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SDGsの達成年である2030年までに残された時間はそう長くない。SDGs達成に向けた取り組みが加速するなか、企業や自治体、NGOによる独自の推進が求められる。本記事では、SDGsの達成に取り組む団体の15の事例を紹介。17のどのゴールに紐づいた取り組みなのかをあわせて解説する。
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SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称であり、「持続可能な開発目標」と訳される。2015年9月にニューヨークの国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」で、国連加盟国193カ国の全会一致で採択された。
地球上には、環境・社会・経済などにおける社会課題が山積みであり、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030 アジェンダ」のなかで、2030年までに解決すべき課題をまとめたのがSDGsだ。社会課題は17の目標に分類されており、それぞれを細分化する形で169のターゲットと232の指標が定められている。SDGsはいわば、先進国と発展途上国が一丸となって取り組むべき、世界共通の目標なのだ。
SDGsの原則でもある「誰一人取り残さない」社会を実現するためにも、未来を意識した協調的な取り組みが欠かせない。SDGsの達成は、政府だけでなく、企業や地方自治体から個人まで、一人ひとりの姿勢に委ねられている。
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SDGsをより一層推進するために設立された「SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)」によると、2022年の日本のSDGs達成度ランキングは世界で19位。100点満点中のスコアは79.6という結果だった。順位だけを見ると悪くはないのかもしれないが、まだまだ課題は残されているのが現状だ。
SDGs達成のためには、国民一人ひとりが課題を把握し、当事者意識を持つことが重要である。以下では、政府による日本の取り組みを紹介する。
政府は、日本としての目標を達成するための牽引役を担い、SDGs推進のための実施体制の構築を行っている。2016年5月には、総理を本部長、官房長官および外務大臣を副本部長として「SDGs推進本部」を設置した。SDGsを推進するための「SDGs実施指針」では、日本における8つの優先課題や主要原則を提示。指針をもとに毎年「SDGsアクションプラン」を策定し、具体的な施策を検討している。
また、官民一体となってSDGsを推進するために「SDGs推進円卓会議」を開催。NGO・NPOや国際機関、各種団体など、広範な有識者が集まって意見を交換し、出された意見を踏まえた政策の立案を行っている。
政府は、2017年から「ジャパンSDGsアワード」を実施。SDGs達成に向けて優れた取り組みを行う企業や団体を表彰し、外務省のホームページで受賞結果と取り組み内容を公開している。
受賞者は、SDGs推進円卓会議の構成員からなる選考委員会の意見を踏まえて選ばれる。企業以外にも、NGO・NPO、教育機関、地方自治体が表彰されており、国内のさまざまな団体がSDGs達成に向けて取り組んでいることが見てとれる。
日本政府による2018年からの取り組みに「SDGs未来都市」がある。SDGsに関する優れた取り組みを行う地方自治体を選定。とくに先導的な取り組みを「自治体SDGsモデル事業」として選定し、補助金の交付を行っている。
SDGs未来都市の目的は、SDGsを原動力とした地方創生や持続可能なまちづくりの推進だ。6回目となる2023年度は、28都市がSDGs未来都市として、10事業が「自治体SDGsモデル事業」として選定された。
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SDGsの認知が広まるなか、企業も積極的にSDGsの推進に取り組んでいる。以下では、具体的な企業事例を5つ紹介。17の目標のうち、どのゴールに紐づいた取り組みであるのかもあわせて解説しよう。
