まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロス。国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、世界全体の食品ロスは約13億トンにものぼる。そんな食品ロスを減らそうと取り組んでいるのが食品宅配サービス「Oisix」だ。主菜と副菜の2品に使う食材を必要な分だけセットにした「Kit Oisix」では、家庭から出る食品ロスを約3分の1まで削減。フードロス解決型ブランド「Upcycle by Oisix」も好評だ。
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エレミニスト編集部
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日本では「見栄えが悪い」「食感がよくない」といった理由だけで活用されていない食材が少なくない。「Upcycle by Oisix」では、そんな未活用食材に着目。それらに付加価値をつけ、新しい商品にアップグレードさせる「アップサイクル」の輪を広げ、食品ロスを少しでも減らそうと取り組んでいる。
「Upcycle by Oisix」では、業界を巻き込んだ取り組みも行う。例えば、「パンク焼き芋」シリーズ。焼き芋をつくる際、焼成過程で爆発したり、皮が剥けたり、折れたりするものが出てしまう。Oisixでは、日本でさつまいもの取り扱い量が最大となるカルビーかいつかスイートポテト株式会社から、それらの規格外の焼き芋を買い取り、素材本来の良さを活かしながら、さらにおいしくアップサイクルした。(※「パンク焼き芋」シリーズの購入はOisix会員のみ可能)
梅酒でおなじみのチョーヤ梅酒株式会社の未活用だった漬け梅を活用した「梅酒から生まれた しっとりドライフルーツ」も、同じように業界を巻き込んだ事例だ。梅酒に漬けた後の梅は、同社で製品に入れるほか、そのままの形でも販売しているが、製品化できなかった余剰の梅は、家畜の飼料や畑の肥料となっていた。
そこで、梅酒に使用した後のこの使われていなかった梅をドライフルーツにアップサイクル。またその加工を実際の梅の産地で行うスキームをつくり、産地の雇用を確保しながら事業化。生産者の収入やモチベーションも向上させながら、フードロス削減も同時に叶えることができる取り組みとなった。
「Upcycle by Oisix」が活用する食材は、野菜から水産品までさまざま。これまでアップサイクルした食材は約109トンにもなり、オリジナル商品は100品になった。
そのなかでも、とくに大きな反響を呼んだのが、高級食材として知られる白海老の殻を使った「カラッと香ばし白海老チップス」。これまで捨てられていたものなのに、白海老のうま味や香ばしさが活きた商品となったことから、発売後約3か月でシリーズ累計約3万個を販売する人気商品となった。
そんな評判もあって、最近では生産者や食品製造メーカーなど、食品ロスが発生する現場側から「何かに有効活用できないか?」という問い合わせが増えているという。ヒット商品となった「カラッと香ばし白海老チップス」も、白海老の加工メーカーから相談があって商品化が実現している。
「カラッと香ばし白海老チップス」はOisixの「おためしセット」に含まれる全9品のうちの一品だ。
家庭からの食品ロスを削減するという点で、ミールキット「Kit Oisix」もおすすめ。主菜と副菜の2品に使う食材を必要な分だけセットにしているため、食材を余らせることがない。
「Kit Oisix」の利用者に行ったアンケートで、ふだんの買い物時と比べて、家庭で出る食材廃棄が約3分の1まで減ったことがわかった*。わずか20分で手軽に料理を準備できることもあり、シリーズ累計出荷数は1億5000万食を突破する大ヒット商品だ。
*Oisix自主調査(調査期間:2023年7月7日〜13日 調査対象:Kit Oisix利用者2202人 調査内容:「自宅で調理するために用意した食材の使い残しなどの一食当たりの廃棄量」を聴取。Kit Oisix非利用時の平均廃棄量101gに対し、Kit Oisix利用時の平均廃棄量は36gとの結果になった。
「Kit Oisix」は、基本的に5種類以上の野菜がセットになっている。「つくった人が自分の子どもに安心して食べさせられることのできる」という理念を体現するOisix安全基準を満たした食材(例えば、肉や卵については飼育場所が確認できるものを選ぶなど)を使用しており、地球にも私たちの身体にも配慮された食事を簡単に楽しむことができるのだ。
さらに、「Kit Oisix」を使うことは農家を支援することにもつながっている。「Kit Oisix」では、調理時の負担と調理時間を減らすため、カット済みの食材が使われていることも多い。それらの食材には、品質に問題ないが一般的には流通しない加工用・規格外の農産物も使用することで、流通で生じる食品ロス削減にもつなげている。
Oisixの物流拠点。
Oisixは、定期的に宅配で食材が届くサービス。そんな宅配サービスにおいても、環境への配慮を忘れていない。
「宅配ではCO2がたくさん排出されてしまうのでは……」という懸念を抱く人がいるかもしれない。実は、Oisixでは畑から食卓までシンプルな流通経路で届けることにより、実店舗があるスーパーと比較して電気によるCO2排出量は約半分**だ。
さらに、配送パートナーとコミュニケーションを重ね、直近では、配送パートナーシップを結んでいるヤマト運輸株式会社が、宅急便でのカーボンニュートラル(国際規格ISO準拠)を宣言。温室効果ガス削減に加え、カーボンクレジットによるオフセットにより、気候変動対策に貢献している。
**実店舗型小売業企業のうち、スコープ1,2,3のCO2排出量を情報開示している4社平均を算出。各社売上は該当会計年度の連結ベースで計算(Oisix調べ)
また、宅配に使われるダンボールやパッケージにもさまざまな工夫を行っている。例えば、冷蔵・冷凍に使用しているダンボールのリサイクル用紙使用率が、これまでは約88%だったが、現在は100%に改良。2024年2月6日以降、順次切り替えを行っている。
漂白剤・着色剤不使用の古紙を100%使用して、ダンボールを生産する際の環境負荷は最低限に抑えつつ、配送時に必要な強度を保つ素材を採用。ダンボールの廃棄を出さないよう、必要な分をその都度製造している。
また、「Kit Oisix」では全商品のパッケージを、サトウキビ由来のバイオマスフィルムに変更。年間約13トンのCO2排出削減を実現した。そのほか、プラスチック包装の厚みをできるだけ薄くするなどあらゆる工夫を施している。
オイシックス・ラ・大地株式会社の髙島宏平代表取締役社長は、社会課題の解決について、みんなで力をあわせて大きなかぶを引き抜いたというストーリーの童話『おおきなかぶ』を例にあげ、次のようにコメントしている。
「大きな社会課題の解決も、誰かひとりが辛い想いをし、歯を食いしばって頑張るだけではサステナブルな活動になりません。そうならないような仕組みづくりを支援することで、地域社会への貢献もしていきます」
一般的な食品小売業に比べると極めて低い、食品廃棄率約0.2%を実現したというOisix。畑や家庭でのフードロスをできる限り減らし、それに新しい価値をプラスして消費者に届けるなど、生産から食卓まで一気通貫でサステナブルな状態であることを目指している。
また、突発的な気温変化や自然災害により規格外となってしまった青果を届ける「おたすけOisix」サービスもつくるなど、社会の問題を企業全体で解決していこうという姿勢がある。Oisixがきっかけとなり、一人ひとりの考え方や暮らしが変わり、世の中がよりよく変わっていく。そんな仕組みづくりが、Oisixの目指す事業のカタチだ。
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