コロナ復興の鍵を握る「グリーンリカバリー」の考え方 経済成長とサステナビリティ両立のヒントとは

グリーンリカバリーとは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で停滞した世界経済を立て直す際に、脱炭素社会など環境問題への取り組みも合わせて行おうとするアフターコロナの政策の一つである。海外でのグリーンリカバリーの政策や、個人としてできることを考えてみよう。

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2020.10.23
SOCIETY
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グリーンリカバリーとは?

グリーンリカバリーとは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で停滞した世界経済を立て直すのに際し、脱炭素社会など環境問題への取り組みも合わせて行おうとするアフターコロナ政策の一つである。

新型コロナの影響による景気悪化の立て直しを目的として、世界各国は経済復興に向けた資金投入の必要性が出てきた。そこで「せっかく経済復興のためにお金を使うのであれば、単純にコロナ以前の姿を取り戻そうとするのではなく、気候変動への対応などサステナブルな社会の実現のために予算を使おう」というのが、グリーンリカバリーの考え方である。

なぜグリーンリカバリーの考え方が必要なのか

遠くに望む山の峰

Photo by Jeremy Cai on Unsplash

持続可能な経済復興

国際エネルギー機関(IEA)が4月に発表した報告書によると、2020年のエネルギー起源のCO2排出量は新型コロナによる経済の停滞で、世界全体で前年より約8%減少すると示した(※1)。しかし多くの専門家たちは、今回の減少は一時的なものにとどまるとの見解で一致している。

2008年のリーマンショックの時期にも一時的にCO2の排出量が減ったが、経済の回復とともに上昇に転じてしまった。IEAではこの事例を教訓として、グリーンリカバリーによってCO2排出量を抑えながら経済復興させることが大切だと提言している。

コロナ禍で注目された政策とは

実際に、グリーンリカバリーの政策を行う国も出始めている。実際の事例を見てみよう。

ニュージーランド

ニュージーランド政府は廃棄物削減と雇用創出を目的として、リサイクルインフラに1億2400万ドル(約85億円)の投資を行うことを発表した。プラスチックのリサイクルおよび再処理工場などのリサイクルインフラの拡充と、廃棄物税の増税による国民のリサイクルへの意識改革を行う。

財源には政府が創設した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)復興基金と廃棄物最小化基金を充てる。リサイクルでは200名、再利用では6400名の雇用創出ができるという試算もあり、同国政府では今回の投資で雇用の拡大に繋げる方針だ。

カナダ

カナダ政府は、新型コロナの影響を受けた企業に向けて、新しい救済プログラムを発表した。この措置はグリーンリカバリーの一環として行われる。

このプログラムでは、年間の売り上げが3億ドル(約232億円)を超える企業に対し、最大で8000万ドル(約62億円)までを保証する。ただし、企業が融資を受けるためには、環境負荷を減らすための方法や、パリ協定の実現のためにどのように貢献できるかなどをまとめたレポートの提出が毎年1回義務付けられる。同国政府はこのプログラムで、気候変動への取組を加速させたい考えだ。

日本ではどのような施策が打てるのか

パソコンで作業をする女性

Photo by Corinne Kutz on Unsplash

グリーンリカバリーが政策として進められている欧州やカナダと比べると、日本はコロナ後に行われた緊急経済対策で、グリーンリカバリーは盛り込まれていなかった。現在の日本で行える施策としては、リモートワークの推進による通勤時のCO2排出抑制や、洋上風力発電への積極的な投資など再生可能エネルギーへの切り替え、EVへの買い替え促進などが挙げられる。

国としての動き

国内では、環境省が「日本版グリーンリカバリー」を推進する姿勢を示している。その一環として、気候変動を見据えた新型コロナ禍からの復興を促進する国際連携プラットフォームを立ち上げた。

プラットフォームでは、ウェブサイト「Platform for Redesign 2020」で参加各国内の行動・知見を共有する。また政府・非政府問わずビデオメッセージを掲載し、9月3日に約60カ国が参加する閣僚級オンライン会合をライブ配信。このプラットフォームでは「グリーンリカバリー」という言葉こそ使っていないものの、グリーンリカバリーと同じような考え方で運営され、国内外からのさまざまな知見を共有する。

個人として何ができるか

個人でも、グリーンリカバリーを行うことは可能だ。手っ取り早い方法としては、電力会社を再生可能エネルギー中心の企業・プランに切り替えることだ。金額や内容をしっかり確認してプランを選べば、電気代を下げながら再生可能エネルギーの利用拡大に貢献できるかもしれない。

このほか、家の車をガソリン車からEVに切り替えることや、リモートワークで働ける企業に転職することも、CO2排出の抑制につながる。

経済成長とサステナビリティの両立を

太陽光発電パネル

Photo by Chelsea on Unsplash

地球環境を無視した経済成長は限界にきている。コロナという大きなショックの後だからこそ、思い切った政策や経営に切り替えられるチャンスだとも考えられる。環境に配慮した選択肢を個人が選ぶことや、今後国の施策として選択肢が増えることを期待したい。

※1 パンデミックの世界のエネルギー需要と CO2排出への影響
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2020/05/iea_world_energy_overivew_2020.pdf

※掲載している情報は、2020年10月23日時点のものです。

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