は少なくない。

また、やりがいのある仕事をしたい・産前と同じように好きな仕事を続けたいと感じている女性にとって、単調な仕事や補佐的な仕事が多く、部署異動や減給の可能性が生じてしまうマミートラックに乗ることはデメリットとなる。

マミートラックに「乗りたい」女性

マミートラックに乗ることで、仕事の融通が利きやすくなるため、子どもとの時間を多く確保できるようになるほか、子どもが急な病気にかかったりした場合にも休みが取りやすい。

また、幼い子どもは手が掛かり、育児がストレスになることもある。自分の心を健康に保つためにも、自分の時間を確保したい、高いスキルを必要とせずストレスを感じにくい仕事がしたいという理由で、あえてマミートラックに乗りたい女性もいる。

企業側にできる対策

リモートワークの導入

リモートワークを導入することで、子どもの体調不良などを理由に急に会社を休まなければならないときにも、在宅ワークで対応が可能となる。通勤にかかる時間がなくなるため、子どもや家族との時間が増え、仕事と家庭の両立がしやすくなる。

フレックス制度の導入

保育園・幼稚園に子どもを送迎する時間を考えると、一般社員と同じ時間帯に出勤・退勤することが難しい場合がある。フレックス制度があれば、子どもの送迎時間に合わせて仕事の時間を調整することができる。また、子どもを持たない社員にとっても通勤ラッシュを避けられるなどのメリットがある。

育休期間の延長

現在日本では、子どもが生まれると1年間の育児休業を取ることが可能で、一定の条件を満たしていれば2年まで延長することができる。しかし近年では待機児童の問題もあり、子どもの預かり先が見つからず職場復帰ができない女性も少なくない。企業側が育児休暇の延長を可能にすることで、女性は職場復帰のタイミングを選択しやすくなるだろう。

働くママにできる対策

会社に今後のキャリアを相談する

マミートラックに陥らないためにも、会社には将来のキャリア設計や働き方について事前に相談しておくことが大切だ。出産を終えた女性に対して会社側は「負担の少ない仕事の方がいいだろう」と思い込んでいる場合もあるため、具体的な意思表示することで状況を改善できるかもしれない。

リモートワークを活用する

勤務先にリモートワーク制度がある場合、活用することで子どもとの時間を確保しながら仕事をこなすことが可能になる。どうしても出勤が必要な会社の場合は、リモートワークに柔軟に対応している会社に転職することも一つの手段だ。

夫や家族などに協力してもらう

一人で子育てをしていると、どうしても仕事に割くことのできる時間が減ってしまう。自分も仕事をしたいという意思を伝え、子育てにかける時間を夫婦間で平等に分割したり、家族に子育てへの協力を仰ぐことで状況を改善できるかもしれない。


マミートラックに乗りたい人もそうでない人も、まずは出産後の働き方のビジョンを明確にしておくことが大切だ。

また、仕事と子育ての両立を図るには、男性の子育てへの参加が必要不可欠。そのためには女性だけではなく、子どもを持つ男性も育児休暇や時短勤務を選択できるよう、企業側は組織の体制を整え、柔軟に対応することが求められるだろう。

※1 2019年 国民生活基礎調査の概況(p.5)/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/02.pdf
※2 2020年9月号 「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス(p.2、5)/内閣府共同参画
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2020/202009/pdf/202009.pdf
※3 2019年5月号 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2018(p.4)/内閣府共同参画
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201905/pdf/201905.pdf
※4 女性登用に対する近畿企業の意識調査(2020年)/帝国データバンク
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/s200903_58.pdf

※掲載している情報は、2021年6月30日時点のものです。

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