グリーンAIとは?レッドAIから脱却するメリットと注目事例を解説

木の緑

Photo by Ed van duijn on Unsplash

グリーンAIとは、AIの開発・運用における消費電力や環境負荷を抑える技術。一方で、性能向上だけにフォーカスしたものを「レッドAI」と呼ぶ。本記事では、SLM(小規模言語モデル)やエッジAIによる省エネ対策、脱炭素・ESG経営への貢献、Green by AIの具体事例を紹介する。

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2026.02.03

グリーンAIとは?

グリーンAIとは、AIの開発や運用において環境負荷を低減させ、AI活用による環境課題の解決を両立させる取り組みのことをいう。

近年、生成AIが急速に普及しており、事業の効率化や生産性アップなど、さまざまな面で私たちにメリットをもたらしている。だが、それとともに課題となっているのが、膨大な学習データ処理による消費電力の増大だ。

そこで、従来の大規模言語モデル(LLM)ではなく、計算効率を高めた「SLM(小規模言語モデル)」の採用や、アルゴリズムの最適化によって二酸化炭素排出量を抑える手法が「グリーンAI」として注目されている。また、AIを活用してエネルギー需給を最適化する「Green by AI」も重要だ。

今後のビジネスシーンにおいて、グリーンAIは単なる環境配慮ではなく、コスト削減とESG投資を呼び込むための必須戦略となっている。

「レッドAI」とは?

グリーンAIと対極にある概念が「レッドAI(Red AI)」だ。これは、エネルギー資源の効率や環境負荷よりも、モデルの精度や性能を最優先する開発手法のこと。

2010年代後半からのAIブームでは、モデルを巨大化させ、膨大なデータと演算能力を投じることで精度を競い合う風潮が強まった。しかし、この手法には膨大なエネルギー消費がともなうほか、開発コストの高騰といった問題がある。

世界が脱炭素化に向かうなか、これまでのレッドAIから、効率的で持続可能なグリーンAIへのシフトが求められているのだ。

なぜ今「グリーンAI」が求められるのか?背景と課題

これまで、AI開発は「いかに賢いか」という性能競争に終始してきた。だが現在、そのトレンドは劇的な転換期を迎えている。その背景には、無視できない3つの深刻な課題がある。

爆発的な電力需要とデータセンターの限界

生成AIの普及により、データセンターが消費する電力は爆発的に増加している。2026年時点では、世界的な電力需給の逼迫(ひっぱく)が表面化しており、AIモデルの学習や推論にかかる膨大なエネルギーをいかに抑制するかが、事業継続での制約となっている。

スコープ3(サプライチェーン排出量)への対応

国際的な開示基準の厳格化によって、企業は自社だけでなく、スコープ3の温室効果ガス排出量も把握して削減することが求められるようになっている。

スコープ3とは、自社の活動に関連するサプライチェーン全体のこと。つまり、AIを活用する企業にとってみれば、クラウドサービスやソフトウェア、さらにAIに関連する温室効果ガスの排出量も把握しなければならない。さらに、排出量が多ければESG投資の対象外となるリスクがあり、排出量削減は必要不可欠な対応となる。

コストパフォーマンス(ROI)の再評価

精度をわずかに上げるために数倍の電力を投じる「レッドAI」のようなアプローチは、もはやビジネスモデルとして成立しにくくなっている。2026年の市場では、特定の業務に特化し、最小限のリソースで最大限の成果を出す「持続可能なAI」が、投資対効果(ROI)の観点から強く支持されていくだろう。

グリーンAIを実現する2つのアプローチ

グリーンAIを実現するためには、AIそのものを省エネにするアプローチ法と、AIを使って社会を省エネにするアプローチ法の2つが必要だ。

「Green of AI」(AI自体を低消費電力化する)

「Green of AI」は、AIモデルの開発、学習、推論プロセスにおけるエネルギー効率を最大化して、消費電力を低くする取り組み。2026年現在、巨大な計算資源を投じる時代から、いかに「賢く、小さく」動かすかへと技術の焦点が移っている。

小規模言語モデル(SLM)

これまで注目されてきたのは、汎用的な大規模言語モデル(LLM)だった。だが、特定の業界やタスクに特化させ、パラメータ数を絞り込んだ「小規模言語モデル(SLM)」が普及してきている。これにより、少ない電力で高精度な処理が可能になってきた。

エッジAIの活用

エッジAIとは、クラウドと接続せずに端末側だけでAIによるデータ処理を行うことをいう。すべてのデータをクラウド(データセンター)に送るものに比べて、通信にともなう電力消費を大幅に削減可能だ。

次世代ハードウェアへの移行

消費電力を劇的に抑える光電融合技術や、データセンターの冷却効率を高める液冷システムの導入なども進んでいる。

「Green by AI」(AIによる環境課題の解決)

