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世界では、水使用量の増加が問題となっている。この記事では、世界の水使用量ランキングを掲載。どの国がどのくらい水を使っているのか、水使用量の多い国・地域の特徴、世界の水使用量削減への取り組みを紹介する。
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地球上の水の総量は、約14億立方キロメートル(1.4億立方マイル)と推定されている。この水の大部分は海水で全体の約97.5%を占め、残りの約2.5%が淡水だ。
そして淡水のおおよそ70%が氷河・氷山として固定されており、残りの30%のほとんどは土中の水分あるいは地下深くの帯水層の地下水であり、淡水のうち人がアクセスできる地表水の割合は約0.4%となっている。これは、地球上のすべての水のわずか0.01%。
そのうち約10万km3だけが、降雨や降雪で再生され、持続的に利用可能な状態にある。(※1)このデータをふまえて、世界の水の使用量を見ていこう。
世界の年間水使用量は、1950年に約1,400立方キロメートル、2000年には約4,000立方キロメートルであった。過去50年で約2.9倍に増えていることがわかる。(※1)
世界で使用される水を用途別に見ると、農業用が約6割、工業用が約1割、都市用が約2割となっており、農業用に使われている水が多い。(※2)
1950年から1995年までの45年間における1人当たりの水使用量の増加率を見ると、もっとも多いのは生活用水で約3倍、次いで工業用水が約1.8倍、農業用水はほぼ横ばいとなっている。この間、世界の人口は約2.2倍に増大しており、水の使用量はそれ以上に増えているのが現状だ。(※3)
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世界各国の年間水使用量ランキングTOP20を紹介しよう(2021年時点)。1位はインド、2位は中国、3位はアメリカとなっている。ランキングを見ると、アジアの国が上位を占めていることがわかる。(※4)
順位 | 国名 | 使用量(立方キロメートル)/年 |
1位 | インド | 761 |
---|---|---|
2位 | 中国 | 581.29 |
3位 | アメリカ | 444.29 |
4位 | インドネシア | 222.64 |
5位 | パキスタン | 183.45 |
6位 | イラン | 93.30 |
7位 | メキシコ | 89.94 |
8位 | フィリピン | 89.00 |
9位 | ベトナム | 82.03 |
10位 | 日本 | 78.30 |
11位 | エジプト | 77.50 |
12位 | ブラジル | 67.31 |
13位 | ロシア | 64.82 |
14位 | トルコ | 58.40 |
15位 | タイ | 57.31 |
16位 | ウズベキスタン | 43.66 |
17位 | イラク | 42.42 |
18位 | ペルー | 38.55 |
19位 | アルゼンチン | 37.78 |
20位 | バングラディシュ | 35.87 |
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国・地域によって、水使用量に特徴がある。どのような特徴があるか解説しよう。
世界のなかで水使用量1位のインドは、1人あたりの使用量が613平方メートルであった。これは、日本の1人あたりの使用量とくらべると少なく、人口の多さが影響している。また用途別水使用量は、農業用が9割、0.2割が工業用、0.7割が水道用となっており、ほとんどの水が農業に利用されているのが特徴だ。(※5)
2位の中国は、1人あたりの使用量が448平方メートルであった。また用途別水使用量は、農業用が約6割、約2割が工業用、約1割が生活用となっている。注目したいのは、2000年から2009年までの10年間で、工業用は2割、生活用は3割、水使用量が増加していることだ。これは、経済成長にともなう都市化と工業化の進展が影響していると考えられる。(※6)
世界の年間水使用量は約3,572立方キロメートルであった。地域別の水の使用量を多い順に見ると、1位がアジアで2,085立方キロメートル、2位が北米で652立方キロメートル、3位がヨーロッパで497立方キロメートル、4位がアフリカで161立方キロメートル、5位が南米で152立方キロメートル、6位がオーストラリア・オセアニアで16立方キロメートルとなっている。このデータから、約6割がアジアで使われていることがわかる。(※3)
一人当たりの水使用量を多い順に見てみると、1位が北米、2位がオーストラリア・オセアニア、3位がヨーロッパ、4位がアジア、5位が南米、6位がアフリカであった。1位の北米の使用用途は、農業用が1,897リットル、工業用水が1,602リットル、生活用が428リットルで、ほかの地域にくらべていずれの用途も多い。(※3)
生活用水の用途別水使用量を見ると、日本では、風呂・シャワーが90リットルでもっとも多かった。次いでキッチンおよびその他が51リットル、トイレが49リットルと続く。
オーストラリアやアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ市で多かったのが、庭の水まきだ。オーストラリアでは82リットル、サンディエゴ市では210リットル使っており、この数値は風呂・シャワーよりも多い。(※7)
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水使用量が多い国には、共通した特徴や傾向がある。
人口が多い中国やインド、アメリカでは、飲料水、生活用水、工業用水の需要が高くなり、水使用量が増える。また都市化が進めば、都市部での水の使用量が急増する傾向がある。ただしこういった人口が多い国は、水使用量を一人当たりで換算すると他国より少ない場合がある。
世界における農業用水の使用量は年間約24,200億立方メートルで、世界の水使用量全体の約7割を占めている。世界各地域の用途別水使用量を見ても、ヨーロッパを除くどの地域でも農業用水が多い。
なかでもアジアとアフリカは、農業用水の割合が約8割となっている。アジアとアフリカの農業用水の使用量が多い理由は、灌漑を利用した作物を栽培しているからだ。灌漑は多くの水が必要となるため、おのずと水使用量が多くなる。(※8)
