Photo by Roman Spiridonov
リペアサービスをおこなう洋服ブランドがあるのをご存知だろうか。リペアすることで、より長く使うことができ、ごみを減らすアクションになるのだ。この記事では、リペアが求められる背景やファッション産業の問題・課題に触れながら、リペアをおこなう洋服ブランド10店を紹介する。
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「リペア」とは、修理や修繕、手直しを意味する言葉だ。ものが壊れたときに、捨てるのではなく、修理してできるだけ長く使うことを指す。
なかでも服や靴などは比較的修理が簡単といわれており、長く同じものを使うことができる。
ごみを減らすためのRで始まるアクションを意味する「3R」は有名だが、現在は「5R」に進化している。
「リデュース(Reduce)」「リユース(リユース)」「リサイクル(リサイクル)」の3Rに、「リフューズ(リフューズ)」「リペア(リペア)」を加えたのが5Rだ。
リペアが求められる背景には、環境破壊や労働問題といったファッション産業の問題点や課題がある。
ファッション産業は石油に次いで第2位の環境汚染産業と指摘されるほど、地球環境に大きな影響をおよぼしている。原材料の調達、生地・衣服の製造、そして輸送に至るまで、それぞれの段階で環境に影響を与えてしまう。販売され、生活者の手に渡った商品は、不要になるとごみとして処分され、焼却や埋め立てという手段によって廃棄されることが多い。
現在さまざまな企業で環境負荷低減の取り組みがおこなわれているが、衣類はいろいろな素材が混合されていることや、海外における生産過程が分散されているため、環境負荷の実態や全容が把握しにくい状態であるのが現状だ(※1)。
また、労働問題でとくに問題視されているのが、低コストで大量生産することで利益を生み出している、ファストファッションだ。安い労働力が必要なため、低賃金や長時間労働、安全基準が不十分な工場などの劣悪な労働環境で働いている労働者も多い。これらは人権侵害にまでおよぶ問題である。
劣悪な労働環境がもたらした悲惨な事故といえば、2013年にバングラデシュで発生した「ラナプラザの悲劇」が記憶に新しい。商業ビル「ラナプラザ」には、銀行や商店のほか、縫製工場が所狭しと詰め込まれ、そのために違法な増築が繰り返されたという。
もちろん雇い主や、ビルの管理会社などにも責任があるが、世界中の衣料品メーカーが安い労働力を求め、バングラデシュで製造を進めいていることも要因のひとつだ。我々が、手軽にトレンドファッションを手に入れようとすることで、貧しい国の若者の未来や、命をも奪ってしまうリスクがあることを忘れてはいけない。
ファッション産業の現状を理解したところで、ここからはリペアすることのメリットについて説明しよう。
リペアをして同じものを長く使い続けることで、廃棄による環境負荷を避けることが出る。環境省が作成した「サステナブルファッション」によると、持っている服を現在よりも1年長く着るだけで、日本全体として4万t以上の廃棄量の削減につながるそう。この数字からも、リペアをおこなうことが環境にやさしいとわかるだろう。
リペアをおこなうことは、環境のためのみならず生活者本人のメリットにもつながる。ひとつのものを長く使い続けることで、新しいものを買う頻度が減り、コストが抑えられるのだ。もちろんリペアにも修繕費・修理費がかかる場合が多い。しかし、新しいものを購入するよりは出費が少なく済むことがほとんどだ。
ものを修理して長く使うことで、より愛着がわき、ものを大切にする心が育めるのもメリットのひとつ。できるだけ修理する必要がないよう、日々大切に使う気持ちが芽生えるほか、新しいものを購入する際にも、「修理に出してでも長く使いたいものか」と、より吟味して買い物できるようになるだろう。
リペアのメリットがわかったところで、ここからは洋服のリペアができるブランドを紹介していこう。
アウトドアウェアを販売するPatagonia(パタゴニア)では、リペアサービスへ送付、または直営店へ持ち込むことで、パタゴニア製品の修理を依頼することができる。
衛生上の理由や、商品の状態によっては受付できない場合もあるが、ウェアやバッグ、フィッシング製品、ウエットスーツなど、幅広いアイテムの修理をおこなっている。
人気スニーカーブランドである「CONVERSE(コンバース)」でも、シューズを長く大切に愛用してもらうためのリペアサービスを実施。
ヒールラベルやテープの剥がれ、ソールのすり減りなどを、CONVERSEのオリジナルパーツを使って修理してくれる。状態によっては受付られないほか、日本国内における正規品のみが修理の対象だ。
