Photo by Domagoj Ćosić on Unsplash
シンガポール発のフライトには、2026年10月以降、「SAF税」がかかる。持続可能な航空燃料(SAF)の普及に向けて、SAFの購入をまかなうための国としての制度が世界で初めて導入される。

Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
フライトの運賃に上乗せされるものといえば、まず燃油サーチャージが頭に浮かぶかもしれない。これは燃油価格の急激な変化に対応するために、航空会社が乗客に請求する追加料金で、料金は時期や行き先、航空会社によって異なる。
この先シンガポールへの旅行を検討している人は、新たに「SAF税」が徴収されることを知っておきたい。SAF税とは、いわゆる環境税。持続可能な航空燃料(SAF)を購入することを目的として課せられるという点において、他に類を見ない。
シンガポール民間航空局は、この税収を元手にSAFを購入し、従来の燃料と混合してシンガポールを出発する航空会社に供給する。国が一括購入することで一定のSAF需要を促し、増産、さらには供給を拡大する狙いがある。
SAF税は、2026年4月1日以降に発売され、2026年10月1日以降にシンガポールを出発する航空便から適用される予定。価格は飛行距離と座席クラスに応じて異なり、航空券1枚につき1シンガポールドル(約122円)から41.60シンガポールドル(約5000円)を支払う必要がある。ただし、シンガポールを経由する場合には適用されない。
11月10日付の発表によると、エコノミークラスの場合、バンコク行きで1.00シンガポールドル(約122円)、東京行きで2.80シンガポールドル(約340円)、ロンドン行きで6.40シンガポールドル(約780円)、ニューヨーク行きで10.40シンガポールドル(約1269円)となる。
国際航空運送協会(IATA)は2050年に航空業界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、SAFが排出量削減の65%を担うとしている。従来の燃料から転換することで、ライフサイクル全体で最大80%のCO2削減効果が期待され、航空業界の脱炭素化の切り札とされている。
シンガポールは、2026年までにチャンギ空港とセレター空港で使用されるジェット燃料全体の1%をSAFでまかなうことを目標とし、2030年までに3~5%に引き上げることを目指している。
各国がすすめるSAFの取り組みは、まだ始まったばかりだ。
シンガポール民間航空局のハン・コック・ジュアン局長は、「SAF税の導入は、より持続可能で競争力のある航空拠点を構築するというシンガポールの取り組みにおける大きな前進となる」と話す。
SAFの普及の遅れが指摘されるなかで、航空利用者が脱炭素費用を負担する「SAF税」がどんな効果を見せるのか。取り組みの動向を注視することは、空の旅を楽しむ者として航空の環境負担を考えるきっかけにもなりそうだ。
※参考
Air travellers departing Singapore to pay sustainable aviation fuel levy of S$1 to S$41.60 per ticket|CNA
Developing Sustainable Aviation Fuel (SAF)|IATA
ELEMINIST Recommends