AIの高度な予測・最適化能力を活用して、既存の社会システムや産業プロセスの脱炭素化を加速させるのが、「Green by AI」というアプローチだ。

エネルギーマネジメントの最適化

AIが気象データや需要予測を分析し、再生可能エネルギーの供給と需要をリアルタイムで制御するなど、電力の無駄を最小限に抑えることができる。

サプライチェーンの効率化

需要予測にAIを活用して在庫削減を目指すほか、物流ルートの最適化など、輸送にともなう温室効果ガス排出量や廃棄ロスを劇的に減少させる。

製造プロセスの改善

工場の各工程から得られるデータをAIが解析し、設備稼働のエネルギー効率を最大化できる。

グリーンAIを導入した企業の具体的な事例

グリーンAIの導入事例について紹介しよう。

ソフトバンク:グリーンデータセンター

ソフトバンクは、生成AIの普及に伴う電力需要の急増とデータ処理の集中を解決するため、北海道苫小牧市に日本最大級の「次世代AIデータセンター」を建設中だ。日本のデータセンターの約8割が東京・大阪圏に集中しているが、地方へ分散させることで、大規模災害時のレジリエンス(強靭性)を高める狙いがある。また、再生可能エネルギー100%で運用予定だ。

NEC:AI活用型の海洋マイクロプラスチック計測システム開発

NECは国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で、AI技術を活用して海洋中のマイクロプラスチックを高速かつ自動的に計測するシステムを開発した。それまで、マイクロプラスチックの調査は、顕微鏡を使った手作業による拾い出しが一般的であり、膨大な時間と手間がかかっていた。だがこの新計測システムでは、サイズや形状の集計が劇的に効率化・高精度化したという。

ニデック:AIデータセンターの冷却ソリューション

AIサーバーの熱対策として、ニデックでは冷却システムを提供している。現在、AIのデータセンター向け半導体(GPU)で世界シェアを広げているNVIDIA(エヌビディア)の推奨サプライヤーとなっている。

企業がグリーンAIを導入する3つのメリット

企業がグリーンAIを導入することで得られるメリットは何だろう。

1 運用コストの削減

最大のメリットは、運用のコストダウンだ。従来のレッドAIのようなアプローチでは、精度をわずかに上げるために膨大なサーバー費用と電気代を投じていた。しかし、小規模言語モデル(SLM)やアルゴリズムの最適化といったグリーンAIの手法を導入することで、処理能力を維持したまま計算コストを大幅に抑制できる。とくにクラウド利用料が高騰するなか、消費電力を抑えることは収益性の向上に直結する。

2 投資家・ステークホルダーからの評価

企業の脱炭素化に向けた具体的な取り組みは、今後ますます投資家にとって投資判断の必要不可欠な要素となっていく。 AIを多用する企業にとって、その運用での電力消費をいかに管理しているかは、ESGスコアの鍵を握るだろう。グリーンAIの導入を公表し、二酸化炭素排出量の削減実績をデータで示すことは、ESG投資家からの高い評価につながり、低利での資金調達や株価の安定化をもたらすと考えられる。

3ブランド価値の向上

グリーンAIの取り組みは、ステークホルダーに対して「先進性」と「誠実さ」を同時にアピールできる強力なブランディングツールとなり得る。消費者は企業の環境姿勢に対してこれまで以上に厳しい視線を向けている。AIの負の側面である「膨大な電力消費」を放置せず、自ら解決策を講じる姿勢は、エシカル(倫理的)なブランドとしての信頼につながるだろう。

また、社会課題の解決に直結するグリーンAIは、エンジニアやクリエイターにとっても魅力的に映り、優秀なテック人材の確保につながることも期待できる。

グリーンAIは企業のSDGs戦略に

AIの活用は、「使うか、使わないか?」というフェーズは終え、「いかに持続可能なかたちで運用するか」というフェーズに移行した。グリーンAIへの取り組みは、企業のSDGs戦略を具現化するための核心的な手段となるだろう。

AIモデルを軽量化し、計算リソースを最適化する「Green of AI」は、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」や、目標12「つくる責任、つかう責任」に直結。AIを使って社会の非効率を解消する「Green by AI」は、目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成を強力に後押しする。

これからの企業には、精度のみを追い求めるレッドAIから脱却し、環境負荷と経済合理性を両立させる姿勢が求められる。グリーンAIを自社のSDGs戦略の中核に据えることは、単なるリスク回避に留まらない。

コスト削減、ブランド価値の向上、そして投資家からの信頼獲得という多大なリターンをもたらし、次世代のビジネスリーダーとしての地位を確かなものにするだろう。

※掲載している情報は、2026年2月3日時点のものです。

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