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ピアサポートは病気や障がい、育児、介護などのさまざまな分野で、同じ立場や経験をした人同士がお互いを支え合う活動だ。この記事ではピアサポートの概要や、ピアサポート活動をする方法などについて解説する。
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ピアサポートのピア(peer)は英語で「年齢や地位、能力などが同等の人、同僚や仲間」をさす。サポート(support)は「支える、支援する、援護する」などの意味を持つ。それらを合わせたピアサポート(peer support)は、「同じ立場や経験を持つ人同士による支え合い」を表す。
ピアサポートという言葉の起源は諸説ある。1909年にニューヨーク州で非行防止を目的として始まったとされる説や、 1935年にアメリカでアルコール依存の問題を当事者同士で解決しようと始まった自助グループ「AA(アルカホリック・アノニマス)」が始まりとする説などがある。日本でも1990年代以降にこの言葉が使われ始め、現在ではさまざまな形のピアサポート活動が行われている。(※1)
ピアサポートとは、同じ立場や経験など共通項のある人同士の支え合いを表す言葉である。当事者同士が体験談や気持ちを共有することで、専門職による支援では得られない安心感や自己肯定感を得られるとされ、身体に障害を持つ人の自立生活運動や知的障害、精神障害の分野でも定着しつつある。(※2)
ピアサポートの定義は幅広い。上記のような自立生活運動のほかにも、例えば同じ職場の同僚、学生同士といった関係性を持つ人がお互いの経験や意見を語り合い、わかち合うこともピアサポートのひとつの形である。
ピアサポートは、具体的にどのような分野で行われているのだろうか。
保健分野ではアルコール依存症・ギャンブル依存症・薬物依存症など、同じ依存症を経験した人同士によるピアサポートが例に挙げられる。また子育て中・妊娠中の悩みや不安を共有する場としても活用されている。障がい福祉の分野では、精神障がいや身体障がい、知的障がいなどの領域でリハビリテーションの一環として行われている。
医療分野では、ガンや慢性病など同じ病気を持つ患者同士によるピアサポートのほか、患者の家族や医療事故を経験した医師・看護師などの医療従事者を対象としたものも定着しつつある。
さらに教育分野でも、学生や生徒、教職員に対するサポートを目的としたピアサポートが活用されている。またLGBTQの分野においても、メンタルヘルスの問題や寂しさ・孤独感を和らげることを目的としたピアサポートが広がりを見せている。
セルフヘルプのセルフ(self)は英語で「自分、自己、自身」、ヘルプ(help)は「助け、助力、援助、支援」といった意味を持つ。セルフヘルプ(self-help)は「自助」と「相互援助」の両方の性質を併せ持つ活動のことを指す。
障がいやさまざまな課題を抱えた当事者同士がセルフヘルプ(自助)グループをつくって活動を行うもので、欧米で徐々に広がり、1960年代頃からは日本にも浸透し始め発展を続けてきた。
専門職からの支援だけでなく、当事者の力や仲間同士の助け合いによって課題を乗り越えるという観点から、ピアサポートとの共通点が多いのが特徴だ。ピアサポートは当事者による支え合いを指し、セルフヘルプはその主な実践の場といえる。(※1)
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同じ立場や経験を持つ者同士が互いに支え合うことによって、専門職による支援とは違ったサポートが可能になるピアサポート。ここではその特徴とメリットについて詳しくみていく。
困難な状況に陥ったときや孤独や不安を感じたとき、同じ境遇や経験をした仲間の存在は精神的な支えになり得る。当事者にしかわからない悩みや生きづらさを共有する場があることで、心が軽くなったり前向きな気持ちを取り戻したりできる。
一般的な情報はある程度インターネットなどで得られるが、当事者や経験者の実体験に基づいた話は有益だ。実際に経験した者でなければ得られない知識やアドバイスなどの情報を共有することで、病気への不安や悩みを解消する手助けとなる。
病気や障がいに伴う不安や苦悩は、当事者同士でないとわかりえない部分がある。同じ状況にいる人や経験者と悩みを共有したり、努力する姿を目にしたりすることで、希望や目標を持てるようになるのもメリットのひとつだ。また困難を抱えた人が支え合える仲間をつくることで、孤独にならずに過ごせる地域社会づくりにも役立つ。
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ピアサポーターとは、障がいや病気の経験を持つ人がその経験を活かして、同じ状況や困難にぶつかっている人の相談相手となったりサポートしたりする人のことを指す。
