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総務省が発表する日本人口年齢別データ(人口推計概算値)は、将来的な日本人口と経済の成長を予測する重要なデータである。人口の動きである人口動態は経済成長と直結しているだけではなく、政治的施策にも大きな影響を与える。最新の人口推計概算値をもとに、日本の人口動態について見てみよう。
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前項のデータは2021年10月時点の結果だが、総務省は同様のデータを毎年公表している。毎年の年齢別人口からは日本の人口についての動向が明らかになる。とくに以下の3つについて注目したい。
2021年10月1日現在での日本人人口は、総計1億2,550万2,000人である。2020年と比較すると64万4m000人、0.51%の減少が見られた。
この減少幅は1950年以降、過去最大である。日本人人口は10年連続で減少幅が拡大しており、とくに若年層にその傾向がいちじるしい。少子高齢化の進行が顕著であることは間違いない。
日本の総人口は戦後のベビーブームを経て増加を続け、2008年にピークを迎えた。しかし2005年に戦後初の減少を見せたことを皮切りに、2008年以降は減少の一途を辿っている。2011年以降は前年を上回る年がなく、人口の減少に歯止めが掛からない状況だ。
年齢別の人口分布を見てみよう。ミドル層、シニア層の人口が多いことがうかがえる。戦後に起きたベビーブームが関係している。
日本では戦後、第一次ベビーブーム(1947年~1949年)、第二次ベビーブーム(1971年~1974年)が起こり(※2)、人口増加となった。「団塊の世代」「団塊ジュニア」として戦後の経済復興や高度成長期を牽引し、華やかなバブル時代を知る世代である。第二次ベビーブーム以降の人口減少が続く中、このふたつの世代の人口が膨らんでいる。
対して、団塊ジュニアの年代以降の人口は減少に転じている事実は無視できない。現在はミドル層と言える団塊ジュニア世代がシニア層になる日は必ずやってくる。年金をはじめとした社会福祉制度を必要とする世代だ。将来、その世代を支える若年層が圧倒的に少なく、先細りとも言える状況である。
元号別で見ると、昭和生まれはおよそ8000万人強。総人口の70.4%にあたる。平成生まれはおよそ3000万人強で27.5%、令和生まれはおよそ200万人強で1.6%だ。昭和が約70年続いたことや令和がこれから続くことを加味しても、平成以降に生まれた人々の数は圧倒的に少ない。
年齢別人口分布からは、将来の日本を支えるべき年代があまりにも少ない事実が深刻な問題点として浮かび上がる。これらの傾向と問題点に対し、国家の早急な施策が求められるだろう。
第二次ベビーブームから続く出生数の減少傾向は、日本の総人口をゆるやかに減少させつつある。
人口推移では出生児数から死亡者数を減算した自然増減数も集計される。出生児の減少が続くことにより、死亡者数が出生児数を上回る現象も続いているのだ。
2021年、出生児数は83万1,000人だった。前年と比較すると4万人の減少である。いっぽう、死亡者数は前年比6万8,000人増の144万人におよんだ。死亡者数が出生児数を60万9,000人上回る結果になっており、自然減少が起きていることを実感せざるを得ない。
日本総人口の自然減少は15年続いている。男女別に見れば男性が17年連続、女性は13年連続の減少であり、その減少幅にも拡大傾向が見られつつある。
都道府県別で見たところ、2021年10月現在、東京都の人口は1,401万人であり、全国人口の11.2%にあたる。総人口のゆうに1割以上を占めていることがわかった。次点以降に神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県と続き、東京都と合わせると日本の人口の42.4%が集中している。
しかしいずれも人口が増加しているわけではない。2021年10月現在、前年比で人口増加を果たしたのは沖縄県のみである。増加率は0.07%であり、大幅な増加とは言えないものの、人口減少を免れた唯一の地域だ。(※3)
ほか46都道府県では減少が確認されている。東京都では1995年以来26年振りの減少となった。
地方において大きな減少率が見られる。秋田県、青森県、山形県をはじめとした11県では1%を超える人口減少率を記録した。前年は10県であったが、0.85%だった愛媛県が1.04%となり、新たに加わる結果になった。
人口減少率は都市部でも拡大した。大阪府の減少率は前年0.05%であったが、2021年には0.36%となり、0.31%の拡大が起きている。東京都、神奈川県でも人口減少率の顕著な拡大が確認できる状態であり、大都市における人口減少にもあらためて注目するべきだと言えそうだ。
人口減少率が拡大する県があれば、その逆として縮小した県もある。大分県、鹿児島県をはじめとした7県では人口減少率の縮小が確認された。島根県は前年と変わらず、同率を保っている。
各都道府県における人口減少率の拡大・縮小は、いまだ収束が完全ではない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係が考えられる。
感染対策として移動や移住を控える人が増加したことや、海外からの移住・滞在が制限され続けていることが要因のひとつだろう。とりわけ外国人の人口減少は大きく、2万8,000人におよんでいる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だけではなく、そもそもの年齢別人口分布からも、人口の減少やむなしの傾向が読み取れる。寿命を迎えるであろう世代の人口が、出生児の数よりも多い年が続いている以上、人口が減り続けるいっぽうであることは自明の理と言わざるを得ない。
また、人口減少率を拡大する要因である「死亡」は、高齢化が進む都市圏以外の地方ほど増加する可能性が高い。総人口の減少対策も必要だが、地方の高齢化社会対策も同時に重要視されるべきだろう。
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