Photo by Air Protein
米国スタートアップが、空気中の炭素などを原料にした代替肉「Air Meat(エア・ミート)」を開発。カーボンネガティブを実現し、もっとも環境にやさしい代替肉と言われる。少ない資源で短期間で製造できて、食糧危機を救う可能性があると注目されている。
神本萌 |Moe Kamimoto
フリーランスライター
大学時代に南アジア文化を学んだことをきっかけに、環境や人権の問題に関心を持つ。それ以降、より自分と地球にやさしい暮らしを目指して勉強中。趣味は写真。
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Photo by Air Protein
ヴィーガン食が広まるにつれて、世界中でさまざまな代替肉が開発されている。その多くは大豆プロテインなどを原料としたものだが、驚くことに、空気を原料とした代替肉が開発された。
このアイデアを実現したのは、米国カリフォルニア州のスタートアップ企業「Air Protein(エア・プロテイン)」。
同社のこのアイデアは斬新だが、原点は1970年代にNASAが行っていた宇宙食開発の研究にさかのぼるという。NASAの科学者たちは炭素を変換して宇宙食をつくる方法を研究していた。
物理学者のリサ・ダイソンと、クリーンエネルギー技術開発に携わるジョン・リードはAir Proteinを設立し、このNASAの技術をベースに、空気中に存在する炭素などの成分をタンパク質に変換。精製・乾燥させてパウダー状になったタンパク質から代替肉をつくることに成功した。
同社は代替肉を「Air Meat(エア・ミート)」と命名。鶏肉とホタテの2つの味と食感を再現する。気になる味は「代替肉と言われなければ気づかないレベル」だそうで、現在は牛肉や豚肉、その他のシーフードの開発に取り組んでいる。
エア・ミートは9種類の必須アミノ酸をすべて含み、その含有量は大豆の2倍になる。しかもビタミンとミネラルが豊富で栄養価が高い。動物由来成分、大豆由来成分、乳成分などを含まないヴィーガン食で、農薬や遺伝子組換えの心配もいらない。
エア・ミートは、もっとも環境にやさしい代替肉とも言われる。その理由のひとつが、カーボンネガティブであることだ。カーボンネガティブとは、排出する温室効果ガスの量より吸収する量が多い状態のこと。エア・ミートは、二酸化炭素を含む空気を原料として使用。それだけでなく、製造過程で温室効果ガスを排出しないよう工夫されている。
おまけに、畜産や農業のように広大な土地も必要としないため、少ない資源で製造可能だ。畜産業と比較すると、エア・ミート1kgあたりで使う土地は約52万分の1、使用する水は約11万分の1で十分だという。
さらに製造にかかる期間も短く、わずか4日。鶏肉は5カ月、牛肉は2年かかり、大豆由来の代替肉でも数カ月はかかる。これらと比較すると、かなり短い時間で製造できることがわかるだろう。
少ない資源かつ短期間で製造できるエア・ミートは、食糧危機を救う鍵になるとも言われる。
同社は開発に注力する段階にあるため、残念ながらエア・ミートはまだ市場で販売されていない。しかし、誰もが手に入れられるようになる日も、そう遠くはないかもしれない。
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