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国連は、2023年を「国際雑穀年」と制定。水不足や洪水など気候変動による農業への影響が心配されるが、雑穀は他の作物と比べて生育しやすい。さらに栄養価も高い。雑穀がなぜ世界で改めて注目されるのか紹介しよう。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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2021年3月の第75回国連総会で、2023年を「国際雑穀年(International Year of Millets)」とすることが宣言された。
かつては日本も含めて、アジアやアフリカなどで主食として食べられてきた、ヒエ、アワ、キビなどの雑穀。しかし近年は存在感が薄れていたが、ここにきて世界が再注目している。
栽培の中心地は、アフリカやアジアの発展途上国で、世界中で6,000を超える品種が栽培されている。アジアとサハラ砂漠以南のアフリカの何百万人もの人々にとって、雑穀は主食であり貴重な栄養源になっている。
ミレットが再脚光を浴びる理由は2点ある。1点目は栄養価の高さだ。タンパク質、食物繊維の含有量が高い。また、加工小麦や米よりもはるかに高いレベルのビタミンや鉄分、カルシウムを含む。例えば、100gのラギには344mgのカルシウムが含まれているが、米には33mg、小麦には30mgしか含まれていない。
また、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を多く含有することから、糖尿病の予防に役立つ。低GI値(グリセミック インデックス)食品なので、ダイエット中の方や血糖値を気にする方にも適している。グルテンを含まない特性上、雑穀を製粉してつくるグルテンフリーのパンも人気だ。
食料不足が深刻化する地域では、雑穀の存在が貴重な栄養源になる可能性を秘めている。
2点目は過酷な環境にも耐えられる適応力だ。雑穀は、降雨量が少ない環境や肥沃でない土壌でも育てやすい穀物である。最小限の手間で育つ上、干ばつや害虫への耐性、気候変動に対しての回復力が高い。気候変動が原因とみられる自然災害が原因で、農業にも影響をもたらしているが、そのようななかでも雑穀は大切な食料として入手しやすいと考えられる。
このような理由から、国連は2023年を「国際雑穀年」と制定し、栄養、食糧安全保障、気候変動に対応しうる雑穀の重要性を認識してもらおうと呼びかけているのだ。
雑穀を広く栽培し、食料として利用することで、SDGsの開発目標2「飢餓をゼロに」、開発目標3「すべての人に健康と福祉を」、開発目標13「気候変動に具体的な対策を」などの達成につながると期待できる。
国際雑穀年がはじまると、世界屈指の雑穀生産量および消費国であるインドを中心に、多彩なイベントや企画が実施されている。
国連イベントの1つとして、国連の代表者や高官も出席。インドで栽培された雑穀について、栄養価およびさまざまな健康上の利点を紹介。キビをベースにした軽食も振る舞われた。このイベントのビデオメッセージで、アミナ・モハメッド国連副事務総長は、キビには豊かな伝統と可能性があることを強調している。
国際雑穀年を呼びかけるFAO(国連食糧農業機関)は、インスタグラムで「グローバル シェフ チャレンジに参加しよう!」という企画をおこなっている。世界中のシェフやプロフェッショナル料理人が動画を共有して、雑穀の調理方法や食べ方を紹介している。雑穀の未知なる可能性に出会えるかもしれない。
主食として食べる以外に、パン、パスタ、ピザにするなど、さまざまな食事に使える雑穀。世界の人口増加や新型コロナウイルスのパンデミックによって食料不足が懸念されるなか、雑穀の存在に光があてられるときが来ている。
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