アパレルにもサステナブルの波 SDGsに基づいた「コペンハーゲン・ファッションウィーク」開催

世界一サステナブルなファッションイベント「コペンハーゲン・ファッションウィーク」

Photo by James Cochrane / Copenhagen Fashion Week

コペンハーゲン・ファッションウィークは、SDGsに基づいたガイドラインを設け、世界一サステナブルなファッションイベントといわれる。期間中のごみの削減や電気自動車の利用に加え、参加ブランドには使用する素材やサプライチェーンについて基準がある。

岡島真琴|Makoto Okajima

ライター

ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。ライター・編集者として活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRESSを運営。

2023.02.16
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環境への負荷が指摘されるファッション業界

世界一サステナブルなファッションイベント「コペンハーゲン・ファッションウィーク」

Photo by Copenhagen Fashion Week

コペンハーゲン・ファッションウィークが、2023年1月30日から2月3日まで開催された。同イベントは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づいた厳しいガイドラインを設けており、世界一サステナブルなファッションイベントともよばれている。

そもそも、シーズンごとに次々と新しい商品をつくり大量生産・大量廃棄するスタイルなどから、環境への負荷が大きいと言われているファッション業界。

それに加え、パリ、ロンドン、ミラノ、ニューヨークなどで行われるファッションウィークは、15分間のランウェイでのショーに6カ月にもおよぶ準備期間を要し、イベント終了後には招待状やペットボトル、食べ残しなどの多くのごみが発生。地球環境に対する負荷が大きいとしてこれまでも問題視されてきた。

また研究者による試算によると、上記4つの主要なファッションショーに出席するために、世界各地のデザイナーやバイヤーが移動することで、一年間に約24万1000トンの二酸化炭素が排出されるという。

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主催者が設けるサステナブル基準

世界一サステナブルなファッションイベント「コペンハーゲン・ファッションウィーク」

Photo by Tonya Matyu / Copenhagen Fashion Week

コペンハーゲン・ファッションウィークが設けているサステナブル基準は、イベント自体の運営にとどまらず、公式プログラムに参加したブランド(2023年は28ブランド)にも適用される。またデザイナーも素材や労働、ビジネスのあり方に関する18の基準をクリアする必要があり、要件を満たさないとイベントに参加することはできない。

例えば、各ブランドおよびデザイナーには、環境に関する認証を受けた素材、デッドストック、アップサイクル、リサイクル素材などを50%以上使ったテキスタイルを使用することが求められる。さらに、売れ残った服を破棄することが禁止され、サプライチェーンにおいて工場が安全で、かつ児童労働がないことなどが条件にある。

これらの最低条件に加え、動物福祉に配慮した素材の使用、紙の招待状ではなくデジタルを使用するなど、より広範なサステナビリティの改革を取り入れた行動が求められる。

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3年を経て生まれ変わったコペンハーゲン・ファッションウィーク

世界一サステナブルなファッションイベント「コペンハーゲン・ファッションウィーク」バックステージ

Photo by Copenhagen Fashion Week

コペンハーゲン・ファッションウィークが、サステナビリティーを重視したイベントへと生まれ変わるには、3年の歳月を要したという。まずは同イベントの運営自体に焦点を当て、2019年の炭素排出量を測定し、2023年までにこの数字を半分に減らし、残りはカーボンクレジットの購入で相殺することを目標にした。

ゲストの移動には電気自動車を使用し、プレゼンテーションで出るごみを最小限にし、プラスチック製のハンガーを禁止し、小道具やセットを再利用することで「ゼロ・ウェイスト」を実現。

次に焦点を当てたのが、参加ブランドやデザイナーだ。主催者が示した18の基準すべてを満たしているブランドはなかったため、素材調達や顧客教育に関するオンラインセミナーや、専門家による1対1のコーチングセッションなどを実施したという。現在では、ブランド側からの意見も取り入れるなどして、基準をより厳しいものに改訂していく予定だ。

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世界中のファッションウィークへ基準の導入に期待

世界一サステナブルなファッションイベント「コペンハーゲン・ファッションウィーク」

Photo by James Cochrane / Copenhagen Fashion Week

コペンハーゲン・ファッションウィークの最高経営責任者であるCecilie Thorsmark氏は、次のように語っている。

「私たちは気候危機の真っただ中にいる。そして、私たちの業界は法律が十分に整えられていないことに加え、『サステナビリティとは何か?』と問う混乱のなかにさらされてきた。自分たちが模範を示していくことで社会的責任を果たしていきたい」

一方で、コペンハーゲンの取り組みはまだ十分でないとする声も上がっている。例えば米パーソンズ美術大学のRaz Godelnik教授は、同イベントがカーボンオフセットを認めたことは、間違ったメッセージを送ったと批判する。専門家のなかには、カーボンオフセットの購入は、気候への影響を軽減するための企業の根本的な取り組みを妨げるという意見もある。

また、コペンハーゲンよりもはるかに規模が大きいニューヨーク、パリ、ロンドン、ミラノでは、パワーバランスはブランド側に有利であり、世界的にコペンハーゲン・ファッション・ウィークの基準が導入されるには時間を要しそうだ。

しかし、すでにいくつかのファッションウィーク開催地では、コペンハーゲンの持続可能性戦略を参考にしているところもあるという。コペンハーゲン・ファッションウィークの取り組みが、イベントの運営自体だけでなく、各ブランドや業界全体へのいい影響として、さらに広がっていくことを期待したい。

※掲載している情報は、2023年2月16日時点のものです。

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