猫の殺処分はなぜ多いのか?犬よりも5倍近く処分されてしまうその理由

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近年、犬や猫の殺処分数は減少傾向にあるが、猫の殺処分数はまだまだ多く、保護された動物の約半分が殺処分されてしまっている。動物病院やペットサロンを運営し、NPO法人での保護活動も行う友森玲子氏に、猫の殺処分をめぐる状況について解説してもらった。

2021.02.21

保護猫カフェを騙る販売業者

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Photo by 山内信也

近年では純血種を買うよりも、保護猫をもらって大切にしよう、と意識の高い方が増えている。残念ながらそこに目をつけたのが、一部のペット業界だ。実際に受けた相談の事例を紹介しよう。

「コロナウィルスの猫がいる友人の家に夫婦で遊びに行っても大丈夫でしょうか?」数年前に猫を譲渡した飼い主から相談を受けた。猫コロナウイルス(FCoV)の感染ルートや消毒について説明してから事情を聞いた。

その友人家族は猫を飼える環境になったので保護猫を譲り受けようとネットで検索をし、保護猫カフェがあったため見に行った。そこにはたくさんの純血種の猫がいて、ペットショップで販売できなかった子を保護していると説明があった。保護猫について知識がなかったため、純血種だらけの保護施設を異常だとも思わず、そのなかにいたスコティッシュフォールドに一目惚れした。

その場でワクチン代の3万円を支払い、さらに指定の保険に加入すれば連れ帰ることができた。書類審査を受け、受け入れ準備をし、飼育環境のチェックの自宅訪問があり、トライアル期間を経て譲渡という通常の保護猫の譲渡とは大きく異なる。

くつろいでいる3匹の猫

Photo by 山内信也

猫はとても体調が悪く、翌日から動物病院への通院が始まった。軟便や下痢が続き、寄生虫の駆虫や治療をしても症状が改善しないためさらに検査をしたところ、FCoVを持っているために要注意と言われた。

FCoVは唾液や排泄物を通して同居猫に感染し、ストレスなどによりウィルスが変異すると猫伝染性腹膜炎という致死率の非常に高い病気になる。現在は有効と言われている治療薬があるものの、高額で100万〜150万円ほどかかる。家のない猫を1匹でも引き取って大切に育てよう、という善意が、頻繁な通院と莫大な医療費という負担を招くことになった。

繁殖業者の手助けが「保護」?

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Photo by 山内信也

しばらく続く猫ブームにより、犬よりも猫の方がコンスタントに売れる、とペットショップでは猫の売り場を拡大している。世間で人気の猫種や新しくかけあわせた猫を、珍しいから、カワイイから、と飛びつく人がいるので次々に産ませる。

繁殖業者が増えると競争で子猫の卸値の単価が一時的に下がるので、一部の繁殖業者は数を売って稼ごうと、さらに繁殖させる。休ませずに毎年数回ずつ出産させていると母体もボロボロになり弱い個体が生まれる。

それらから一定数生まれる売れない子猫たちを、繁殖業者のところで母猫とともに飼育していると、それだけで養育費もかかり、新たに産ませるのにスペースが不足する。

先に触れた動物愛護管理に関する法律の改正により、不当な理由による動物の受け入れを自治体が拒否できるようになった。そこで困った繁殖業者の救世主になる新しい業態が生まれた。販売できない猫たちを無償もしくは、ワクチン代の名目で少額の引き取り費用とともに仕入れ、ろくな医療行為も行わず多頭飼育で管理し、譲渡という名のもとに数万円で販売する。つまり保護猫の譲渡と偽って、売れ残りや販売不可な個体を安売りするのだ。

売れればまた安く大量に仕入れ、繁殖業者も空きができるため繁殖や仕入れができる。どちらの業者にとっても都合のいい方法で、保護猫と騙されて買ってしまった家族や、利益のために無謀な繁殖をされ、安売りされる猫たちにとっては悲惨な話だ。

まずは落ち着いて確認しよう

くつろいでいる3匹の猫

Photo by 山内信也

善意の人が騙されないために、そして知らぬ間に不幸な猫を増やさないためにはどうしたらいいのか。

保護施設に純血種がいる場合は、どこからどのような事情でその動物がやってきたのかを確認する。ブリーダーからの保護や売れ残って殺処分寸前だったため、などというのはほとんどが繁殖業者か、その下請けの愛護団体もどきだ。

一方で純血種だったとしても自治体から引き取っている場合は、実際に殺処分を減らすことに貢献したことになる。

もう一つ見分ける目安になるのは、譲渡の流れだ。非営利の保護団体は動物の一生を左右する家族探しには慎重だ。留守番がなくて、家族が正しい知識を持っていて、家が広くて、動物にいくらでも費用をかけてくれて……などと、動物にとって理想的な家庭を求めている。

そのため譲渡に向けての審査も厳しく、手続きも面倒なことが多くなっている。ところが営利目的の場合は、数万円ずつの薄利多売のためにとにかく数で稼ごうとしている。自宅への訪問がなかったり、留守番時間が長くても問題にされなかったり、簡単に動物を受け取ることができる。

人間が一方的に搾取し、動物にとって好ましくない事は、それぞれが気をつけて利用しない、関わらないことで不幸な動物がつくり出されることが減少する。物言わぬ動物の不幸の上に人間の真の楽しみは成り立たないと信じている。

友森玲子(株式会社ミグノンプラン)
株式会社ミグノンプラン代表。動物病院とペットサロンを経営しながら、2007年に設立したNPO法人ランコントレ・ミグノンにて、犬・猫・うさぎ・鳥・爬虫類を受け入れ譲渡している。動物たちの幸せのために人間が正しい知識を学ぶ機会を作ろうと、イベントや講習会、小学校等への出張授業も行なっている。

写真/山内信也 モデル/ランコントレ・ミグノンにて現在保護中の猫たち 編集/山田勇真(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2021年2月21日時点のものです。

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