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英国で、大手ファッション企業の広告が「サステナブル」という表現をめぐり掲載禁止に。グリーンウォッシュ規制の強化は、企業の説明責任だけでなく、私たち消費者の選択眼も問い直している。

鴨井里枝|Rie Kamoi
ファッションライター/エディター/ジャーナリスト
イギリスの美術大学でグラフィックデザインを学び帰国後、ファッション週刊紙「WWDJAPAN」の編集部に約10年在籍。ファッションビジネスやトレンドの分析を主に、海外ではNY、ミラノ、ロン…
英国の広告規制当局であるASA(Advertising Standards Authority)は、ナイキ、ラコステ、スーパードライといったグローバルなファッションブランド3社が出稿した広告について、環境配慮やサステナビリティをうたう表現が十分な根拠を欠いているとして、掲載を禁止した。
問題となったのは、「サステナブル素材」「サステナブルなスタイル」「サステナブルな衣服」といった表現。いずれも、「サステナブル」という言葉を使っているにも関わらず、持続可能性に対する根拠が示されていないとして、消費者に誤解を与える可能性があると判断された。
英国の広告規定では、環境やサステナビリティに関する主張は、その根拠を明確に示し、高いレベルで裏付けることが求められている。ASAは各社に対し、広告内で用いた表現を裏付ける具体的な証拠の提出を求めたが、十分とは認められなかった。
ナイキは、一部商品に再生素材を使用している点を示す意図だったと説明したものの、広告内で対象や内容を明示していなかった点が問題視された。スーパードライについては、全商品がサステナブルであると受け取られかねない曖昧な表現であると判断。ラコステも、環境負荷削減の取り組みは認められたものの、「環境に悪影響を与えない」と断定できる証拠は示されていないとされた。
今回の判断は、単に環境への取り組みを進めているだけでは不十分であり、「サステナブル」という言葉を使う以上、その内容や範囲を正確に伝える必要があることを示している。ASAは現在、AIを活用してグリーンウォッシュの疑いがある広告の監視を強化しており、今後はファッション業界全体で、より透明性の高い情報発信が求められそうだ。
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グリーンウォッシュとは、十分な根拠がないにもかかわらず、「環境にやさしい」「サステナブル」といった言葉で商品や企業を良く見せてしまう行為のこと。
近年は欧州を中心に、グリーンウォッシュへの規制や監視が強まり、企業にはより高い透明性と説明責任が求められている。環境配慮をめぐる情報があふれる今、消費者自身も「サステナブル」という言葉の意味を問い直し、納得できる選択をしていくことが重要になっている。
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