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猫の殺処分はなぜ多いのか?犬よりも5倍近く処分されてしまうその理由

近年、犬や猫の殺処分数は減少傾向にあるが、猫の殺処分数はまだまだ多く、保護された動物の約半分が殺処分されてしまっている。動物病院やペットサロンを運営し、NPO法人での保護活動も行う友森玲子氏に、猫の殺処分をめぐる状況について解説してもらった。

2021.02.21

なぜ猫が処分されるのか

全国の自治体で猫が殺処分されていると聞くと、多くの人がただちに中止すべきだと言う。言われ続けて数十年、それでもなぜ殺処分が行われているのか。

猫の引取数と返還・譲渡率、殺処分の推移

環境省の統計資料をもとに編集部で作成(*1)

平成25年に改正された動物愛護と管理に関する法律で、正当な理由のない動物の引き取り依頼は自治体が拒否できる事になった。飼い主の意識の向上や法改正により、自治体での猫の引取数は10年間で約1/3まで減少している。

さらに返還・譲渡率は保護動物を引き取る人が増えたため7.23%から48.63%にまで上昇した。これら自治体の施設へ収容される頭数の減少と、出て行く頭数の増加により、殺処分の割合が92.95%から50.82%にまで下がった。

犬・猫の殺処分数の比較

環境省の統計資料をもとに編集部で作成(*1)

過去には収容された猫はほとんど殺処分せざるをえない状況だったのが大きな進歩だ。それでも平成26年度では犬の殺処分数に対して猫は約3倍、そして最近のデータでは約5倍もの数が殺処分されている。

犬の処分は大幅に減少しているのに、猫についてはなぜ多いのか。それは収容される猫の元々の個体数の多さと譲渡の難易度が関連する。

日本のほとんどの地域では狂犬病予防法のために野犬は必ず捕獲され、存在しない事になっている。猫については、いまだどこの街なかにも飼い主のいない猫がいる。猫がいると餌を与える人が現れ、餌が豊富なところには猫が集まり、出会いの結果、子猫がたくさん産まれる。

猫は生後5〜6ヶ月で性成熟し、交尾排卵のため高確率で妊娠し、一度の出産で4〜6頭は産むためネズミ算式に増加する。

譲渡困難なケースも

猫の殺処分数の内訳

1万頭以上の猫が譲渡が適切でないと判断されてしまい、殺処分された。 環境省の統計資料をもとに編集部で作成(*1)

猫が増えるとどうなるのか。多くは人と生活圏が被っているために接触が起こる。車にはねられてしまった場合は、負傷動物として収容される。また子猫たちは母猫が餌を探しに行っている間に人に発見され、警察に連れて行かれることもある。警察署では子猫を育てられないため、所轄の保健所や動物愛護相談センターなどに移送される。

それら自治体の施設、保健所や動物愛護相談センターでは猫はどのような扱いを受けているだろうか。各自治体では放浪していた動物を収容し、飼い主に返還している。公示期間は数日〜1週間が多く、その間に飼い主が現れない場合は譲渡対象にするか、殺処分するかが検討される。

殺処分になるかどうかは、その動物を譲渡できるまで飼養管理するスペースや人員があるか、また一般家庭に譲渡できる状態であるかがポイントになる。

ずっと外で暮らしていた生粋の外猫が事故に遭い、重傷の場合は一般家庭に譲渡できるのか?この記事を読んでくれている方のなかには「そういう大変な子こそ助けたい」と言う方もいるかもしれないがレアケースだ。人に触られる事に恐怖を感じ、威嚇や攻撃をするしかない負傷した猫を善意の一般家庭に譲渡するのは困難なことは明白だ。

ミルクを飲む子猫

Photo by 山内信也

誰かが心配して交番に届けてくれた子猫のその後はどうなるだろう。乳飲み子の場合は数時間おきの哺乳や排泄の介助、保温が必要だ。職員は24時間勤務ではないので日中だけ哺乳をして子猫に頑張ってもらうか、職員が自己犠牲の精神で連れ帰り、夜間も哺乳するかのいずれかになる。

日中だけの哺乳では子猫は衰弱し、多くは殺処分するまでもなく亡くなって行く。子猫の多い地域では職員だけで育てることは不可能なため、現在は多くの自治体でミルクボランティアという制度があり、民間ボランティアへ哺乳を委託することで子猫の殺処分が減少している。

高齢者問題と多頭飼育がネックに

猫の引き取り理由

東京都福祉保健局の資料をもとに編集部で作成(*2)

殺処分される猫は一般家庭からも供給される。現在問題になっているのは高齢者と多頭飼育だ。東京都の平成29年度の資料によると、飼い主からの引き取り理由の上位から、多頭飼育33、経済的理由33、飼い主の病気・入院・施設入所が18ポイントとなっている。

長生きの猫は25年ほど生きるようになっているため、例えば60歳で子猫を飼うと85歳の時に猫の治療や通院、介護をする事になり、体力的にも経済的にも負荷がかかるピークがこの時期になる。高齢者がいよいよ飼育困難になり、手放したい、となったときには猫はすでに若くなく、譲渡が困難なことも殺処分の増加に拍車をかけている。

多頭飼育の多くは手術をしなかったために家庭内で増え過ぎ、地域の問題となってしまうことで飼育困難に陥る。この場合は突然、多くの猫が一度に収容されキャパシティーオーバーになるため、殺処分の確率を上げてしまうのだ。

猫の殺処分を減らすためには、確実に不妊去勢手術を行い増やさないこと、自分の年齢を考慮し高齢になってから子猫を飼わないこと、事故に遭わせないため完全屋内飼育をすること、などが求められる。

2匹の白猫

Photo by 山内信也

これら基本的な事を一人ひとりが守れば自治体に収容される猫は減少して行く。一方で返還譲渡数の増加については、飼い猫は逃してしまった時のために個体識別の徹底をすること、そして新たに猫を飼う場合は保護猫を譲り受けるようにすることしかない。

自分のいまの状況では猫を飼えないという人も多いだろう。終生飼養が難しい場合には保護猫の一時預かりボランティアをすることで短期間でも猫と暮らしたり、預かることも難しい場合には保護団体に寄付やチャリティーグッズの購入をすることで応援することもできる。

※掲載している情報は、2021年2月21日時点のものです。

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