【2021年】日本の出生率の現状 都道府県別ランキングと低下の影響

日本で出生率の低下が問題視されている。2021年に公開された最新ランキングから、日本の出生率の現状を学ぼう。都道府県別の出生率ランキングから、地域差が生じる理由、出生率低下によって起こりうる、将来的なリスクについて解説する。

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2021.10.29

2021年の日本の出生率と合計特殊出生率

出生率とは、人口1,000人に対する出生数の割合を示すための数値である。この場合の人口には、男性や子ども、高齢者も含まれている。このため出生率からは、「1人の女性が生涯で何人の子どもを産むのか?」を読み解くことはできない。

ここで使われるのが、合計特殊出生率という考え方である。合計出生率を求めるためには、まず女性の年齢別出生率(各年齢ごとの出生数を、その年齢の女性の人口で割ったもの)を求める。出産可能年齢とされる15~49歳の年齢別出生率を、すべて合計したものが合計特殊出生率だ。

厚生労働省が発表する「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2020年の日本の出生数は840,832人であった。出生率は6.8だ。合計特殊出生率は1.34である。(※1)

2019年の世界の合計特殊出生率ランキングにおいて、日本の順位は191位であった。世界においても、特に出生率の低い国の一つと言っていいだろう。(※2)

出生率のこれまでの推移と理由

近年、日本の出生率は低下傾向にある。ここ数年は特にその傾向が顕著で、2017年には946,146人であった出生数は、わずか4年で100,000人以上も減少。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延による経済不安も影響し、過去最低を記録した。

日本の合計特殊出生率が最低を記録したのは、2005年のことである。この年の数値は1.26。だが、政府の少子高齢化対策が充実し、その後はやや上昇傾向に転じた。ただ、ここ数年はまた下降に転じており、社会の実情に合った対策が求められると言えるだろう。

近代日本の歩みを見てみると、出生数が大幅に増えたのは1940年代後半と1970年代前半である。いわゆるベビーブームと呼ばれる時期であり、出生数は2,000,000人を超えていた。1940年代後半の合計特殊出生率は4を超えていたが、その後経済発展が進むとともに、急激に低下している。(※3)

都道府県別 合計特殊出生率ランキング

ではここからは、都道府県別の合計特殊出生率の現状について確認していこう。2020年の都道府県別出生率ランキングは以下のとおりだ。

順位都道府県名出生率
1位沖縄1.86
2位島根1.69
3位宮崎1.68
4位長崎1.64
5位鹿児島1.63
6位福井1.61
7位佐賀1.61
8位熊本1.6
9位鳥取1.59
10位大分1.57
11位長野1.53
12位香川1.51
13位山梨1.5
14位山口1.5
15位和歌山1.49
16位広島1.49
17位福島1.48
18位富山1.48
19位石川1.48
20位高知1.48
21位滋賀1.47
22位岡山1.47
23位三重1.45
24位徳島1.45
25位愛媛1.45
26位静岡1.43
27位愛知1.43
28位福岡1.43
29位岐阜1.42
30位山形1.41
31位群馬1.41
32位兵庫1.4
33位茨城1.38
34位新潟1.35
35位栃木1.34
36位青森1.33
37位岩手1.33
38位秋田1.32
39位大阪1.3
40位千葉1.28
41位埼玉1.26
42位奈良1.26
43位神奈川1.25
44位京都1.22
45位北海道1.21
46位宮城1.21
47位東京1.13

合計特殊出生率がもっとも高いのは沖縄県で、もっとも低いのは東京都である。2019年のデータを見ても、1位は沖縄(1.82)、そして47位は東京(1.15)である。ランキング上位の県には、沖縄以外にも九州地方の県が多く見られる。一方で、下位に目立つのは関東・近畿の大都市圏だ。(※4)

出生率が高い地域の特徴としては、以下のような点が挙げられる。

・持ち家率が高い
・地域の結びつきが強く、子育てがしやすい
・親との同居率が比較的高い
・雇用が安定している

子育て支援のための各種ネットワークが強い地域ほど、出生率が高いと言えるだろう。(※5)

他国・先進国の現状 出生率を比較

世界的に見ても、先進国は出生率が低い傾向にある。2019年の出生率ランキングで、先進国中もっとも順位が高かったのは、133位のフランスであった。合計特殊出生率は1.9である。

日本と同程度の先進国としては、ポーランドやポルトガル、フィンランドやギリシャが挙げられる。出生率の低下は、多くの先進国が抱える共通の課題と言えるだろう。

こうした状況の中、いったん下降に転じた出生率を、再上昇させた国として注目されるのがフランスである。1964年には2.91であった合計特殊出生率が、1994年には1.66にまで低下。その後、「家族給付による両立支援」や「育休制度の拡充」、「父親休暇の拡大」など、さまざまな出産・育児支援策を講じた。この結果、2007年には合計特殊出生率が1.98にまで上昇した。

近年日本でも、さまざまな支援策が講じられている。とはいえ、「育休」や「両立支援」など、まだまだ「認められて当たり前」とは感じられない風潮がある。こうした環境の違いが、出生率にも表れているのかもしれない。(※6)

出生率低下による3つの影響

出生率低下が問題視される機会も多いが、具体的にどのような影響が起こると考えられるのか、3つの事例を紹介しよう。

人口減少による労働力の不足

出生率が低下すれば、当然日本国内の人口も減少。2024年には労働人口が減少に転じ、2030年には600万人以上が不足するという予測もある。労働力が不足すれば、現場を担う働き手の負担が大きくなる。また、経済の発展も妨げられるだろう。(※7)

少子高齢化による現役世代の負担増

若年者層が減り、高齢者層が増えれば、多くの高齢者を少ない人数で支える社会構造ができあがる。現役世代の税金や社会保険料負担が上昇するだろう。このままのペースで少子高齢化が進んだ場合、「2060年、2110年時点では高齢者1人に対して現役世代が約1人」という割合で、高齢者世代を支えることになる。(※8)

人口減少による各種負荷の軽減

出生率が低下し、人口が減少することによって、発生するメリットもある。人の数が減って経済活動が落ち着けば、エネルギー消費量も低下するだろう。環境への負荷を軽減できる可能性がある。また食料自給率が低い日本にとって、食料需要の減少もメリットの一つと言えるだろう。各家庭レベルで見ても、住居や教育費の負担は軽減。生活レベル全体を向上させられる。

今後の予測と対策

今後日本の出生率は、どうなっていくのか、予測するのは簡単ではない。政府は出生率向上に向けて育休制度の拡充や出産・育児費用負担の軽減、子育てしやすい環境の整備など、さまざまな対策を行っている。とはいえ、すぐに成果が出る可能性は低いだろう。

人口減を防ぐためには合計特殊出生率が2.07を超えて推移する必要がある。しかし、現在の日本の状況を考えると、この数値を達成するのは極めて難しいと言わざるを得ない。出生率を少しでも上昇させ、少子高齢化のスピードを遅らせ、社会全体を変革していく必要がある。

※掲載している情報は、2021年10月29日時点のものです。

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