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水不足対策として注目されるウォーターレス。水資源が豊富な日本では実感しにくいが、水資源の枯渇問題はすでに世界が認識する重大なファクトだ。アパレル業界などはウォーターレスにフォーカスし、数々の施策を重ねている。ウォーターレスの考え方や注目される背景、取り組むブランドなどを解説する。
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ウォーターレスはその言葉からおそらく多くの人がイメージするように、使用する水量を減らす考えかたである。水を一切使わない生活は難しいが、無駄遣いであると判断した分のカットは可能だろう。
「水ありき」の美容業界・ファッション業界ではウォーターレスを意識し、製品の使用方法や製造工程における変革を取り入れ始めた。「ウォーターレスビューティー」という呼称も生まれている。
ウォーターレスビューティーは変革がもたらした新しいトレンドだ。具体的なアクションとしては「原材料の水分」「製造工程で使用する水分」「使用時にユーザーが必要とする水分」、この3つの減量が挙げられる。
世界の水資源を守りながら美容やファッションを楽しめる。サステナブルを意識するユーザーにとっても一石二鳥のトレンドといえるだろう。
ウォーターレスが注目を浴びる背景には、前述の通り世界的な水資源の枯渇問題がある。
2015年には29億人以上が水不足に直面したと言われている。さらにOECD(経済協力開発機構)によると、2050年には需要量に対して世界人口の40%が深刻な水不足に見舞われる可能性が示唆されているのである。(※1) JICAではそれが2030年であるという予測もあり、いずれにせよ、世界の水資源が逼迫している現状であることに変わりない。(※2)
水資源へのアクセスが比較的容易である日本では想像しにくいかもしれない。しかし世界の広い地域で水不足が起きているのは紛れもない事実である。人口増加、気候変動、水紛争など原因はさまざまだが、いずれも目を背けることは難しい。
水資源の枯渇問題はSDGsのゴール6「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」に深く関わる。ゴール6のターゲット4には「水利用の効率化」「水不足に悩む人々を大幅に減らす」が挙げられている。
ウォーターレス、ウォーターレスビューティーのコンセプトは、まさにSDGsにマッチする。人々の意識や企業の方針がサステナブルに向けられる昨今、ライフスタイルに密着する美容・ファッションにおいて、ウォーターレスがフォーカスされるのは歓迎されるべき潮流だろう。
従来の美容業界、ファッション業界では、使用時や製造時に多量の水が必要とされるケースが少なくない。国際連合広報センターによれば、ファッション業界は毎年、500万人の生存を可能にする9,300億立法メートルの水を使用し、業界は全世界の廃水の20%を作り出している。(※3)
そこでウォーターレスビューティーが強い味方になる。たとえば原料に水を豊富に使っていたシャンプーを固形石けんに変えるのも効果的だ。ドライシャンプーなら洗い流す水も不要になる。デニムを洗う頻度を減らすだけでも大きな節水効果に結び付く。
水分が少なければ製品の質が落ちるのでは?と心配する必要はない。ウォーターレスにフォーカスした企業の努力は、品質を保ち続けたままウォーターレスビューティーを実現しているのだ。
老舗のデニムブランド・リーバイスでは、2011年に20種類以上もの「WATER<Less™製法」を確立した。製造工程における水量を大幅に減らし、これまでに30億リットルもの水の節約に成功している。さらに50億リットルの水再利用に取り組む。
2021年にローンチした米国のPlusは、サステナブルにフォーカスした製品を取り扱い、水分を含まないボディシートをリリースした。従来のボディーソープよりも製造過程で38%の水の減量が可能である。
P&Gは2019年、南アフリカのケープタウンで独占販売されるヘアケアブランド「ウォーターレス(WATERL<SS)」をローンチした。ドライシャンプーやドライコンディショナーなど、使用時に水を必要としない製品が主軸である。当ブランドにより500億リットルの水を地域に還元したとのことだ。
地球の水資源不足は深刻だ。前述したように2030年から2050年には世界人口の40%以上が水不足に脅かされるという試算もあり、より強く対策を意識するタイミングを迎えているといえるだろう。
水不足の解消はSDGsのゴールにも設定されている。SDGsへの理解が広がる昨今、水を大量に利用しがちな美容業界やファッション業界から続々と対策や取り組みがリリースされるのは心強いことだ。
企業の努力によってウォーターレス、そしてウォーターレスビューティーの意識が浸透し、環境に配慮した新しいトレンドとして受け入れられている。ことに水不足問題に悩む北アメリカやラテンアメリカ、ヨーロッパ、南アジアでは、今後の市場の広がりが期待されている状況だ。
水不足を実感しにくい地域に住んでいても、使っているコスメや毎日のワードローブのセレクトにウォーターレスをほんの少し取り入れるだけで、水資源の問題と対策にアクセスできる。今後も広がる企業のウォーターレスビューティーへの参入をチェックし、ベターなセレクトをしてみるのもエシカルなアクションではないだろうか。
※1 OECD Environmental Outlook to 2050: The Consequences of Inaction - Key Facts and Figures|OECD
※2 ゴール 6 の達成に向けた JICA の取り組み方針(1ページ目)|JICA
※3 国連、ファッションの流行を追うことの環境コストを「見える化」する活動を開始|国際連合広報センター
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