ピアサポーターになるための特別な資格はなく、誰でもピアサポーターになれる。また自治体やNPOなどが主催する、ピアサポーターの研修制度もある。ここではピアサポーターになるための方法について紹介する。
病気や障がいなどを持つ人は、ふだんの生活の中で「支えられる側」として過ごす機会が多い。しかしピアサポーターとしての活動では「支えられる側」だけでなく「支える側」にも立つことになる。
自分が経験した辛さや悩みが、同じ境遇にいる人にとって心の支えや安心につながっていく。自分自身の経験を振り返り、当時の状況や気持ちの変化や困ったことなどを相手に伝わりやすいようにまとめておけるといいだろう。
2021年度からピアサポート体制加算が新設され、障害福祉サービスを提供する事業所でピアサポーターを配置すると高評価が得られるようになった。(※3)
そのため、ピアサポーターの配置を希望する活動団体も増えている。さまざまな領域の団体があるため、自分の経験を活かせる分野や興味のあるテーマに合った団体を探してみよう。
ピアサポーターになるために特別な資格は必要ないが、何から始めたらいいかわからない場合は、自治体やNPO、公益財団法人などが主催する研修講座に参加してみるのもおすすめだ。近くの都道府県や市町村のホームページなどで確認してみよう。
困難や生きづらさを抱えた人がお互いに支え合うピアサポートは、地域社会の中で生きていくうえで大切な場所になり得る。ここでは実際にピアサポート活動を行っている団体について紹介する。
中高生の居場所づくりを目的とし、地域の協力を得て誕生した「渋谷ファンイン」が設立した「渋谷ファンイン・ピアサポート委員会」。不登校の子どもなどが自由に過ごせるスペースを用意し、学習したり、同世代のピアサポーターと会話したりして過ごすことができる。また親同士の交流会や学習会も開催されており、子育て中の悩みや不安に寄り添う活動も行われている。
きょうと子育てピアサポートセンターでは、地域の子育て支援団体や保育所、幼稚園などと連携し、「子どもたちを一緒に育てる地域の仲間」づくりを推進している。妊娠・出産・不妊に関する電話で相談のほか、希望すれば面会して相談することもできる。また少子高齢化と出産年齢の高齢化等により、同時期に「育児」と「介護」に直面する「ダブルケアラー」に対してのピアサポーターの派遣も実施されている。
レター・ポスト・フレンド相談ネットワークでは、似たようなひきこもり経験を持つ当事者、経験者がお互いに支え合うピアサポート活動を行っている。ひきこもりなどの経験者が主体となってNPO活動の企画運営を担い、他職種と連携しながら電話相談や手紙・電子メールによる相談、出張相談などを行う。またひきこもりの当事者・当事者の家族向けの交流会・イベントも開催され、情報交換やそれぞれが有するひきこもり経験の共有の場を提供している。
多くの女性特有のがんサバイバーは、周囲に病気を伏せて治療と仕事、暮らしを両立させている。そんな闘病生活の中で同じ病気に直面する仲間とつながり、支え合える場所づくりを目指してピアリング事業がスタートした。SNS コミュニティでオンラインコミュニケーションのサポートが受けられるほか、女性がんサバイバー向けの勉強会・講習会・交流会などを開催している。
認知症の当事者と家族を支える「家族の会」は全国に支部を持ち、さまざまな事業を実施している。活動のひとつである「つどい」は、参加することで「自分は一人じゃない」「仲間がいる」と知ることができる。認知症患者の家族を対象とした「介護家族のつどい」、認知症の当事者が集まって生活の様子や悩みを話し合う「本人・若年のつどい」、介護や家事などに不慣れで抱え込みがちな男性が悩みを共有できる場「男性介護者のつどい」などを実施している。
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病気や困難な問題に直面したとき、孤独感や不安を抱く人は多い。ピアサポートはそんな人に寄り添い、仲間として自分自身も成長できる活動だ。サポートを受けたい方はもちろん、自分の経験を人のために活かしたいという方も、ピアサポート活動を行っている地域の自治体や団体をチェックしてみよう。
※1 ピアサポートの活用を促進するための事業者向けガイドライン|社会福祉法人豊芯会 厚生労働省
※2 ピアサポートの専門性の評価について|厚生労働省
※3 令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要|厚生労働省
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