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昨今、英国でリペアカフェの文化が広がっている。英国全土に約580のリペアカフェが存在し、ボランティアを主体として、トースターやテレビ、おもちゃなど、さまざまなものの修理が行われている。廃棄物や二酸化炭素排出量の削減とともに、新たな雇用の創出も期待されている。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・ライター・キュレーター
ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。編集者・ライター・キュレーターとして活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRE…
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2009年にオランダ・アムステルダムで始まった「Repair Café de Meevaart」にインスパイアを受けて、英国全土でもリペアカフェが文化運動として広がりをみせている。現在、英国には約580のリペアカフェがあるとされ、そこでは失われつつある電化製品の修理技術が受け継がれている。
2021年、欧州の活動家連合「Right to Repair Europe」のキャンペーンによって、冷蔵庫、照明、テレビ、食器洗い機、洗濯機に関する欧州初の「修理する権利」措置が施行された。これにより、電化製品が「一般的に入手可能な」ツールで修理できることが求められ、メーカーが専門家に修理マニュアルと部品を最大10年間提供することが義務付けられた。
最近の法改正では、メーカーが今後の製品にユーザーが交換可能なバッテリーを装備すること、スマートフォンのソフトウェアおよびハードウェアのサポート期間を延長することが求められている。こうした法整備の動きも、英国のリペアカフェ文化の広がりを後押ししているといえるだろう。
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たとえばロンドンにある「セント・マーガレット・ハウス」は、ボランティアが主催するリペアカフェ。1970年代のアナログラジオをはじめ、地元の人々からはトースターやテレビ、電池式のおもちゃなどが修理のために持ち込まれる。
ほかにも女性向けの修理スキルシェア「ロージー・ザ・リスターター」や、電化製品を修繕して寄付する慈善団体「テック・テイクバック」、子どもたちに基本的な電化製品のトラブルシューティングと修理技術を教えるワークショップなどがある。
英国は現在、年間3万6681トンの家庭用電子機器の廃棄物を出している。これはノルウェーに次ぐ世界第2位の多さだという。一方で、現在捨てられたりリサイクルされたりしている年間1300万個の電子機器を修理して再利用することができれば、930トンの二酸化炭素排出量を削減できるとされている。これは自動車約19万9000台の二酸化炭素排出量に匹敵する。
リペアカフェはさらに、雇用創出の可能性も秘めているという。電子機器および電化製品の再利用と修理を促進する「リスターター・プロジェクト」のフィオナ・ディア氏は、「修理業界は2030年までに3万人の雇用を生むでしょう」と語る。「修理カフェやボランティアも必要ですが、同時に将来のためにこれらの仕事に就く人々を訓練する必要があります」
リペアカフェはさらに、人々の居場所づくりという社会的な側面も兼ね備えている。たとえば修理士で元電子技師のスパナ・スペンサー氏によると、自身が暮らす地域では、中年男性が孤独感や精神的な健康問題について話しづらいという。そんななか、「一緒に物を修理して、人の役に立つことができるという連帯感は本当に大きい」と、スペンサー氏が運営するリペアカフェについて語る。
ほかにも自称コンピュータオタクで、ロンドンでスクワッター(不法居住者)だったニック・ガルブレイス氏は、社会的企業「Twisted DNA」に参画。同社では、若い失業者に電気製品や電子機器の修理方法を教え、彼らが修理した商品の再販を行うという。
リペアカフェの興味深い点は、環境問題へのアプローチだけでなく、人々の雇用や居場所づくりなどの社会的な機能も持ち合わせていることだ。こうしたリペアカフェ運動の広まりは、わたしたちの社会生活をより豊かにしてくれるのではないだろうか。
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