フェアトレードカンパニー株式会社のフェアトレードブランド「ピープルツリー」。1996年に「WFTO(世界フェアトレード連盟)」の前身であるIFATに加盟し、2003年にフェアトレード団体としての保証を受けているブランドだ。
ピープルツリーの製品を生産するのは、バングラデシュやインド、ネパールなど世界各国のつくり手たち。同ブランドでは、生産者団体に技術研修の機会を提供し、スキルアップのサポートを行っている。また、発注時に必要に応じて、発注額の50%を前払い。フェアトレードで得られた利益は、貧しい子どもたちが通う学校の運営や地域のためのプロジェクトに充てられている。
ピープルツリーの取り組みは、SDGsのゴール1「貧困をなくそう」に密接に関わるほか、多数の項目に関係する。ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」や、ゴール10「人や国の不平等をなくそう」にも大いに紐づいているといえる。
サラヤでは、同社の原点である手洗いに関する取り組みを実施。「100万人の手洗いプロジェクト」として、2010年からユニセフ協会と協力して行っているプロジェクトだ。手洗いが十分にできない国のひとつであるウガンダで、現地での手洗い設備の普及や手洗いに関する教育啓発などを行っている。対象商品の売上1%がユニセフ協会に寄付されることで、実現しているプロジェクトである。
サラヤのプロジェクトは、SDGsのゴール6「安全な水とトイレを世界中に」とつながっているといえるだろう。
JALグループでは、SDGsの17のゴールと紐づくさまざまな取り組みを行っている。2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指す、すべてのフライトをサステナブルなものにする、など、社会課題の解決のために積極的に取り組んでいる。
2022年12月から、機内食が不要な場合に事前にキャンセルを申し込むことができるサービス「JAL Ethical Choice Meal Skip Option」を国際線全路線で展開。これは食品ロスの削減につながるサービスであり、SDGsのゴール12「つくる責任つかう責任」に関わっている。
また、同プロジェクトは、キャンセルされた機内食1食ごとに一定額が寄付される仕組み。寄付金は、飢餓で苦しむ発展途上国の子どもたちのために使われる。ゴール2「飢餓をゼロに」とも深く関わる取り組みだ。
パナソニックは、環境保全団体「WWFジャパン」と協働して、20年以上にわたって「海の豊かさを守る」活動を行っている。SDGsでいうと、ゴール14に関する活動だ。
2018年3月から、「サステナブル・シーフード」を社員食堂で導入する取り組みを行っている。サステナブル・シーフードとは、持続可能な方法で生産され、トレーサビリティの確保に関して認証を取得しているシーフードのこと。天然の水産物が持続可能な方法で獲られたことを認証する「MSC認証」や、養殖水産物に関する「ASC認証」がついた水産物を選択することが、海の生態系を守るのだ。
同活動は、社員の消費行動の意識変革を促すことも目指しており、2022年3月時点で、54拠点で実施している。
住友林業は、経営森林面積の拡大やスマート林業の導入、コンテナ苗木事業の拡大などを通して、林業活性化に向けた取り組みを行っている。SDGsのゴール15「陸の豊かさも守ろう」に紐づく取り組みだ。
近年、人工林の荒廃により、森林の持つ公益的機能が損なわれることが懸念されている。政府は2025年までに木材自給率を50%程度まで高めることを目標にしており、その目標に貢献する形である。
具体的には、2012年度に宮崎県日向市に施設栽培型苗木生産施設を開設。その後、全国各地に展開し、年間190万本の苗木を生産できる体制が整った。ほかにも生産を委託したり、技術提供を行ったりと、さまざまな方法で苗木の安定供給体制を構築し、森林保全に努めている。
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47都道府県と1,417市区町村を対象とした「令和4年度 SDGsに関する全国アンケート調査結果」によると、SDGs達成に向けて取り組みを推進していると回答した自治体の割合は70.6%。(※10)この結果からも、さまざまな自治体がSDGsの取り組みを行っていることがわかる。
以下では、令和5年度の「自治体SDGsモデル事業」に選定されている事業のなかから、5自治体の事業を紹介。いずれも2023年5月に選定されたばかりの、新たな取り組みだ。
