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アメリカ・カリフォルニア州は、包装と使い捨てプラスチックを大幅に減らす新しい法律を制定した。2032年までにプラスチック包装の65%以上のリサイクルを求めるなど、全米屈指の厳格な脱プラ規制となる。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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カリフォルニアは、アメリカ国内でもトップクラスの厳しい基準で環境保全に取り組む州だ。経済成長も重視しつつ、州独自の自動車環境規制や生ごみ堆肥化など先進的な政策で全米の取り組みをリードしている。
そんな同州で新たな環境法が制定された。ギャビン・ニューサム州知事は、使い捨てプラスチック廃棄物と包装材を段階的に廃止する法案に署名した。米国内でもっとも厳しい規制と言われる。
2028年までに州内で販売・使用される包装やプラスチック製品の30%をリサイクルすることを求め、さらに2032年までに65%と高い水準を求めている。ポリスチレンについてはさらに厳しく、リサイクルを2025年までに25%達成することを義務化。この数値に達しない場合、その材料は州内での使用が禁止される。
カリフォルニア州資源循環局には、廃棄物の量が増えた場合、この目標値をさらに上げる権限が与えられる。
この法律のもととなっているのは、環境に影響を与える製品について生産する事業者がその責任を負う「EPR(拡大生産者責任)」だ。プラスチック製品を生産・販売する事業者が、廃棄までの責任を負う考え方にもとづいている。
また「カリフォルニアプラスチック汚染軽減基金」を創設。プラスチック生産業者に、2027年から10年間、年5億ドル(約6,900億円)を支払うことを義務付け、これを資金にプラスチック汚染の監視や軽減に取り組む。
この法律に従わない事業者には1日あたり5万ドル(約690万円)の高額な罰金が科せられる。そのため、プラスチック産業協会をはじめ、この法律に反発する声もある。
一方、NGO団体「オーシャン・コンサーバンシー」によると、今回の法律によって、今後10年間で2,300万tのプラスチック廃棄物を削減できると予測。環境課題の解決に期待が寄せられている。
2021年に発表されたBeyond Plasticsの報告書によると、アメリカではプラスチックにより年間2億3200万tものCO2が排出されている。 これは、石炭火力発電所116か所から排出される量とほぼ同等であり、プラスチックによる環境負荷がいかに高いかわかるだろう。
ところが、この環境負荷は世界の不平等を拡大している。プラスチック業界による環境汚染や健康被害は、主に低所得者層や有色人種といった社会的弱者の居住区に集中。周辺住民や生態系を危険に晒すリスクが極めて高くなっている。
こうした格差を減らしていくためにも、環境正義を実現していく必要がある。カリフォルニア州のように、プラスチック汚染と根本から向き合う施策や規制に、世界中が早急に取り組むべきだろう。
※参考
Newsom signs nation’s most sweeping law to phase out single-use plastics and packaging waste|Los Angels Times
Single-use plastic waste is getting phased out in California under a sweeping new law|CNN
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