M字カーブとは 現状や世界比較、解消に向けたポイントを解説

折れ線グラフのイメージ

Photo by Isaac Smith

日本の女性労働率を表す際に用いられる、「M字カーブ」。本記事では、M字カーブとは具体的に何を指し、現在どのような状況なのかを解説していく。また、世界との比較や、M字カーブ解消に向けたポイント、解消に向けておこなわれている取り組みについても紹介する。

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2024.08.31

M字カーブとは

折れ線グラフのイメージ

Photo by Isaac Smith on Unsplash

M字カーブとは、日本の女性労働率を表す際によく用いられる言葉だ。日本女性の生産年齢人口に対する労働力人口の割合を示す「労働力率」を、5歳ごとの年齢階級別でグラフにした場合、アルファベットの「M」に近い曲線になることからついた言葉である。

この形は、30代前後で結婚や出産を機にいったん離職し、育児が落ち着いたら再び働きだす女性が多いという日本の特徴を反映しており、日本の労働環境が、出産・育児に関わらず就業を継続することがむずかしいことや、女性に家事・育児を負担させるような性別的役割の考え方が根強く残っていることが表れている。

L字カーブとの違い

M字カーブと同様にグラフの形からついた言葉で、「L字カーブ」がある。

M字カーブが労働力率(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口が占める割合)を表しているのに対し、L字カーブは、年齢階級別に見た女性の正規雇用比率を表している。その線グラフが、20代後半をピークに低下していく様子がアルファベットの「L」のように見えることからついた言葉だ。

M字カーブの現状

赤ちゃんが手を握っているイメージ

Photo by Joshua Reddekopp on Unsplash

労働力率はしばらくの間、少子高齢化が進んでいることにより、緩やかな低下傾向にあったが、2020年の労働力率は、1950年以降過去最高を記録。これは、人手不足の高まりや、高齢者雇用促進政策の推進等を背景とした、女性や高齢層の労働参加拡大が背景にあると考えられている。

また、結婚や出産を機にいったん離職し、育児が落ち着いたら再び働きだす女性が多いという日本の特徴を反映しているM字カーブにも近年変化が出てきている。

1985年と比べると、女性に見られる、結婚や出産時期に労働力率が低下するいわゆるM字カーブの底に当たる年齢階級での労働力率が、49.3%から78.2%へと大幅に上昇。これによってカーブが浅くなり、台形へと近づきつつあるのだ(※1)。

M字カーブが改善した要因として挙げられるのは、日本の政府が実施した「男女雇用機会均等法」や「子ども・子育て関連3法」「女性活躍推進法」などの施策である。また、社会が変化した一方で、女性の晩婚化や晩産化、また女性自身のワークスタイルやライフスタイルなどへの価値観の変化も深く起因している。

しかし、M字カーブが解消しつつあっても、実際には給与が低かったり、業務内容でスキルアップやキャリアアップを実現できる可能性が低かったり、多くの課題が残されている。

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M字カーブ、世界と比較すると?

M字カーブは、世界の女性労働力率と比較するとどう違うのだろうか。

男女共同参画局の「主要国における女性の年齢階級別労働力率(※2)」を見てみると、欧米諸国のM字カーブは解消している一方、韓国は日本同様グラフがM字を描いている。

スウェーデンやドイツ、アメリカでは、グラフが「逆U字型」と呼ばれる曲線を描いており、一定の年齢層で労働力率が下がるような事象は見られない。これは、女性が柔軟な働き方をできる社会であることや、子育て支援が整っているなど、離職しなくてもいい仕組みづくりができていることが考えられる。

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M字カーブ解消に向けたポイント

ここからは、M字カーブをさらに解消していくために、何がポイントとなるのか見ていこう。

家庭と仕事の両立

総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)」によると、女性労働者がいまの会社で働き続ける上で必要なこととして、「子育てしながらでも働き続けられる制度や職場環境」や「育児や介護のための労働時間での配慮」といった回答が多くを占めている(※3)。

このことから、女性労働者が結婚や出産を機に離職を選択、または離職せざるを得なくなってしまうのには、家庭と仕事の両立のむずかしさが要因のひとつとして考えられる。

柔軟な働き方

リモートワークをしているイメージ

Photo by Chris Montgomery on Unsplash

子育てや介護をしながら女性が働き続けるには、企業が柔軟な働き方をできる仕組みや環境をつくることも重要だ。

リモートワークの推進や時短やフレックスタイム制などの業務時間の調整、男性育児休業取得の推進など、近年多くの企業が取り入れつつある。

企業側が、正規雇用を維持しつつワークライフバランスの確保ができるようにすることで、M字カーブの解消に大きく近づくだろう。

再雇用制度の普及

オフィスで仕事をしているイメージ

Photo by Jason Goodman on Unsplash

これまで挙げた「家庭と仕事の両立」や「柔軟な働き方」のような両立支援のほかに、再就職支援も欠かせない。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2015)の調査によると、出産・育児などを機に離職した理由として、「家事・育児に専念するために自発的に退職した」との回答が多かった。このような人々が、育児などが落ち着き再び働きたいと思ったときに、再就職しやすいよう支援することも重要だ(※4)。

とくに、一旦退職した企業に再就職する再雇用制度は、企業側もノウハウや経験を活かし即戦力として働いてもらうことができ、女性も退職前のスキルを活かしキャリアを再開できるといった、双方にメリットがある。

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M字カーブ解消向けた取り組み

日本ではM字カーブ解消に向けて、どのような取り組みがおこなわれているのだろうか。ここでは、厚生労働省がおこなっている3つの事例を紹介しよう。

両立支援等助成金

厚生労働省では、働き続けながら子育てや介護等をおこなう労働者の雇用の継続を図るための就業環境整備に取り組む事業主に対して、両立支援等助成金を支給している。

これにより、仕事と育児・介護等の両立支援に関する事業主の取り組みを促進し、労働者の雇用の安定を図る狙いがある(※5)。

「育休復帰支援プラン」の策定

中小企業における、労働者の円滑な育児休業の取得および職場復帰等を図るため、厚生労働省では「育休復帰支援プラン」を策定。

このマニュアルは、従業員の育休取得や職場復帰に関してさまざまな悩みをもつ中小企業が、それぞれの企業の状況に応じた育休復帰支援プランを策定し、プランに沿った取り組みを進めることで、従業員の円滑な育休取得から職場復帰までを支援するポイントを解説している。

これを活用することで、従業員は安心して育休を取得し復職することができる上、職場側も、快く休業に送り出すことができるのだ(※6)。

両立支援に関する情報等を一元化

両立支援に関する情報などを一元化した、「女性の活躍・両立支援総合サイト」の立ち上げもM字カーブ解消に向けた取り組みのひとつだ。

このサイトでは、企業の両立支援の進捗状況に応じた取り組みのポイントと、さまざまな企業の具体的な取り組み事例を掲載。好事例集の普及により、効果的・効率的な情報提供をおこなっている(※7)。

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M字カーブの解消は中身も重要

M字カーブの解消は、日本における女性の活躍推進がわかるひとつの物差しにはなるだろう。しかし、グラフの形だけでなく、その中身こそ重要だ。実は低い給与で働いていたり、育児や介護をしながら、業務時間や休日の調整が可能な非正規社員を選んでいたりするケースがあることも無視してはいけない。「就業を継続すること」と「能力開発がおこなわれること」の両方が叶う、本当の意味での女性の活躍を進めていけるよう、国や企業で取り組んでいくことが求められている。

※掲載している情報は、2024年8月31日時点のものです。

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