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ナチスドイツ軍によるユダヤ人の大量虐殺「ホロコースト」を後世に伝えるため、1944年に生まれたのが「ジェノサイド(genocide)」という言葉だ。この記事では、言葉が生まれた経緯や過去の歴史、現在直面している問題、ロシア軍によるウクライナ侵攻との関連について紹介する。
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国連がジェノサイドと認定した事例以外にも、大量虐殺は数多く報告されている。国連は認めていないものの、各国がジェノサイドと認識している事例や、現在も裁判が行われている事例を解説しよう。
1930年代にウクライナで発生した飢きんは、現在のロシアとウクライナの分断を生んだきっかけと言われている。豊かな穀倉地帯を持つウクライナは、歴史的に見ても優れた小麦産出国であった。
そんなウクライナで大規模な飢きんが発生したのは、ソ連が収穫物のほとんどを徴収し、国外へと輸出してしまったためだと言われている。当時のソ連政権は、ウクライナで農民を監視した。食べものを得られないようにして、400万人以上の人々を死に追いやったとされている。
ホロドモールがジェノサイドに当たるかどうかの議論は繰り返されてきた。2006年には、ウクライナ議会が正式にジェノサイドとして認定。ほかにもアメリカやハンガリー、ポーランドなど、多くの国がウクライナの認定を支持している。ホロドモールについては、以下の記事にて詳しく解説しているため、参考にしてみてほしい。
中国の新疆ウイグル自治区において、中国政府が少数民族であるウイグル族の弾圧を行っている。「現在進行形で強制収容所への収容や拷問、はく奪、殺害といった行為が行われている」として、国際社会から強く非難されている。
中国はジェノサイドを否定しているが、アメリカやカナダ、オランダといった国々がジェノサイド認定への動きを加速している。各国は中国政府に対する非難を表すとして、2022年北京オリンピックの外交的ボイコットを実施した。
ミャンマー西部にあるラカイン州では、イスラム教少数民族ロヒンギャに対する虐殺が行われた。残虐行為を行ったのは、ミャンマー国軍である。2017年8月以降、100万人以上のロヒンギャが隣国バングラデシュへと非難し難民となっている。
ロヒンギャに対するジェノサイド問題は、2019年より国際司法裁判所にて係争中だ。2020年には、全会一致でミャンマーに対するジェノサイド防止の暫定措置を命令。2022年3月に、アメリカ・バイデン政権はロヒンギャ虐殺をミャンマー軍によるジェノサイドとして認定した。(※8)
2003年より武力紛争が続いているスーダン。政府軍は、反政府勢力と同じ民族に属する一般市民に対し「民族浄化」を名目とした虐殺・暴行を行った。これによる死者は30万人、避難民は250万人にも達したと言われている。
国連は同じ年、ダルフール危機について注意し、平和維持部隊を展開した。調査委員会の最終報告書では、一連の虐殺行為がスーダン政府によるジェノサイドが政策として採用されていたとは認められなかった。ただし、ジェノサイドに匹敵するほど深刻かつ凶悪な行為として報告されている。(※9)
2022年2月、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した。軍事侵攻の理由は、ウクライナによる親ロシア派へのジェノサイドであると言われている。ウクライナ東部でロシア派住人が迫害されているという主張をもとに、該当地域の解放を掲げたのである。
一方で、侵攻されたウクライナ側はこれを真っ向から否定。むしろロシア軍によるウクライナ民間人への攻撃やロシアへの強制移送が、ウクライナ人へのジェノサイドに当たるとして、国際司法裁判所に提起した。国際司法裁判所は、ウクライナの要請に基づき暫定措置命令を発出。ロシアは軍事作戦を直ちに停止するよう求められた。今後の動向が注目されている。(※10)
ジェノサイドは、非常に大きな権力者によって少数グループに対して行われるケースが一般的だ。国の最高責任者や政治的主導者の権限で大量虐殺が行われれば、もはや自国内に安全な場所はないと考えられるだろう。自身の命を守るために、国を捨てる決断さえも迫られる。
過去のジェノサイドにおいても、非常に多くの難民を生み出してきた。1994年のルワンダ大量虐殺の際、100万人もの人々が難民として隣国に渡ったと言われている。旧ユーゴスラビアにおいては、民族浄化に伴い200万人以上の難民・避難民が発生した。またロヒンギャ難民もいまなお、避難場所での過酷な生活を強いられている。(※11)
国を追われた人々が、その後の生活をどう立て直していくのかも、非常に大きな問題と言えるだろう。
特定の集団・グループを破壊する目的で行われるジェノサイド。国連がジェノサイドと認めるかどうかにかかわらず、その結果は非常に悲惨なものとなる。現在進行形で行われているジェノサイドも、このまま状況が変わらなければ過去の惨劇と同じ道をたどることになるだろう。
ジェノサイドを止めるためには、まず国際社会が状況を知り、注目することが必要である。他国の状況を他人事と思わず、悲惨なでき事から目を背けない姿勢が、最初の一歩と言えるだろう。
※1 ジェノサイドとは|ホロコースト百科事典
※2 ホロコーストについて|ホロコースト百科事典
※3 THE CONVENTION OF THE PREVENTION AND PUNISHMENT OF THE CRIME OF GENOCIDE|UN(国際連合)
※4 ホロコーストについて|ホロコースト百科事典
※5 カンボジア概要と子どもデータ|一般財団法人 CHANGアジアの子供財団
※6 SREBRENICA 1995|LIBRARY OF CONGRESS
※7 ルワンダ虐殺の記念館|KLM
※8 ロヒンギャ問題に関して国際司法裁判所がミャンマーに対して判決|HUMAN RIGHTS WATCH
※9 国連とダルフール|国際連合広報センター
※10 ウクライナによる国際司法裁判所(ICJ)への提訴(暫定措置命令の発出)(外務大臣談話)|外務省
※11 難民(22ページ目)|UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
ボスニア・ヘルツェゴビナ(Bosnia and Herzegovina)基礎データ|外務省
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