青森県弘前市では、同市の基幹産業であるりんご産業を持続可能とするための取り組みを行う。主な課題は「りんご産業の生産力・販売力の強化」「りんご産業を守る担い手の確保」「りんご産業における環境負荷の低減」の3つ。経済・社会・環境の3方面からアプローチし、農業所得の向上や環境負荷の低減を目指す。
同プロジェクトはSDGsの複数のゴールと関連しているが、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」や、ゴール8「働きがいも経済成長も」とより深く関わっている。
東京都東村山市は、同市が抱える課題を解決すべく、経済・社会・環境の3側面をつなぐ総合的な取り組みを実施する。「オープンラボを通じた産官学金連携プロジェクト」として、デジタルワンストップサービスを活用した市民への発信や地域通貨の導入、SDGsに関する取り組みの可視化を目指す。2030年までに「笑顔つながる東村山」を実現することを掲げており、取り組みを進めることでワンランク上のベッドタウンとして「選ばれるまち」になることをゴールとしている。
さまざまな課題を総合的に解決する同プロジェクトは、複数のSDGsのゴールと関わっている。魅力的なまちを目指すという点で、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」ともっとも関連するといえるだろう。
新潟県佐渡市が掲げるのは、脱炭素社会・資源循環型社会・自然共生社会の実現。環境・経済・社会の3側面の向上を目指すとして、2022年11月に、NTTデータと新潟大学と共同で「佐渡島自然共生ラボ」を開設した。同施設では、佐渡島の自然資源の見える化や新規加工品制作など、地域の課題解決のための複数のプロジェクトを推進する。
同市では、独自のSDGsのゴールとして18番目を設定し、歴史・文化の継承に取り組むとしている。世界に誇れる佐渡島の金山、特別天然記念物であるトキとの共生など、まちに続く歴史や文化、自然を存分に活かす方針だ。
福井県大野市は、今後数年で星空保護区認定取得や北陸新幹線県内延伸、市政施行70周年などの新たな局面を迎える。これらの機会を活かすべく考案されたのが「産業・人・自然が生き生きと好循環する結のまち」であり、「ほし・ひと・エコ推進事業」だ。
具体的には、星空の観光活用や、豊富な森林を活かした脱炭素の取り組みの強化など。持続可能な地域を目指すために、経済・社会・環境の3側面から統合的な取り組みを行う。SDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」やゴール13「気候変動に具体的な対策を」の項目と関わる内容だ。
兵庫県が目指すのは、同県の個性を活かして、企業・団体・県民のオール兵庫で持続可能な兵庫を未来へつなぐこと。SDGsのゴール11「住み続けるまちづくりを」と、深く関連する目標だ。
同プロジェクトの核となるのは、「ひょうごフィールドパビリオン」である。ひょうごフィールドパビリオンとは、2025年大阪・関西万博の開催を機に、県全体をパビリオン(展示館)に見立て、地域のSDGsを体現する現場を地域の人々が発信することで、多くの人に体感してもらうプログラムのこと。「SDGs体験型地域プログラム」募集し、県が選定を行っている。
活動現場への誘客を促進するほか、交流人口創出による経済活性化、シビックプライドの醸成、定住人口の増加など、多くの目的のもと展開されており、好循環の創出を目指す。
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SDGsのゴール17に、「パートナーシップで目標を達成しよう」がある。ゴール17は細かく19のターゲットにわかれており、世界中のすべての人が協力しあうことの重要性が記されている。そのなかで、SDGsを達成するために、公的機関や民間企業、市民社会を含め、さまざまなパートナーシップを推進することが勧められている。
以下では、環境団体やNGOなど、さまざまな団体によるSDGsへの取り組みを紹介する。
セカンドハーベスト・ジャパンは、日本初のフードバンクとして、誰もが食にアクセスできるフードセーフティネットの構築を目指している。
主な活動は、まだ食べられるにも関わらず活用されない食品を、必要とする人に届けること。食品製造業者や農業生産法人などと連携し、余っている食品の寄付を促している。また、全国のフードバンク団体とつながり、必要なタイミングで必要な施設へ届けられる体制を整えている。
