持続可能な航空燃料「SAF」とは? 原料や製造方法など簡単に解説

空を飛ぶ飛行機のイメージ

Photo by Mark Olsen

持続可能な航空燃料として注目されている「SAF」。本記事では、「SAF」の求められる背景や 航空分野のCO2排出の現状などについて触れながら、原料や製造方法、メリット、デメリットについて解説する。また、各航空会社の取り組みなどについても紹介していく。

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2024.03.07
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SAF(持続可能な航空燃料)とは

「SAF(サフ)」とは、「持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)」の頭文字をとった言葉のこと。

主にバイオマスや廃食油、都市から出るごみなどを原料として製造される航空燃料を指し、「持続可能性のクライテリア(基準)を満たす、再生可能または廃棄物を原料とするジェット燃料」と定義されている(※1)。

SAFが求められる背景は? 航空分野のCO2排出の現状と国際目標

近年、SAFが注目されているが、それにはどのような背景があるのだろうか?航空分野のCO2排出量の現状や、国際目標について触れながら説明しよう。

現在の航空機の燃料は?

止まっている飛行機のイメージ

Photo by Ivan Shimko on Unsplash

現在の航空機の燃料には、主に原油由来の「ケロシン」が使われている(※2)。

ケロシンは、ストーブなどに使う灯油によく似たもので、より純度が高く、水分が少ないため、気温が低い上空でも凍らないのが特徴だ。

航空分野のCO2排出量は世界全体の2.6%

2021年5月のデータによると、航空分野のCO2排出量は、人類の活動によって排出されるCO2のうち世界全体の2.6%を占めている(※3)。

また、2021年度の日本のCO2排出量において、航空分野を含む運輸部門は、17.4%を占めている。そのうち航空分野は、3.7%にもおよび、環境問題への影響が大きいことが読み取れるだろう(※4)。

「温室効果ガスの総量を増加させない」国際目標

先述した状況を受け、航空分野には温室効果ガス低減に関する国際的な合意目標が存在
している。

1つが、国際民間航空機関(ICAO)が決定した、「2020年以降、国際航空における温室効果ガスの総量を増加させない」こと。もう1つが、国際運送協会が決定した「2050年時点で2005年比半減させる」という目標だ。

これらの目標には、「運航方式の改善」「新技術導入(機体の軽量化、エンジン効率化、電動 化、水素燃焼技術の導入等)」に加えて、「持続可能な航空燃料の導入」「市場メカニズムの活用」を組み合わせていく必要があると考えられている(※5)。

これらの二酸化炭素排出量軽減の取り組みのなかで、より排出量を削減するための手段として近年注目されているのが、化石由来の原料を使用しないSAFである。

SAFの原料と製造方法

航空分野におけるCO2排出量の削減が期待されるSAFは、何を原料にして、どのように製造されているのだろうか。ここからは、主な原料とそれぞれの製造方法について説明していこう。

バイオマス

木の端材のイメージ

Photo by Gary Fultz on Unsplash

バイオマス由来のSAFは、製材廃材や紙ごみなどを主な原料としている。

これらの原料を、蒸し焼きにしてガスにしたあと、フィッシャー・トロプシュ法(FT合成法)を用いてガス分子を結合させ、灯油と同じパラフィン構造の液体燃料にする(※6)。

廃食油

ポテトを揚げているイメージ

Photo by Wine Dharma on Unsplash

廃食油とは、てんぷらなどの揚げ物料理で使われた食用油を廃棄したもののこと。主に飲食店やスーパーから排出されたものを回収し、原料として活用している。

植物油や動物油の分子は灯油の3倍くらいの大きさがあるため、高温高圧の水素を使って、ジェット燃料に適した分子の大きさに分解していき、Bio-SPK HEFA(水素化植物油)と呼ばれるSAF燃料になる。

廃棄物(ごみ)

都市ごみなどの廃棄物も、SAFの原料となる。

ごみの種類によって製造方法は異なるが、有機物全般は既出のバイオマス原料と同様の「FT-SPK」と呼ばれる方法で製造される。

藻類

藻類も、SAFの原料として注目されている。

藻類からSAFをつくり出すには、「Hydrocarbon-HEFA」と呼ばれる技術を用いる。藻類から採取される油脂を使用し、廃棄油で用いた「Bio-SPK HEFA」とほぼ同じ方法で製造される。

SAFのメリット

ここからはSAFのメリットについて紹介していこう。

CO2排出量を削減できる

1つ目のメリットは、従来の燃料とSAFを置き換えることで、CO2排出量を現在よりも削減できることである。

たとえば、バイオマスを原料に製造したSAFは、燃料として使用したときにCO2を排出しても、原料である植物が取り込んだCO2を排出したと考えられるため、地表のCO2が増えたことにはならない。