世界における工業用水の使用量は年間約7,000億立方メートルで、世界の水使用量全体の約2割を占めている。世界各地域の用途別水使用量を見ると、ヨーロッパと北米は工業用水の割合が4割を超えている。(※8)
ヨーロッパと北米で工業用水の使用量が多い理由に、重工業、製造業、エネルギー産業(火力発電)が発達していることが挙げられる。これらの産業では、製造過程、冷却、洗浄などのために大量の水を使う。
中東や北アフリカといった乾燥した気候や少雨地域では、灌漑が農業生産の維持に必要であるため水の使用量が多くなる傾向がある。
水資源の管理が十分に行われていない国では、水の浪費や非効率な使用が多く見られる。たとえば灌漑システムが古い、水のリサイクルや再利用が進んでいないといった場合、水使用量が多くなる傾向がある。
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世界的に水の枯渇が問題視されているなか、各国で行われている水使用量削減のための取り組みを紹介する。
2002年に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」では、国際目標のひとつとして、各国は2005年までに、統合水資源管理(IWRM:Integrated Water Resources Management)計画および水利用効率化計画を策定すること、という目標の策定が合意に至った。2012年に国連水関連機関調整委員会が公開したデータでは、各国の策定状況は約7割となっており、計画未策定は約3割となっている。(※9)
インドでは、近年の降水量の減少、急激な都市化、人口増加などにより水不足が問題となっている。用途別の水使用量では農業用が約8割を占めており、灌漑普及率は34.5%という状況だ。農家の多くが地下水を使用しているが、耕作量の増加に伴って水の使用量が増え、地下水の過剰採取につながっている。さらに水の利用効率の悪さも、過度な水利用の原因となっていると指摘される。敷設された配水管の老朽化による破損などで、給水源からユーザーに届くまでの漏水率が約40%に上るとも言われている。
この状況を受けインド政府は、水資源の開発や規制に向けた政策やプログラムの策定などを所管する「ジャル・シャクティ省」を設立。水不足解消や、灌漑普及率向上に向け取り組んでいる。(※10)
中国では、高度経済成長に伴い工業用水の需要が高まっている。しかし水不足の問題に発展しており、対策が必要だ。そこで中国政府は「工業用水の効率向上行動計画に関する通知」を各省や自治区に発布。工業用水資源の節約・集約・循環利用を実現することを目標に設定し、節水のベンチマークを定め、雨水や海水などの工業利用拡大を進めている。(※11)
アメリカ・サンディエゴ市では、少ない水を最大限に活用するプロジェクト「ピュア・ウォーター・サンディエゴ」を進めている。このプロジェクトは、家庭や企業から出る廃水をリサイクルする試みだ。2035年までに同市の水の40%以上を地域でまかなえるようにすることを目標としている。(※12)
イスラエルでは、都市の廃水の約86%を処理し農業用水に再利用している。また海水淡水化を行い、安全な飲料水を生産している。(※13)
シンガポールは豊富な降雨量に着目し、雨水を浄化処理して再利用している。この水は、生活用水の大部分に充てられている。(※14)
日本の工業用水の使用量は、1965年から2000年までの間に約3倍に増加した。しかし回収利用が進展したため、新たに取水する淡水補給量は1973年を境に減少している。2000年以降、回収率は約80%で推移している。(※15)
日本の生活用水は、ほぼ横ばい、または減少傾向にある。その要因となっているのが節水型機器の普及だ。国土交通省水資源部が平成20年に実施した、石狩川、利根川、筑後川の3つの流域における将来の水需要予測の試算の試算条件には、トイレ・浴室・洗濯機等における節水型機器により、通常型と比べ約 40%の水使用量の減少が見込まれるとある。(※16)
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水使用量削減は、私たち個人でも取り組める。次のことを意識して生活しよう。
シャワーを3分間流しっぱなしにすると、36リットルもの水を使うことになる。(※17)
つい流しっぱなしにしがちだが、頭や体を洗っているときなどには止める習慣をつけるようにしよう。また、節水機能付きのシャワーヘッドを使うのも有効だ。
節水型の家電製品を使用するのも、水使用量削減に効果がある。洗濯機や食洗機などを購入するときには、節水機能があるもの選ぼう。
一般的な大きさのバスタブにお湯を溜めると約180リットルの量になる。(※17)お風呂に入ったあとは、残り湯を洗濯や掃除に再利用しよう。
水使用量削減に取り組む企業の商品を購入することでも、水使用量削減に貢献できる。そういった企業の商品を積極的に選ぶようにしよう。
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人がアクセスできる地表水の割合はわずか0.4%しかない。しかし私たちが生きていくうえで、水は必要不可欠だ。限りある資源だからこそ、水を大切に使い、使用量を減らしていくことが重要だ。そのためには、節水や水の再利用など、水使用量削減のためにできることに取り組んでいこう。
※1 第4章 水の星地球-美しい水を将来へ-|環境省
※2 第4章水の星地球ー美しい水を将来へー|環境省
※3 世界の水資源と農業用水を巡る課題の解決に向けて|農林水産省
※4 世界の水使用量 国別ランキング・推移 - GLOBAL NOTE
※5 インド|国土交通省
※6 中国の水事情|自治体国際化協会
※7 生活用水使用量の調査結果|水道技術研究センター
※8 水資源に関する世界の現状、日本の現状|国土交通省
※9 水資源に関する国際的な取組み|国土交通省
※10 第2期モディ政権、水専門の省庁を設立(インド)|JETRO
※11 中国、工業用水の節水に努力傾注|日本エピア
※12 あらゆる生活排水を「完全に再利用」する計画が、水不足の米国で動き始めた|WIRED
※13 イスラエルの廃水処理:海水淡水化と廃水の再利用|SUNRYSEMAG
※14 水源のないシンガポール、雨水還元システムで世界トップ目指す|AFP
※15 水資源の利用状況|国土交通省
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