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スペイン政府は、食品ロスを厳しく禁止する法案を承認。食品関連企業に対し、食品ロス削減と寄付先の計画書の提出を義務づける。違反した場合は最高830万円の高額な罰金が科せられる。大胆な法案で、食品ロスの大幅な削減が期待される。
神本萌 |Moe Kamimoto
フリーランスライター
大学時代に南アジア文化を学んだことをきっかけに、環境や人権の問題に関心を持つ。それ以降、より自分と地球にやさしい暮らしを目指して勉強中。趣味は写真。
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スペインで食品ロスを削減するための厳しい法案が承認され、注目を集めている。
今回承認された法案では、食材の生産から調理・加工・流通・販売まで、フードチェーンに関わるすべての事業者に対し、食品ロス削減計画案の提出を義務化。大企業に関しては、賞味期限が切れる前の食品について、寄付を行う計画書の提出も求められる。
飲食店では、客が食べきれなかった場合には、持ち帰り容器を無料で提供し、持ち帰り可能にする。さらにスーパーや飲食店は、期限が切れそうな食材を無駄にしないため、フードバンクをはじめとする地域組織との連携が必要だ。
期限切れで安全に販売・提供できなくなった食品に関しては、まずは動物のエサとして利用。動物にとっても安全ではなくなった食品に限り、バイオ燃料をはじめとする他産業での利用にまわされる。
違反した場合は最高6万ユーロ(約830万円)、違反を繰り返せば最高50万ユーロ(約7,000万円)の罰金が科せられる。
国連環境計画(UNEP)のレポートによると、2019年に世界で廃棄された食品は、9億3,100万t。スペインでは、国民一人あたり年間31kgの食品を捨てている計算になるという。そのためこの法案を通して、年1,300tの食品ロスを削減したい考えだ。
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今回の法案には、国民一人ひとりに対してのルールや罰金は組み込まれていない。代わりに、家庭での行動を変えるための教育キャンペーンを行うそうだ。農水食糧大臣のルイス・プラナスは「今回の厳しい法案を通じて、食品ロスが社会や環境に与える影響について、国民の意識も変わるはずだ」と語る。
同法案は、議会で承認されれば、2023年前半には施行される予定だ。施行となれば、すべての食品関連企業が食品ロス削減に取り組み、外食先では食べ残しを持ち帰ることが当たり前になる。これが日常になれば、たしかに食品ロスに対する国民の意識は変わりそうだ。
一方、日本について見てみよう。農林水産省・環境省の発表によると、2020年度の日本の食品ロスは522万tで、そのうち約半分は家庭から出たものだ。国民一人あたり約41kg捨てていることとなる。さまざまな取り組みや呼びかけにより、食品ロスの量は年々減ってきており、2020年時点では過去最小値となった。
しかしながら、まだまだ食品ロスは多い状況。政府や自治体が新しい取り組みを始めるかもしれないが、現状を考えると家庭での食品ロスを減らすことが大切だ。必要な分だけ購入して、食べきれる分だけつくったり注文したりするなど、一人ひとりにできることを続けよう。
※参考
Supermarkets and restaurants in Spain could face fines of up to €60,000 for wasting food|euronews.green
UNEP Food Waste Index Report 2021|UNEP
食品ロス量(令和2年度推計値)を公表|農林水産省
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