オーストラリア発のエシカルファッションアプリ「Good On You」を参考に、エシカル初心者の方に知っておいてほしい3つの「洋服選びの基準」を紹介。日本で一般的となっている3Rやリサイクル素材の使用有無だけでは足りず、より細分化した基準でブランドを判断することが求められている。
小嶋正太郎
農家 / 編集者
元ELEMINIST副編集長。2021年7月に東京から瀬戸内海に浮かぶ因島へと拠点を移す。高齢化で運営困難になった八朔・安政柑農園を事業継承し、農家として活動中。
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今年も大掃除のシーズンがやってきた。身の回りのモノを整理整頓して、フレッシュな気持ちで新年を迎えようとしている人も少なくないはずだ。
切り替えるという意味では、大掃除はこれまでの生活をアップデートして、エシカル・サステナブルライフを送り始めるのに絶好の機会といえるだろう。そんな後押しをするべく、絶対に知っておいてほしい「洋服選びの基準」を紹介したい。
インプットするだけで、クローゼットに残しておく洋服を判断する基準になるし、洋服を購入する機会にも役立つに違いない。
「Good On You」のトップ画面
「洋服選びの基準」を紹介するにあたり、参考にしたいのはオーストラリア発のアプリ「Good On You」だ。
これはオーストラリアの慈善団体「Ethical Consumers Australia」が2015年11月に提供し始めたサービスで、1000を越えるブランドがどれくらいエシカルな生産をおこなっているのか?を気軽に調べられるようになっている。「Great(非常にいい)」と「Good(いい)」、「It’s a start(スタート地点)」、「Not Good Enough(満たない)」、「We Avoid(避けるべき)」という5段階で、「Labour(労働)」と「Environment(環境)」、「Animal(動物)」の3つの項目に関する評価を提示してくれるのだ。
2019年には、似たようなサービスを提供していたオランダ発の「Rank a Brand」と協力することを発表。そこからブランドのエシカル度を測定するアプリとして、ヨーロッパや北米などでエシカル・サステナブルライフを送る人たちから、さらに信頼されるようになった。
ちなみに、女優エマ・ワトソンはオフィシャルサポートメンバーのひとりだ。「Good On You」が彼女の着る洋服を評価することで、社会全体のサステナビリティの推進をバックアップ。また、彼女はアプリの普及に協力している。
エシカルファッションを実践するにあたり多くの人から信頼を置かれている点を考えて、「Good On You」から「洋服選びの基準」を抽出し、以下の通り、まとめてみた。
Photo by Rio Lecatompessy on Unsplash
すでにエシカル・サステナブルライフを送っている人は、洋服の製造過程に関わる労働環境に目を向けて、“必要”と“不要”を判断している。
サプライチェーンが透明化されていればOKで、児童労働や労働搾取がおこなわれている可能性があればNGといった具合だ。他にも、労働賃金や男女格差、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策など、多くの項目を気にしている人も多いはずだ。
これらを調べるのはハードルが高いかもしれないが、簡単に自分で判断できる方法もある。たとえば、「Fairtrade International(国際フェアトレードラベル機構)」から認証を受けているかどうか、だ。
すぐにGoogle検索で見つけられるので、誰でも情報を得られるだろう。日本で「コットン製品」に関して国際フェアトレード基準を受けているのは、「チチカカ」や「福助」、「Hotman Style of living」などとなっている。
Photo by Alexander Schimmeck on Unsplash
最近になって多くの企業やブランドが意識し始めているので、この項目については調べることが簡単になっているといってもいいかもしれない。
とはいえ、日本で取り上げられるのは、だいたいがリサイクル素材やオーガニック素材の使用有無のみ。ここから、もう一歩進んでみてはどうだろう?
「Good On You」では、染色に関して化学物質を使っているか、害のある水を排出しているか、カーボンフットプリントを減らしているか、地産地消をしているか……さまざまな観点で判断している。
日本発のブランド「EQUALAND」はジュースを絞ったあとの食材をそのまま染料にしていて、先進的な取り組みをしているといえるだろう。「エシカルファッション ブランド」と検索するだけでも、たくさんの情報を得られる。自分の持っているブランドとの違いを調べてみてほしい。
Photo by m0851 on Unsplash
これも調べるのが簡単になってきた項目のひとつだ。ヴィーガンであることは最高の評価につながりやすいのだが、毛皮や革、羽毛を使っていないだけでも多くのブランドより優れているといっていいだろう。
フェイクレザーの使用もまた、大切な要素だ。レザーの製造は動物搾取に関係していて、動物愛護やアニマルウェルフェアの観点からパイナップルの葉やキノコの根である菌糸体などを使った代替品を開発する動きが出てきている。
動物愛護団体「PETA」や慈善事業団体「Vegan Society」などから認証を受けているかどうかも、英語とはなってしまうが可能であればチェックしてみよう。
「Good On You」で「Burberry」を調べた結果
3つの項目を「Good On You」から抽出して紹介してみたが、自分で調べる時間がないという人はこのアプリに頼るのが一番いいかもしれない。
アプリを使うにはブランド名を入れるだけでOK。試しに「Burberry(バーバリー)」と入れてみたら……「It’s a start」という評価。バーバリーは、42億円相当の売れ残り商品を大量廃棄していたことが2018年に取り上げられ、批判を浴びた。それを省みて、新しい道を歩み始めているということだ。
「Good On You」の「Burberry」に対する評価
細かく見てみると「Labour」の項目は「Good」。労働者の健康管理や安全管理は評価されているが、賃金などに関しては改善できる余地がありそうだ。
「Environment」の項目も同じく「Good」の評価。サプライチェーンで発生する二酸化炭素排出量や排水などの削減に取り組んでいるが、使用している素材がまだまだエコではないという。
「Animal」の項目は「Not Good Enough」。毛皮やアンゴラは使っていないものの、動物性素材の不使用という訳ではないのが主な理由だ。
とはいえ、最近バーバリーは、イギリスの学生に素材の切れ端を寄付するプログラム「ReBurberry Fabric」をローンチしている。若手デザイナーの育成に力を入れるだけでなく、地球にも配慮していることがうかがえるだろう。
日本では一般的に、3Rやリサイクル素材の使用有無などがエシカルとサステナブルの評価基準になっている。すでに感じているかもしれないが、それだけでは足りないのだ。
ヨーロッパでは細分化された基準で洋服を製造しているし、消費者もその目線で買い物をしている。この記事で紹介したことをすべて調べるのは難しいが、まずは覚えている範囲で身の回りのモノを評価してみてもいいかもしれない。いままで気にしていなかったことを気にするだけでも、新しい体験を得られるはずだ。
ぜひ、大掃除という機会に新しい洋服を選ぶ基準を活用して、エシカル・サステナブルライフを実現する一歩目を踏み出してほしい。
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