環境や経済、社会、あらゆる場面で持続可能性が問われる時代。地球の未来について警鐘が鳴らされるいま、消費行動のなかから、変革を起こすことができるのではないか。アメリカで起こる「消費アクティビズム」を追った『Weの市民革命』著者、佐久間裕美子氏に伺った。
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知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
──政治、社会、経済すべてを包括的に考える必要がある。難易度が高いようにも感じますが、見方を変えれば、立場を超えた連帯ができるチャンスなのではと感じました。
一方で、私たちが日々消費行動するなかでは、グリーンウォッシュ*など、また別の問題も浮き彫りになっていますよね。消費者としてリテラシーをあげるためには、何ができるでしょうか。
*グリーンウォッシュ…環境配慮をしているように装うこと。見せかけのエコ。
ひとつできることとしては「生活の中で、自分自身が信用できる企業を見つけていくこと」だと考えています。
包装材がなるべく少ないお店や商品を選ぶとか、生産や製造における情報の透明性が高い商品を購入するといった延長上に、社員を大切にしているかとか、どういうイニシアチブに参加しているか、などがある。自分の生活に商品を供給してくれている企業を知る中で、より信用できる企業を見つけていくことができるのではないでしょうか。
──考え方や見方を、より有機的にしていく必要もありますよね。
そうですね。例えばですが、単にプラスチックをやめようというだけでなく、何らかの代替素材にするとコストがかかる、そして私たちが購入する価格も上がっていきます。そうなったときに「エコはぜいたく」と言われてしまう。けれど、なぜ使い捨てでない商品を購入することがぜいたくになってしまうのかを考えると「国民の暮らし向きが上がらないのはなぜ?」という疑問につながっていきます。
消費から社会変革を起こすことは、すなわち、私たちの考え方やカルチャーを変えることでもあります。たとえば所有している車やブランドで人をジャッジしたり、洋服は今シーズンのものを着ることが絶対だったり、といった既存の評価軸から離れる必要があると思います。
──いま、日々の消費において感じられている課題はなんでしょうか。
オルタナティブな選択肢がまだまだ少ないことや、生まれにくいことは課題だと考えていますね。
消費アクティビズムが起こったとしても、既存の選択肢に変わるオルタナティブがないと、変わりたくても変われない実情があります。たとえば私が「もうAmazonで買い物しないで」とか言っても、街にある店舗の営業時間中に仕事を終えられない人にはソリューションにはならない。選択肢が増えないと、世の中はスイッチしていけません。
アメリカには最近「bookshop.org」というオンライン書店が誕生しました。インディ書店をアフィリエイトにして、Amazonより高いコミッションを支払い、利益をインディ書店振興にまわすサイトです。こういうオルタナティブが登場することで消費者の選択肢も増える、そしてインディペンデント文化の持続性を増すことができる、というのが理想のあり方かと思います。
日本では、大企業を保護する傾向が強く、消費を武器として使う人がまだ少ないために、競争原理が作用しづらく、オルタナティブな選択肢が生まれない要因の一つだと感じます。アメリカの場合は、競争的資本主義が強いため、先ほどのウォルマートとターゲットの例で見たように、保守的な会社に対抗して、競合が革新的な施策を打ち出して勝っていく。競争原理がいい方向性に働くことでも、オルタナティブな選択肢が生まれています。
私たちの社会をどうつくっていくか。自分たちが本気で考えなくてはいけない時代に突入しています。
日本では「ものを言わないことが美徳」という文化もあり、まだまだ声を上げる人は限られてるかもしれません。しかし、声を上げ始めることで変わるものがあるし、自分自身を解放することにもつながる。ぜひ声をあげてほしいと思います。
佐久間裕美子
文筆家
慶應義塾大学卒業、イェール大学修士過程修了。1996年に渡米し、1998年からニューヨーク在住。出版社、通信社などを経て2003年に独立。 カルチャー、ファッション、政治、社会問題など幅広いジャンルで、インタビュー 記事、ルポ、紀行文などを執筆する。著書に『Weの市民革命』(朝日出版社)、『真面目にマリファナの話をしよう』(文藝春秋)、『My Little New York Times』(Numabooks)、『ピンヒールははかない』(幻冬舎)、『ヒップな生活革命』(朝日出版社)。
https://yumikosakuma.com/
文/佐藤由佳 取材・編集/山田勇真(ELEMINIST編集部)
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