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動物福祉(アニマルウェルフェア)の意識が高いフランスでは、2021年に動物愛護に関する法律が複数生まれた。オスのひよこの殺処分禁止から、犬・猫のペットショップでの販売禁止など、世界的に大きなニュースとなったこれらの動きを振り返る。
小原 ゆゆ (Yuyu Obara)
ライター / インターン
上智大学総合グローバル学部在学中。 エストニアへの渡航をきっかけに、ヨーロッパの持続可能なライフスタイルに関心を持つ。 趣味は旅行、おかし作り、映画鑑賞。
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フランスのジュリアン・ドノルマンディー農相は2021年7月、オスのひよこの殺処分を禁止すると発表した。
オスのひよこは卵を産まないことから、採卵養鶏では生まれてすぐに、粉砕機やガスによって殺処分されるのが一般的だ。フランスでは、殺処分されるオスのひよこが年間5,000万羽にものぼる。しかし動物愛護団体は、非人道的であるとし数十年にわたり抗議を続けてきた。今回の禁止令はこの抗議を受けたものだ。
ドイツでは5月に同様の禁止を発表しており、ひよこの殺処分について法律を制定する国は、フランスとドイツが世界で初めてとなる。
フランス政府は、この禁止令の発表に伴い、農家に資金援助を行うことを発表。卵が孵化する数週間前に、性別を判定する機械が提供される。オスとメスでは胚の羽の色が異なることから、この機械では胚を識別して、性別を判定する。
この技術は、フランスとドイツが2年にわたって共同で開発してきたもので、2022年3月までにフランス国内の3分の2の生産所に導入される見込みだ。また新しい機械を導入する養鶏業者に向けて、フランス政府は1,000万ユーロ(約13億円)の支援金を用意する。
今回の禁止令は2022年1月から施行され、それにより卵1箱(6個入り)の価格が0.01ユーロ(1.3円)上がる。
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フランスでの動物愛護に関する動きのなかで、もっとも世界に大きなインパクトを与えたのが、11月に可決された動物愛護に関する法改正案だろう。
この改正案では、犬や猫のペットショップでの販売の禁止、動物虐待への厳罰化、イルカ・シャチなどのショーの禁止、移動型サーカスでの野生動物の使用禁止などが盛り込まれている。
毎年約10万頭の動物が捨てられているフランスでは、とくにペットの衝動買いを抑制するため、ペットの購入者に飼育の責任に関する誓約書類の提出を義務化。さらに署名から7日間の待機期間を設定するなど、新たな措置が講じられた。
ペットショップでの犬・猫の販売を禁止する自治体は各国で増えつつあるが、国全体でこのような法律の制定に踏み切ったことは、世界でも大きなニュースとなった。
フランス、ドイツ、イタリアなどが加盟する欧州連合(EU)では、家畜のケージ(檻)の使用を段階的に廃止することが検討されている。鶏、ウサギ、アヒルなどの家畜は、効率的に生産するために狭いケージのなかで飼育されるケースがある。
しかしケージ使用禁止を求める署名が100万筆以上集まったことから、EUでは2023年までに法案を提出し、2027年までに禁止したい意向を示している。
現在EUにあるケージ飼育に関する規制は、採卵鶏、肉用鶏、雌豚、子牛のみが対象で、この対象を拡大していくとみられている。
動物関連のフランスの動きを振り返ると、動物の権利を尊重し苦痛やストレスを軽減する動物福祉(アニマルウェルフェア)の考え方が進んでいることがよくわかるだろう。
このような考え方に触れ、世界の動向を知っていくことで、私たち自身の意識も少しずつ変わっていくのではないだろうか。日本でも同様の規制が生まれていくことに期待したい。
※参考
Breaking: France Bans Egg Industry From Crushing And Gassing Male Chicks From 2022 | Species Unite
EU plans to end caged animal farming in 'historic decision'|CNN
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