この活動は、SDGsのゴール2「飢餓をゼロに」や、食品ロス問題に言及されているゴール12「つくる責任つかう責任」と関係が深い。捨てられる食品が誰かの役に立つ、社会的意義のある活動だ。
セーブ・ザ・チルドレンは、100年の歴史を持つ子ども支援専門の国際NGO。「すべての子どもにとって、生きる・育つ・守られる・参加する『子どもの権利』が実現されている世界を目指す」ことをビジョンに掲げ、保健や教育に関する取り組みから人道支援に至るまで、幅広く活動している。
1986年にはセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが設立。国内では、行政や地域社会と連携して、子どもの貧困問題の解決や虐待の予防に関する事業に力を入れている。また、東日本大震災や熊本地震における復興支援を通して、子どもの権利を実現する活動にも取り組んでいる。
同団体の取り組みは、ゴール1「貧困をなくそう」やゴール4「質の高い教育をみんなに」、ゴール16「平和と公正をすべての人に」とつながっている。
ウォーターエイドは、1981年にイギリスで設立された水・衛生専門の国際NGO。世界34カ国に拠点を置き、アジア・アフリカ・中南米をはじめとする26カ国でプロジェクトを実施している。同団体は、「すべての人々がすべての場所で、清潔な水とトイレを利用し、衛生習慣を実践できる世界」をビジョンに掲げており、活動内容は、SDGsのゴール6「安全な水とトイレを世界中に」と深く関わっている。
2013年には、日本からの支援を課題解決に役立てるために、特定非営利活動法人ウォーターエイドジャパンが設立された。
ジョイセフは、1968年に発足した日本生まれの国際協力NGO。「すべての人が自分の意思で生き方を選択できる世界」を目指し、40を超える国と地域で女性支援とSRHRの推進に取り組んでいる。
SRHRとは、「性と生殖に関する健康と権利(Sexual and Reproductive Health and Rights)」を指す。一人ひとりが自己決定権を持ち、必要なヘルスケアを受けられること。つまり、自身の健康と主体性を守れることであり、基本的人権の中心にある権利である。
具体的な活動としては、妊娠・出産・中絶によって亡くなる女性を減らすための支援や意図しない妊娠を防いで人権を守るための活動、性感染症の予防やSRHR推進のための啓発活動が挙げられる。SDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」に関する内容であるが、ジェンダーの課題はほかのゴールともつながっており、さまざまなゴールを達成するためのアプローチともいえる。
WWFは、100カ国以上で活動している環境保全団体。人と自然が調和して生きられる未来を目指して、1961年にスイスで設立された。生物多様性の豊かさの回復と地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現を主軸に、持続可能な社会を実現するためのさまざまな活動を行っている。
WWFが大事にしているのは、自然のなかに人間が存在するという自然観。日本でも1971年にWWFジャパンが開設され、海外のWWFや行政機関、民間企業と連携しながら、数々のプロジェクトを行っている。
同団体の活動は、SDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」やゴール14「海の豊かさを守ろう」、ゴール15「陸の豊かさも守ろう」に関連している。
私たちがこれからも地球上で暮らしていくためには、持続可能な社会の実現が必要だ。SDGsは持続可能な社会を実現するための世界共通のゴールであり、世界中の人々と協力しながら達成していくものである。そこには、政府だけでなく、地方自治体や企業、個人の取り組みも欠かせない。
サステナブルな暮らしをガイドする「ELEMINIST」では、これまでさまざまな企業やブランドに伴走し、SDGs達成に向けた事業活動をサポートしてきた。記事タイアップによるプロモーションやマーケティング支援、有識者によるSDGs研修などもそのひとつだ。具体的な施策や事例は以下で見ることができるので、ぜひチェックしてみてほしい。
まずは、2030年までに何ができるだろう?よりよい未来のために、いま一度、当事者意識を持って考えてみよう。
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