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石油や石炭に比べクリーンなエネルギーであるLNGとLPG。日本の家庭では「都市ガス」や「プロパンガス」として馴染みがある。これらのガスはそれぞれどのような特徴があり、共通点や違いは何なのか。LNGとLPGを取り巻く現状と日本と世界の動向を解説する。
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LNGとはLiquefied Natural Gasの略で、日本語では「液化天然ガス」という。その名前からわかるとおり、天然ガスを−162℃まで冷却し液化させたものだ。液化することで、体積が気体のときの約600分の1になる特性をもつ。
LNGはメタンが主成分である。生産地によって若干の違いはあるが、その組成の約9割がメタンで占められる。
LNGは、電力発電と都市ガスに使われている。2021年度の消費動向の割合は、電力用が約57%、都市ガス用が約36%となっている。2014年度には消費量が過去最高になったものの、原子力発電所の再稼働や再エネが普及した結果、電力用は減少している。(※1)
日本で利用するLNGは、ほとんどを輸入に頼っている。LNGの輸入先の上位3位は、オーストラリアが38.3%、マレーシアが13.7%、ロシアが9.5%である。(※1)
イギリスの石油会社であるBPが発表したデータによると、天然ガスの消費量が多い国の上位3位は、アメリカが8267億㎥、ロシアが4746億㎥、中国3787億㎥という結果であった。なお、日本は1036億㎥で7位に位置している。(※2)
LNGには環境面や供給面において、以下のようなメリットがある。
最大のメリットといえるのが、CO2排出量が石炭や石油にくらべて少ないことだ。LNGと石炭を比較すると、CO2排出量は約6割ほど、窒素酸化物の排出量は2~4割ほどに抑えられる。また硫黄酸化物をほとんど排出しないため、環境面において優れている燃料といえるだろう。
LNGの輸入先はオーストラリアやマレーシア、ロシアなどで、石油とは異なり中東への依存率が低いのもメリットである。中東からの輸入に依存していないということは、地政学的リスクが低く、安定的に供給を受けられることを意味する。
またLNGは天然ガスを液化したものであるため、大量に貯蔵、輸送できるのもメリットである。
LNGのデメリットは、コストがかかることだ。日本はLNGを輸入に頼っているため、LNGを輸送するためのコストがどうしてもかかってしまう。またLNGを冷却するコストや、LNG専用船の建造・運用コスト、LNGの貯蔵コストもかかるのが難点だ。
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LPGとはLiquefied Petroleum Gasの略で、日本語では「液化石油ガス」という。これは、気体の石油ガスを圧縮して液化したものである。貯蔵や配送時には容積が小さい液体の状態だが、使用時には気体で消費されるのが特徴だ。
LPGの主成分は、プロパンまたはブタンである。
LPGは、家庭業務用ガスや工業用ガス、化学原料、都市ガス、自動車の燃料などに使われている。2021年度の消費動向の割合は、家庭業務用が約48.6%、工業用が約20.7%、化学原料用15.1%となっている。(※1)
日本で利用するLPGの輸入先の上位3位は、アメリカが66.6%、カナダが12.7%、オーストラリアが9.2%である。(※1)
LPGの需要量が多い国の上位3位は、中国が59,729千トン、アメリカが45,900千トン、インドが27,046千トンという結果であった。なお、日本は15,836千トンで5位に位置づけている。(※3)
LPGの最大のメリットは、利便性が高いことにある。液化させた状態でボンベに詰めることができ、どこにでも持ち運び可能だ。したがって、ガス管を敷く必要がない。
また電力を必要とせず、好きな場所に運んで設備を組み立てて使える。自立稼働できるため、停電時や災害時にすぐに使えるのもメリットといえる。
日本におけるLPGのデメリットは、家庭業務利用においてLNGにくらべて価格が高い点だ。これはLPガスを輸入し、ボンベに詰めてから各家庭に配達しなければならないため、その分価格が高くなる。またLPGには料金設定の規制がなく、ガス会社が料金を自由に設定できることも、価格が高くなる要因といえる。そのほか、ガスボンベの設置スペースが必要となることもデメリットである。
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LNGとLPGの共通点を見ていこう。
LNGもLPGも液化したガスだ。液化することで輸送しやすいという共通点がある。
輸入先は異なるが、どちらも海外から輸入しているエネルギーである。
ほかの化石燃料にくらべると、LNGもLPGもCO2排出量が少ないのも共通点である。
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LNGとLPGの違いはどこにあるのか説明しよう。
LNGとLPGとでは、ガスの重さが違う。空気の重さを1とした場合、LNGは0.6と空気より軽いが、LPGは1.5となり空気より重い。そのためガス漏れが発生した場合、LNG(都市ガス)だと建物の上部に、LPG(プロパンガス)だと下部に溜まる。家庭にガス漏れ報知器を設置する際は、この点に留意した場所に取り付けられる。
両者は液化する温度も異なる。LNGが液化する温度は−162℃まで冷やす必要があるが、LPGが液化する温度は、プロパンで−42℃、ブタンで−0.5℃で、LPGのほうが比較的簡単に液化できる。
供給形態も異なる。LNGは地下にパイプラインを埋設し、使用する場所にガスを供給する。一方のLPGは使う場所にガスボンベを設置し、そこからガスが供給される。
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日本と世界において注視すべきLNGとLPGの動向を紹介する。
世界的に見ると、LNGの消費量は年々増加傾向にある。2009年から2019年の間の年平均は2.9%増加、2019年から2021年にかけての年平均伸び率は1.7%というデータがある。(※1)
消費量が増加傾向にある理由には、石炭や石油などにくらべて天然ガスは環境負荷が低いこと、コンバインドサイクル発電などの技術進歩、競合燃料に対する価格競争力の向上などが考えられている。
世界的にLNGの消費量は増加傾向にあるものの、日本国内の需要は減少が予想されている。
その理由は、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、徹底した省エネや脱炭素エネルギーの導入拡大により、一次エネルギーにおける天然ガスの総需要が減少すると見込まれていることにある。(※4)
世界のLPGの需要量も増加傾向にあり、2019年は約3億2,000万トン強、2018年比2.7%増えている。なかでもアジア太平洋地域は2018年比6.2%増・アフリカ地域は4.8%増となっている。これらの地域で増加している理由は、経済成長が著しいことや、家庭用の燃料として薪や炭ではなくLPガスの利用が進められているためだと考えられる。(※3)
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LNGもLPGも、石油や石炭に比べCO2排出量が少なく、比較的クリーンなエネルギーだ。世界での需要も年々高まっている。脱炭素社会の実現や地球温暖化対策として、もっとも理想とされるのは再生可能エネルギーだが、供給率100%にはまだ至らない。LNGやLPGの需要はしばらく続くことが予想される。
※1 国内エネルギー動向|資源エネルギー庁「令和4年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2023)」
※2 BP Statistical Review of World Energy 2022|BP
※3 LPガスの安定供給|日本LPガス団体協議会
※4 LNG長期契約確保に向けて重要な電力市場の環境整備と課題|エネルギー経済社会研究所
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