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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、国内のひきこもり状態の人口は推計146万人に上った。この記事ではひきこもりの意味や定義についてあらためて解説し、ひきこもりとなる要因やリスク、支援方法や支援サービスについてみていく。
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厚生労働省が定義した「ひきこもりの評価・支援に対するガイドライン」によると、ひきこもりとは「さまざまな要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。
なお、ひきこもりは原則として、統合失調症の陽性あるいは陰性症状にもとづくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とする。しかし実際には確定診断がなされる前の統合失調症患者が含まれている可能性が低くないことに留意すべきである、としている。(※1)
ひきこもりの定義の内訳は「趣味の用事のときだけ外出する」「近所のコンビニ等には出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からはほとんど出ない」のいずれかを選択した者で、現在の状態から6か月以上(病気等を理由としない)を「広義のひきこもり」としている。
ただし、上記の定義は実際にひきこもり状態にない者が含まれている可能性や、ひきこもり状態にある者が除かれている場合もある。(※2)
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ここでは、日本におけるひきこもりの現状について解説する。
「ひきこもり」が社会問題になった1980年代から増加し、ひきこもりの人口は平成31年(2019年)の調査で推計115万人(15~64歳、内15~39歳は平成28年発表)に達した。そして2022年に行った内閣府のアンケート調査では、15歳から64歳までの年齢層の2%余りにあたる推計146万人に上った。(※3)
4年間で30万人も増加したことになるが、この背景には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響がある。実際に、ひきこもり状態となったきっかけとしておよそ5人に1人が「新型コロナウイルスの流行」をあげた。(※3)
年齢層別に見ると、15歳から39歳の子ども・若者層では、7年前に公表された調査の1.57%から2.05%に、40歳から64歳の中高年層では、4年前に公表された調査の1.45%から2.02%に増えた。(※3)全体の割合としては前者と後者、同程度となっている。また、年齢別の割合は前者の子ども・若者層では25〜29歳が23.6%で最多、後者の中高年層では60〜64歳が36.0%で最多だ。(※4)
また、平成 30 年度に内閣府が行った調査(内閣府政策統括官(共生社会政策担当)「生活 状況に関する調査報告書」(平成 31 年3月))によると、中高年はひきこもり状態になってから7年以上経過している割合が約半分を占めており、長期的な傾向にある。(※5)
ひきこもりになってからの期間は、年代別でみると15〜39歳が「6ヶ月~1年未満」と「7年以上」で同率の21.5%、40~69歳が「7年以上」で26.7%と最多であった。このように、40~69歳の年齢層はひきこもり期間が7年以上と若年層より多い結果となっている。(※6)
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ここでは、ひきこもりのきっかけと要因について解説する。
1つ目のひきこもりのきっかけとして、心理的要因が挙げられる。ストレス下で我慢して頑張り続けた結果、プツンと糸が切れたように大きな挫折感や喪失感、疲労感を感じることがある。それにより、ひきこもり状態となり、気力の喪失から想定以上に社会復帰が遅れてしまうこともあるのだ。(※7)
ひきこもりになったきっかけとして上位に挙げられる「就職活動がうまくいかなかった」や「受験に失敗した(中学・高校)」などが該当するだろう。(※8)
2つ目のひきこもりのきっかけとして、社会的要因が挙げられる。職場や学校での人間関係や居心地の悪さが原因でひきこもりになる割合はもっとも多い。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で外出できずに人と接する機会が減ったことで、学校や新しい環境にうまく馴染めずひきこもりになった割合も一定数存在している。
「職場になじめなかった」「人間関係がうまくいかなかった」「大学になじめなかった」がひきこもりになったきっかけに挙げられている。(※8)
病気や障がいなどの身体的、生物学的な側面がひきこもりのきっかけとなっているケースもある。たとえば、うつ病や強迫性障害、パニック障害などの精神疾患にかかっている人、軽度の知的障害や学習障害、高機能広汎性発達障害などがある人だ。そういった個の特性が周囲に理解されず、そのために生じる周囲との摩擦が本人のストレスになることが要因となる。(※7)
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ここではひきこもりの影響と、起こり得るリスクについて解説する。
ひきこもりの精神的なリスクとして、不眠、抑うつ症状、対人恐怖症、強迫症、摂食障害、家庭内暴力などが挙げられる。このように、ひきこもりの期間が長引くことで二次的な精神症状や問題行動を引き起こすおそれがあるとされている。(※9)
ひきこもりの子どもを抱える家庭は、経済的リスクを抱えている。若者のひきこもりが長期化し、中年期の子どもを高齢の親が養うといった状況も増えている。このように、仮に親が仕事を辞める・介護状態になる・死別するなどして収入源がなくなった場合、生活費をどのようにして工面するかといったリスクが考えられる。(※10)
ひきこもりからの自立が困難とされる理由に、不規則な生活リズムが挙げられる。たとえば、家にひきこもると外部の人と会わなくなるため、夜更かしをして昼夜逆転の生活を続けることが多い。したがって、社会復帰をしようにも生活リズムを戻すのが難しいため、自立が困難といわれている。(※11)
