拡大生産者責任(EPR)とは 日本やドイツの具体例を解説

稼働中の工場の遠景

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拡大生産者責任は、大量生産・消費・廃棄を見直し、循環型社会の形成を実現する施策のひとつとして取り入れられた考え方で方である。私たちの生活にも深く関わる拡大生産者責任には、どのような仕組み・狙いがあるのだろうか。

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2022.02.28
目次

拡大生産者責任とは

拡大生産者責任とは、生産者が製品の生産と使用段階における責任だけではなく、廃棄やリサイクル段階までの責任を負う考え方である。「Extended Producer Responsibility (EPR)」とも呼ばれる。

具体的には、生産者が使用済みの製品を回収し、廃棄かリサイクルをおこない、費用を負担する仕組みである。

我が国における拡大生産者責任の考え方は、法律では容器包装リサイクル法(1995年)で初めて取り入れられたと考えられる。この法律でプラスチックをはじめとした資源のリサイクルを意識した人も多いかもしれない。(※1)

拡大生産者責任の導入によって知識や経験のある生産者を環境政策に取り込み、環境負荷や必要になる費用を減少させようという狙いもある。

拡大生産者責任の考え方が生まれた背景

拡大生産者責任の考え方が生まれたのは、1990年、スウェーデンのトーマス・リンクヴィスト博士の提唱であると言われている。実際は1990年以前から欧州での廃棄物対策が施行されていたが、リンクヴィスト博士によって国際的な注目を集めるようになった。

さらに広く知られるきっかけになったのは、2000年のOECD(経済協力開発機構)による提唱である。資源消費や環境負荷を低減できる「循環型社会」が意識される風潮の中、拡大生産者責任はその一環として大いに注目された。

日本でも前述の容器包装リサイクル法をはじめ、複数の法整備が進められている。2000年以前からリサイクルに関する意識はあった。(※2)

しかし当時は拡大生産者責任の考え方ではなく、あくまで「排出者責任」であり、排出する当人(廃棄する消費者)が責任を負うものであった。

拡大生産者責任の考え方が取り入れられ、その責任は排出・リサイクルまでも生産者が負うことになったのだ。

生産者が責任を負うからこそのメリットがある。それは、リサイクルしやすい原材料を使い、分解しやすい設計をおこなうようになることだ。最初から再使用や再生利用を視野に入れた製品が増えれば、循環型社会の推進につながるだろう。

日本とドイツにおける拡大生産者責任の具体例

拡大生産者責任について、日本とドイツの具体例を見てみよう。それぞれの課題についても注目したい。

日本

もともと日本では、1970年代に自治体が負担する廃棄物処理法が成立している。
しかし80年代になると、廃棄物処理法では処理しきれない廃棄物の増加や、処理場の不足が問題点として浮かび上がった。日本で拡大生産者責任の考えかたが出始めたのはこの頃であると考えられる。

拡大生産者責任の考え方は、前述の通り容器包装リサイクル法に端を発するものである。また、家電リサイクル法は拡大生産者責任の考え方が法制化された大きな事例だ。

最近では、販売店で出た包装紙や容器・トレーなどを回収できるボックスが置かれることが増えた。ペットボトルや新聞紙などを回収する販売店も増加。日本での拡大生産者責任の意識は確実に広がっている。

今後はさらなる推進のため、省庁をはじめ、自治体による啓発や制度化への積極的な着手が課題ではないだろうか。

ドイツ

ドイツの拡大生産者責任に対する意識は、日本とは少し異なっているようだ。生産者が最終段階まで責任を負う考え方は同様だが、運用方法に差がある。

例として1991年に制定された容器包装廃棄物令(容器包装廃棄物の回避および再利用のための法規命令:Verordnung über die Vermeidung und Verwertung von Verpackungsabfällen)を見てみよう。(※3)

ドイツでも容器包装は生産者が廃棄・リサイクルまでの責任を負う拡大生産者責任の考えかたが採用されているが、そのリサイクルのためにはライセンスが必要なのである。

以前はライセンスがなくても問題視されなかったが、2009年からは全生産者にライセンス取得が義務付けられた。

ライセンス取得が義務付けられたのは、取得している生産者が拡大生産者責任の義務を果たしている事実に対し、取得していない生産者はその責から逃れており、公平性を欠くという理由からである。

ドイツは拡大生産者責任の考え方を広げ、自動車や家電製品にも適用した。今後は国民へのさらなる啓発を続け、循環型社会の実現に邁進してほしいものである。

拡大生産者責任が広げる循環型社会の可能性

拡大生産者責任にはデメリットがあると感じる人もいる。生産者にとっては負担がないとは言えず、その意見にも一理あるかもしれない。

だがそれを上回るメリットがあるのも確かだ。拡大生産者責任はリサイクルを推進する。世界でも注目される循環型社会への意識が高まり、実現の可能性が広がるだろう。

※掲載している情報は、2022年2月28日時点のものです。

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