アウトドアメーカーTHE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)は、ブランド設立当初より、プロダクトのリペアサービスを実施している。
同ブランドで購入した製品が破損または機能が失われた場合に、独自のリペアセンターで修理してもらうことが可能。ひとつのプロダクトに愛着を持ち、より長く使用してもらうため、すべての商品に対応している。
UNIQLO(ユニクロ )では、「服の持つあらゆる可能性を引き出しながら、未来にとってポジティブなことを、次々と実現する」ことを目指し、服のリペアやリメイクをおこなうサービス「RE.UNIQLO STUDIO」を東京や大阪、北海道の9店舗で提供している。
UNIQLO製品のみ対象ではあるが、修理は500円〜と気軽に依頼できる価格も魅力的だ。
日本発のジーンズブランド「エドウイン」では、"君といつまでも"をコンセプトにジーンズを長く穿いてもらうためのリペアサービス「Re:dwin(リドウイン)」を実施。破れやほつれの修繕だけでなく、純正品のパーツ交換や裾上げ加工なども対応し、さらに、エドウイン以外のジーンズの修理も受け付けている。
修理修繕を行うのは、東北にある自社の縫製工場や洗い加工工場。エドウイン製品の製造と同じ環境でリペアされる。
“USEDを拡張する進化型古着屋”「森」では、店頭受付のほか、オンラインでも「リペア&リメイク」サービスを受け付けている。オンラインでのオーダーは、LINEを使ってやりとりをおこない、担当スタッフが詳しい要望を聞き取り、見積もりやスケジュールを提案。
リペアは洋服のみ受付可能で、皮、合皮、ビニールなどの特殊素材、または、あまりにも固い生地は対応不可となっている。
「Nudie Jeans(ヌーディ・ジーンズ)」は、100%オーガニックコットンのジーンズを販売している、スウェーデン発のエシカルファッションブランド。
なんとNudie Jeansのジーンズなら、永年無料でリペアサービスを受けることができる。直営店に持ち込むほか、近くに直営店がない場合は郵送も可能だ。
「着る人も作る人も豊かに」という理念を持つ、アパレルブランド「10YC(テンワイシー)」では、大切に着てきた洋服をもう1回愛着を持って着てもらうためのリペアサービス「TSUGITASHI」をおこなっている。
同ブランドの商品のみが対象で、公式ページの相談窓口より依頼が可能。
100年以上続くフランスの靴メーカー「PARABOOT(パラブーツ)」では、純正部材をフランスから取り寄せて修理を実施。それによって、本来の履き心地を損なわずにリペアすることが可能だ。アッパーは変えずにソール交換をすることで、愛着はそのままに、より長く使用することができる。
また、カウンターライニングの補修、中敷の交換も可能。中敷を交換することでブランドロゴもきれいに生まれ変わる。
輸送トラックの幌などを使用し、耐久性に優れたバッグが人気の「FREITAG(フライターグ)」。配送による環境負荷なども考慮し、できるだけ現地でリペアをおこなっている。
直営店に行くのが難しい場合は、事前に連絡をし、バッグを送付することでリペアを受けることができる。直営店に持っていくことが可能な場合は、送料の節約になるほか、修理の間代用のバッグを借りることができる。
リペア以外にも、洋服を無駄にしない取り組みはさまざま。なかでも、リペアに似た取り組みとして、「リユース」と「アップサイクル」の意味や定義、具体例を紹介していく。
リユースとは英語で「Reuse」、つまり「再利用」を意味する言葉だ。具体的には、同じ製品を何度も繰り返して使うことや、何度も繰り返し使える製品を提供すること、繰り返し利用できるようにするための、さまざまなサービスを提供することをなどを指す。
使わなくなったものを、リサイクルショップやフリマアプリを利用して次の人に渡すのも、リユースに含まれる。
アップサイクルとは、捨てられるはずだったものに新しい価値を与えて、元の状態より価値を高めることを指す言葉だ。価値を高めることで、長く使われるようになり、商品としての寿命がの伸びることを目指している。
たとえば、食品をつくる際に発生する野菜のヘタや果物の皮などを使って、スナック菓子を製造・販売することや、コーヒーかすを使ったスキンケア商品などがアップサイクルにあたる。
リペアを利用してものを長く使うことは、地球にやさしいだけでなく「大事にしよう」と、私たちの意識をも変化させてくれる。また、新しいものを買う際にも「リペアをしてでも長く使おうと思えるだろうか」と、判断基準にもなるだろう。
リペアを上手に活用して、本当に気に入ったものに囲まれた心豊かな生活を送ってみてはいかがだろうか。
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