そのほか、学校での学習が途中で止まってしまっていることや就業経験が少ないもしくはないことに対し、「知識や能力に自信がない」と思ってしまっていることも、自立を困難にしている。人間関係のトラブルや失敗、職場になじめなかったというひきこもりになったきっかけも影響し、仕事や社会への復帰は想像以上に困難だ。
40代以上のひきこもりへの支援が足りていない点が問題視されている。国内ではひきこもりの長期高齢化が進んでいるのだ。事実、40代以上への就労支援や高齢者サポートが補いきれておらず、国内で幅広い年齢層による社会的孤立が広がっている。
ひきこもりの長期化により社会的孤立状態が続くと、問題自体を表に出しづらくなり、仮にサポートに入った場合でも短期間で家族や本人が望むような状態へと導くのは難しいといわれている。このように、家族や本人の疲弊により時間とともに相談や支援は困難になってくる点も、社会的な孤立のリスクといえるだろう。(※12)
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身近な人がひきこもりになった場合、どのように対応すればいいのか。ここでは対処方法について解説する。
まずは理解と共感を示すことだ。そして、安心して話せる雰囲気を意識してコミュニケーションすることを心がける。また無理に外出させようとせず、本人のペースを尊重してあげることが大切だ。
ひきこもりの要因としてうつ病やパニック障害などの精神疾患が関わっているケースも少なくない。(※13)心療内科や精神科へ通院し、まずは、専門家から適切な対処法を学ぶことも大切だ。本人が自ら病院へ行くという行為が困難な状況にある場合には、予約や通院のサポートをしてあげよう。
保健・医療機関などで相談をすすめていくなかで、本人から社会復帰に関するニーズが明確に表れてきたときには、次は社会との接点を増やす援助を。本人が自発的に活動に参加できるように、さまざまな選択肢を用意していくことが重要だ。日常生活における本人の役割行動や地域のイベントに参加することなどが役立つ場合もある。(※14)
・家事・家業などの手伝い
・年中行事・法事などの参加
・青年会・地域清掃などの活動
・ボランティア活動
・フリースクール、通信教育・アルバイト、福祉的就労
・自動車運転免許、各種資格の取得など
本人のニーズに応じて設定し、自然な形で参加できる機会を提供していくように心がける。あくまでも本人の自発性を尊重した援助を心がけ、決して無理強いはしない。
専門家のサポートを利用するのもおすすめだ。本人にカウンセリングを受けてもらい、アドバイスや障害に対しての対処を学んでもらうといいだろう。
そのほか、ひきこもり支援を専門とするNPO団体などへの参加をすすめるのもいい。そこで同じような経験を持つ人たちと話すことで、互いに支えあう機会が得られるからだ。
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ここでは、ひきこもり支援サービスについて紹介する。
「ひきこもり地域支援センター」とは、 専門家である支援コーディネーターが、電話や出張所などで相談支援を行う場所である。同じひきこもりの悩みを持つ人が集まれる場所の提供や、ひきこもりの子どもがいる家族への相談支援なども行っている。(※15)
「地域若者サポートステーション」とは、厚生労働省委託の支援機関である。通称「サポステ」では、働くことで悩みを抱える人に無料で就労支援を行っている。15〜49歳までの就学中でない人や仕事をしていない人を対象としている。
本人または家族だけで解決するのが難しい「働き出す力」を引き出すことを目的とした機関で、職場が定着するまでをしっかりとバックアップしてくれる。(※16)
「特定非営利活動法人 KHJ全国ひきこもり家族会連合会」では、相談会や研修会などで家族会の取り組みを支援している。また、支援機関・行政・家族・一般の方に向けて、全国大会や講演会、学習会やセミナーなどでひきこもりに対して広く理解する場を設けている。(※17)
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ひきこもりは何がきっかけで、誰が、いつ、なるかわからない。一度ひきこもりになると社会復帰が困難なことも事実だ。自分が、もしくは身近な人がひきこもりになったら。その視点で社会制度や支援を見ることで、さまざまな課題や問題に気が付くことができる。一度立ち止まってしまっても、誰もがもう一度歩き始めることができる社会、そして多様な価値観と生き方を受け入れられる社会になるために、これから私たちにできることを考えていきたい。
※1 引きこもりの評価・支援に対するガイドライン|厚生労働省
※2 引きこもりの定義など|厚生労働省
※3 「ひきこもり」推計146万人 主な理由“コロナ流行”内閣府調査|NHK
※4 図表2-2-1 ひきこもり状態の人(年齢別)|厚生労働省
※5 令和4年度 総合評価書 分野横断的に実施している政策の評価について |厚生労働省
※6 図表2ー2ー2 ひきこもり状態になってからの期間(年齢別)|厚生労働省
※7 ひきこもりの実態と社会的背景・要因の理解|厚生労働省
※8 引きこもりの原因は親のせい?育て方や特徴を知って新たにスタートしよう|認定NPO法人ニュースタート事務局
※9 50代ひきこもり 悪徳業者も…危険な「専門家」丸投げ|日本経済新聞
※10 少子高齢化、ひきこもり…その先にある大きなリスク「8050問題」とは?|阪市市民活動総合ポータルサイト
※11 「引きこもり」の実態に関する調査報告書⑨|NPO法人全国引きこもりKHJ親の会
※12 平成29年度「潜在化する社会的孤立問題(長期化したひきこもり・ニート等)へのフォーマル・インフォーマル支援を通した『発見・介入・見守り』に関する調査・研究事業」特定非営利活動法人 KHJ全国ひきこもり家族会連合会
※13 Ⅰ章 「ひきこもり」の概念|厚生労働省
※14 3節 さまざまな支援プログラムの可能性|厚生労働省
※15 全国の相談窓口はこちら|厚生労働省
※16 サポステ 地域若者サポートステーション|サポステ 地域若者サポートステーション
※17 活動内容|特定非営利活動法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会
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