国内で生産できる

国内で生産できる点も、SAFのメリットといえるだろう。

日本のエネルギー自給率は、2019年度のデータで12.1%と低く、ほとんどを海外からの輸入に頼っている状態だ。エネルギー源を海外に依存しすぎていると、国際情勢が変わったときに安定してエネルギーを輸入できない可能性がある。

しかしSAFは国内で生産できるため、安定したエネルギー源となり得るのだ。

SAFのデメリット

CO2削減が期待できるうえ、日本のエネルギー源となり得るSAFだが、デメリットもある。デメリットについても理解しておこう。

価格が高い

SAFのデメリットとしてまず挙げられるのは、価格が高いことだ。その理由は、製造コストの高さと、原料を十分な量確保することがむずかしいからである。

化石燃料と比較すると、2~10倍といわれており、従来の原料コストが100円/Lであるのに対して、SAFは200~1,600円/Lと割高。

しかしこの価格の高さは、将来的に生産量が増えることで緩和されると予想されている。

供給量が少ない

2020年の世界のSAF供給量は6.5万kLで、世界ジェット燃料供給量のわずか0.03%(※7)。CO2削減に向けて使用を望む声も多いが、供給量が少ないため使うことができないのが現状だ。

供給量が少ないのは、価格の高さと同じく、原料を十分な量確保することが困難なためである。廃棄油や廃棄物など、回収できる量に限りがあるため、原料の確保が課題となっている。

各航空会社のSAFの取り組み

実際に、航空会社はどのような取り組みを行っているのだろうか。国内・国外の航空会社の各取り組みを紹介しよう。

日本航空(JAL)

飛んでいるJALの機体のイメージ

Photo by Fasyah Halim on Unsplash

日本航空(JAL)では、「2030年に全燃料搭載量の10%をSAFに置き換える」という目標を掲げている。

2009年には、バイオジェット燃料を用いたデモンストレーションフライトを実施。さらに、2017年11月に米国シカゴ・オヘア国際空港〜成田空港、2019年1月に米国サンフランシスコ国際空港〜羽田空港への国際線定期便に、SAFを搭載した。

そのほか、SAF製造事業への出資なども行っている(※8)。

全日空(ANA)

ANAの機体のイメージ

Photo by Eric AK on Unsplash

全日空(ANA)では、2050年長期環境目標に「航空機から排出するCO2を実質ゼロへ」を掲げ、現在は、持続可能な未来を目指すパートナーシップ・プログラム「SAF Flight Initiative」に取り組んでいる。

このプログラムは、事業におけるCO2の排出削減やSAF燃料普及に協賛する企業を募り、産業横断的にSAF利用の推進などを目指すプログラムだ。

そのほか、SAF燃料開発を行うユーグレナへの出資なども行っている(※9)。

ルフトハンザドイツ航空

環境先進国と呼び声の高いドイツのルフトハンザドイツ航空では、SAF導入のコストの一部を利用客に負担してもらう「グリーン運賃」を試験的に開始。

グリーン運賃を利用すると、たとえばノルウェーのオスロからフランクフルトへの便だと、一番安い航空券より1万円ほど高くなる。「航空券の値上げ」ではなく、あえて「グリーン」と名付けることで、利用客に環境問題について考えてもらいたい、という狙いがあるそうだ。

ユナイテッド航空

シカゴに本社を置くユナイテッド航空では、2023年5月にサンフランシスコ国際空港を出発する便において、SAFを混合したジェット燃料の使用を開始したと発表。また、ロンドン・ヒースロー空港においても、SAFを導入する予定であることも発表し、これによりユナイテッド航空の2023年におけるSAF使用量は、2022年使用量の約3倍、2019年の約10倍に相当する見込みとなった。

そのほかユナイテッド航空は、世界の航空会社で最多となる、50億ガロンを超える今後のSAFの製造に投資。さらに、SAFの研究や技術、生産などに取り組むイニシアチブへの投資や、SAFの購入にも使用する目的の、サステナブルフライト口座への寄付も募っている。

SAFを正しく認識し需要を高めていく

CO2排出量の大幅な削減ができることや、廃棄油や廃棄物などの不要なものを原料にできるといったメリットがある一方で、まだまだ課題が多いSAF。

世界中でSAFの導入が進みつつあるいまこそ、私たち利用者がSAFを正しく認識することで、社会全体の需要が高まり、SAFが当たり前に使用される未来が近づくのではないだろうか。

※掲載している情報は、2024年3月7日時点のものです。

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