ギグワーカーってどんな仕事? フリーランスとの違いやメリット・デメリットも

パソコンを操作する人の手元のイメージ

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「ギグワーカー」とは、オンラインのマッチングプラットフォームを介して仕事を請け負う人々のことを指す。働き方が多様化している近年、注目を集めている言葉だ。本記事では、フリーランスとの違いや、メリット・デメリットなどに触れながら、ギグワーカーについて詳しく紹介する。

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2023.09.12

ギグワーカーとは

ギグワーカーとは、アプリやインターネットなどのマッチングプラットフォームを介して仕事を請け負う人々のことを指す言葉だ。フードデリバリーサービスをイメージすると、わかりやすいかもしれない。

「ギグ(gig)」とは、「音楽用語でライブハウスなどおこなわれる短いセッションや演奏」を意味する。この言葉のように、単発で好きな時間だけ働く人たちを表す言葉として生まれたのが、ギグワーカーである。

フリーランスとの違い

ギグワーカーが基本的に単発の(数時間〜数日で完了する)仕事を請け負うことが多いのに対し、フリーランスは短期〜1ヶ月、1年といった仕事も多くある。この継続性の違いが、ギグワーカーとフリーランスとの違いといえるだろう。

そのほか、フリーランスはプラットフォーム仲介業者を通さずに、発注者と直接契約をすることもある点が、ギクワーカーと異なる。

ギグワーカーが注目される背景

雇用への不安

ギグワーカーが注目される背景には、雇用への不安が影響している。

とくに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延は、経済に大きな影響をおよぼした。減給だけでなく、職を失ってしまった人も少なくない。さらに近年、終身雇用制度の崩壊もささやかれていることも重なり、雇用への不安が大きくなった人も多いだろう。

そんな不安から、収入口を増やす・分散させるという考えを持つ人が増加し、そのひとつの方法として、ギグワーカーが注目されている。

副業解禁

2018年に厚生労働省は、「モデル就業規則」から副業禁止規則を削除(※1)。さらに、「副業・兼業の促進に関するガイドライン(※2)」が登場するなど、近年世の中で副業解禁の流れが加速している。

就業規則で副業を禁止している企業もまだまだ存在しているが、積極的に取り入れている企業も増えている。そして今後も増加していくことが予想され、それに伴いギグワーカーもさらに増えていくだろう。

働き方の多様化

コロナ禍を経て、これまで対面でしか難しいとされていた仕事でも、リモート化が可能になるケースも増えてきた。会社に属する人でも、通信環境さえ整っていればどこにいても仕事ができたり、始業・就業時間をある程度自分で決めることができたりと、働き方が変化した人も少なくないだろう。時間を有効に使えるようになったことで、隙間時間を活用し、副業としてギグワークに挑戦する人も増えてきている。

そのほか、自分の理想とするライフスタイルやワークスタイルを叶える手段として、ギグワークをメインの仕事として選択する人、しようと考えている人が増えていることも、注目されている理由のひとつといえるだろう。

マッチングプラットフォームの普及

ギグワーカーが仕事を見つける場である、マッチングプラットフォームが普及していることも、ギグワーカーが注目される背景にある。

これまで、「自分には副業やフリーランスは難しいだろう」と思っていた人にとっても、マッチングプラットフォームの普及は、挑戦するきっかけを与えてくれる。フードデリバリーのほかにも、個人のスキルを活かせるような仕事を探しやすく、ギグワーカーになりやすい環境が整ってきているといえるだろう。

深刻な人手不足

企業側による、積極的にギグワーカーを活用しようという動きも、ギグワーカーの注目度を高める要因となっている。

少子高齢化に伴って労働人口が減少し、労働力不足や人材獲得難に陥っている企業は少なくない。ギグワーカーを活用することで、単発ではあるものの、労働力を確保することができる。しかも、雇用契約や研修などは必要とせずに即戦力となるため、コストも採用にかかる時間も抑えることができるのだ。

日本におけるギグワーカーの現状

広義ではフリーランスに属するギグワーカー。ランサーズ株式会社が公表している「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によれば、フリーランスの人口は2015年と比較して640万人、経済規模は9.2兆円増加しているそうだ(※3)。

さらに、株式会社クラウドワークスの「副業データブック 2022年版」によれば、副業をOKとする企業は73.9%(※4)。今後さらに副業を解禁する企業が増えれば、同時にギグワーカーの割合も増えていくだろう。

ギグワーカーのメリットとデメリット

メリット

ギグワーカーのメリットでまずあげられるのは、労働時間が自由なこと。それによって、育児や介護との両立が叶うほか、会社員の副業が可能になっている。

そのほか、隙間時間を有効活用して収入を得ることができたり、企業に属さないことによって人間関係のストレスが少なかったりする点もメリットといえるだろう。

また自分のスキルや価値を活用できることもメリットとしてあげられる。スキルはあるけれどいままでマネタイズしてこなかったことや、会社では使わないけれど本当は持っているスキルなどを活用し、収入につなげることができる。

そのほか、本業とは違った職種に、副業として挑戦できる点もメリットといえるだろう。

デメリット

収入(仕事の獲得)が不安定であることや、最低賃金が適用されないので報酬がとても安いことがある、ということがギグワーカーのデメリットとしてあげられる。とくに一定以上のスキルがない場合、買い叩かれてしまうことも多いそう。

また、福利厚生や社会保険などもないこともデメリットである。長時間労働の規制がないほか、解雇された場合の失業手当、病気やケガの補償などもなく、仕事においてもすべて自己責任となる。メリットが多い一方で、リスクが伴うこともしっかり認識しておかなければいけない。

企業側のメリットとデメリット

メリット

慢性的に人材不足の問題を抱えている企業は多い。そんな企業がギグワーカーに仕事を依頼することで、既存社員の業務負担を軽減できるというメリットがある。また、単発ではあるが、即戦力を採用できるというのもメリットだろう。

しかも、雇用契約を結ばずに依頼できるため、人材確保に時間がかからないほか、研修や社会保険などのコストもかからない。

デメリット

ギグワーカーと仕事をすることのデメリットは、企業の機密情報漏洩のリスクやドタキャンといった各種トラブルの発生リスクがあること。ある程度慎重な人選をすることや、依頼内容はしっかり選ぶ必要があるだろう。

また、基本的には単発での採用となるため、人材の入れ替わりが激しいのも懸念点だ。いい人材に出会えても、ギグワーカー側が希望しなければ継続して仕事を依頼することは難しい。このようにギグワーカーのノウハウを企業資産として残すことができない点も、企業側のデメリットのひとつといえる。

ギグワーカーは日本の社会を支える新たな働き方

少子高齢化による労働力不足が懸念される昨今。時間を有効活用し、ひとりがこれまでよりも多くの労働を叶えることができるギグワーカーという働き方は、今後も希望者や需要が増えるだろう。

しかし前述したように、デメリットが存在することも忘れてはいけない。ギグワーカーとして請け負う側も、発注する企業側も、メリット・デメリットを考慮して、それぞれ状況や課題に合った方法で活用していくことが大切だ。上手く活用することで、私たちの社会を支え、これからの時代にフィットした働き方のひとつとしてさらに根付いていくだろう。

※掲載している情報は、2023年9月12日時点のものです。

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